よし♪

2012.12.01.Saturday


 リビングで雑誌の整理をしていると、隣の部屋から悟空の声が聞こえてきた。

「何?」

 立ち上がってドアを開け、中を覗き込むと、悟空が目を輝かせて手招きしている。何だろうと訝りながら近づくと、埃をかぶった縦長の箱を取り出してきた。

「何これ?」
「クリスマスツリーだよ」
「ああ……」

 小さい頃は毎年12月に入ると直ぐに二人してターレスにせがんで出してもらっていた気がする。
 もちろんそれほど高価なものというわけではなく、子どもの玩具の延長のようなツリーだ。
 開けていいよなと言いながら埃がたたないようにゆっくりと段ボール箱を開いた悟空と一緒に中を覗き込むと、木製のカラフルなオーナメントとクリスローズの造花、ツリーのてっぺんを飾る金の星も一緒にしまわれていた。

「なぁ、カカ。久しぶりに飾らねぇか?」
「え?」

 悟空の提案に青い目を軽く開き、可笑しそうに問い返す。

「ターレスも喜ぶかも」
「どうかなぁ」

 別に悟空の気分に水を差すつもりはないが、クリスマスツリーを前に感激するターレスは想像がつかない。

「いいだろ、な?だって……3人のクリスマス、もしかしたら今年が最後かもしんねぇし」
「まだ決まった訳じゃないよ」

 段々声が小さくなった悟空の髪を撫でて慰めては見たものの、カカロット自身口に出さないだけで、気持ちは同じだった。
 いくら自分たちが居心地がよくても、高校生にもなって遠縁の男の家に居候というのも不自然な話しだ。本当なら中学に上がる時点で同居は解消のはずだったが、ターレスの家からの方が通い易いという理由で、悟空もカカロットも親を説得した。

「うん。……飾ろう、カカ。オラ、もうちょっとだけ子どものフリしていてぇ」
「分かったよ」

 俯いたままの悟空の顎をすくい、次の行動を予期して赤くなった頬に触れてからキスをする。直ぐに離れようとしたが、悟空の手がカカロットの首筋に触れ、珍しく自ら乞うように舌を絡めてきた。

「……そんなキスが出来るんなら、子どもとは言えないな」

 キスに夢中になりかけていた2人は、楽しげな声に心底驚き、慌てて離れた。

「ターレスっ、い、いつ帰ぇったんだ?」
「ちょっと前だ。リビングに雑誌が放りっぱなしだったから、さぼってるのかと思って来てみたら……」
「さっきまではちゃんとやってたよ」

 キスを見られた恥ずかしさで少しつっけんどんに答えたカカロットと悟空の間にしゃがみ込み、ターレスは二人の髪を大きな手でクシャクシャと潰した。

「飾り付けならオレも手伝ってやる」
「ほんと!?」

 途端に悟空は意気消沈しかけていたのが嘘のように目を輝かせた。

「ああ。今年は少しはしゃいでみるさ」
「あんまり特別なことしたくない……」
「カカ……」

 らしくない言葉に不安になったのか、カカロットが床を見つめてポツリと呟く。床に両手をついて心配そうにカカロットの顔を下から覗き込んだ悟空は、そのままの体勢で助けを求めるようにターレスを見上げた。

「今年は、特別なんだから仕方ないさ」
「ターレス?」

 訝しげに眉を寄せたカカロットの金髪に指を絡めつつ、幼い子どものように身体を寄せてきた悟空の肩を抱く。

「同居人でなくなっても、会えないわけじゃないだろう?それとも、これっきりか?」
「そんな、ターレスが、オレたちと会ってくれるんなら、会いたいに決まってるだろ!!」
「オ、オラだって!!」
「なら話は早い。……あんなキスが出来るくらい成長したのなら、オレもそろそろ保護者は卒業させてもらうぞ?」
「――んっ」
「タ、ターレスっ!?」

 カカロットの耳元に唇を寄せ、吐息を吹きかけながら低い声で囁く。
 くすぐったさと同時に身体がカッと熱くなり、目をキュッと閉じたカカロットのうなじに触れるだけのキスをしたターレスは、明らかに意味を持った動きで悟空の肩から腕へ手を滑らせた。

「楽しいイブになりそうじゃないか」

 見知ったはずのターレスの表情に未知の顔を感じとり、悟空とカカロットは一寸不安げに顔を見合わせたが、ターレスの両肩に額を押し当てた。

「ターレス、大好きだよ」
「オラも……」
「オレの気持ちは、もう少し後で教えてやる」

 二人の背中に手を回し、ターレスは濃い艶を含んだ声で囁いた。




レッツ☆パーリィナイトぉぉ!!!(アホめ)

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