そしてこちらが
2013.03.08.Friday
「なんだ、またあんたもいるのか」
「やかましい。てめぇこそ何しに来やがった?」
「そりゃあ、抜け駆けされちゃたまらないからな」
フッと笑ったターレスの含みのあるもの言いに舌打ちし、忌々しそうに立ち上がる。ソファからターレスとバーダックのやり取りを見上げていたベジータは、少年らしい声でターレスに何をしに来た、と言った。
「王子さまのご機嫌伺いさ」
「……貴様が来るとバーダックの機嫌が悪くなる。オレはバーダックとトレーニングするんだから帰れ」
まだ幼いながらも戦闘力と惑星ベジータの王子に相応しいだけのプライドを感じさせる態度だが、ターレスのようなタイプには通用しない。
「そう邪険にするな。お気に入りのチョコレート、持ってきてやったぞ?」
ニヤっと笑って赤い紙袋を差し出したターレスの言葉に、ベジータの眉間がピクッと動く。さも不機嫌そうに腕組みしているバーダックの手前、ホイホイと手は出しづらかったが、下級戦士の子供たちに人気のチョコレートは王宮暮らしのベジータにはかえって手に入れづらい。いつだったか、ターレスが持ってきて以来、ずっともう一度食べたいと思っていた。
流行りものに疎いバーダックは、ターレスが持っている菓子の袋を胡散臭そうに睨んでいたが、どうやら幼いベジータがそれを食べたがっていると気づくと、もう一度舌打ちした。
「無理せずにもらっとけ」
「あ、あんな菓子なんかっいらんっ」
ぶっきらぼうに言ったバーダックにちらっと目を向けたベジータは、赤い顔で答え、 そっぽを向いた。
「似た者同士か?どっちも素直じゃないねぇ。ま、それならこのチョコレートは……」
「父ちゃん、トイレ行ってきたーー!」
ターレスの声を遮って、バンと開いたドアの方に全員が目を向ける。飛び込んできたのは、バーダックの次男のカカロットだ。尻尾をフリフリ駆け寄ってきたカカロットは、部屋にいるターレスに気づくと、顔中目になったかと思うほど黒い瞳を輝かせ、ターレスに飛び付いた。
「ターレスっ」
「大きくなったな、カカロット」
「うんっ。もうすぐターレスとも遠征いけっぞ」
「ハハッ。そりゃあ頼もしい」
ターレスは肩に乗ったカカロットの髪を撫で、手にしていた紙袋を差し出した。
「食うか?」
「オラにっ?」
「いや、おまえがいることは知らなかったからな。王子にだ」
わざと意地悪く答えたターレスをきょとんと見ていたカカロットは、ムーッと口を尖らせた。
「じゃあ、いらねぇ」
「おいおい、おまえまで、オレを拒絶するのか?」
「きょぜ……」
「嫌うな、といってるんだ」
「嫌ったりしてねぇ。でも、もらうならオラのためのがいいっ」
拗ねて抱きついてきたカカロットを抱き返し、ターレスは小さな背中をポンポンと叩いた。
「ま、とにかくこれは置いていくから、好きにしてくれ。オレは遠征だ」
「へ?」
「もう時間だ。またな、カカロット」
「嫌だっ、ターレスと遊ぶっ。もっと遊ぶんだっ」
「泣くなよ。また、帰ってきたら遊べるだろ?」
「オラも行くーー!」
「無茶言うな……ったく、ほら、笑えよ」
「だって……」
ぐずぐずと鼻を鳴らカカロットの頭を撫で、顔を上げたところで額にキスをする。ターレスはしがみついたままのカカロットに見送ってくれと囁いた。
「バダ、王子はあんたに譲って、あんたのこと義父さんと呼ばせてもらうかな」
「お断りだ!」
大声を上げたバーダックにニヤリと笑い、ターレスはカカロットに菓子の袋を持たせると、ヒラヒラ手を振って出ていった。
「……バーダック」
「なんだ?」
「おまえが買ってきたら、もらう」
賑やかな二人が出ていってからポツリと言ったベジータの言葉に一寸驚いたが、バーダックはふんと鼻を鳴らして、小柄な少年を抱き上げた。
萌えを表現するのって難しいーーーこういうこと言いたかったんちゃう気がするよぉぉー(;_;)
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