昨日の

2013.02.22.Friday




頬を擽る感触に驚き、重い瞼を上げると、胸の上に見たことのない黒猫が乗っていた。

「どっから入ってきたんだい?」

そっと抱き抱えて起き上がり、鼻先に持ち上げた猫に問いかける。じっと悟飯を見つめ返す猫のアメジスト色の瞳は闇色の毛に不可思議な魅力を与え、一瞬魅入られたように頭がグラリと揺れた。

我にかえってもう一度猫を見ようとした直後膝の上にズシリと重みを感じ、悟飯は目の前に現れた男を見て目を丸くした。

「ターレス、さん……な、なんで、どうやって入ったんですか?」
「ドアの隙間からさ」
「なに言って、そんな……わけ」

動揺する悟飯にニヤリと笑って見せ、サイヤ人のトレードマークである尻尾を揺らす。窓から射す月明かりだけの部屋で自分を見つめるターレスの目は、漆黒の奥に濃い紫の光を帯びていた。

「嘘、だろ……」
「恋の力ってやつか?あれ以来おまえからのお誘いがないからな。忍び込めるサイズの動物に変身したようだ」
「そんな、こと……ある、わけ……」

カラカラに乾いた唇をなんとか動かし、目の前の男の語る妖しの世界を否定してみたが、今さっきまでいた猫が跡形もなく消えている以上、信じるしかなさそうだった。

悟飯の動揺を予測していたのだろう。
ターレスは紫がかった瞳を楽しげに光らせ、身を乗り出すと、悟飯の頭を片手で支えて頬にキスをした。

「そろそろほしくなった頃だろう?」
「だっ、誰がっ」

否定の言葉に説得力がないほど赤くなり、その恥ずかしさに耐えきれず、ターレスの手から逃れようと大きく頭を振る。だが、その動きはかえって隙を作ることになり、瞬く間にターレスにくみしかれてしまった。

「初めてより、ずっと感じられる。オレに任せて、力を抜いていろ」
「だっ、て……っ、ん、あっ、……」

必死で逆らおうとしたが、肌を這うターレスの唇から熱い吐息が漏れ、悟飯が知ってまだ間もない享楽へのリズムに体が震え出すっ。無我夢中でターレスの服を掴んで、背中にてを回した悟飯は、下半身に伸びた掌の動きに顎を反らせてせつなげな声を漏らした。

「ーーっ、……あ、……」

背中を快感が駆け抜けるかと思った直後、ガクンと体を揺すぶられたかと思うと、見慣れた天井が視界に飛び込んでくる。混乱した頭で周りを見回し、自室に一人でいることが分かると、悟飯は全身から力が抜けてベッドに沈みこんでしまった。


「……なんで、あんな夢……」

乱れた呼吸を整えながら呟いた言葉の答えはもう出ている。
夢の中のターレスが笑ったとおり、先週偶然二人きりになった夜の、熱い交歓の記憶が悟飯の若い性を駆り立てていたのだ。

薄く汗の滲んだ額を手のひらでぬぐい、ゆっくり起き上がる。タイミングよく母親に呼ばれ、悟飯は慌てて返事をすると、階下へ急ぎ足に降りていった。

「一人で起きてこねぇなんて珍しいだな」

笑顔で迎えてくれた母親にすみませんと笑って見せ、朝食が用意されたテーブルにつく。向かいの席の男と目を合わせないようにして、おはようございますと挨拶すると、ごく微かに喉の奥で笑うのが聞こえたら。


「何?」

ムッとして訊いた悟飯を見返し、ターレスは別に、と片眉をあげた。

「お母さん、すいません。僕後で食べます」
「悟飯ちや。どうしたんだべ?」
「今お腹空いてないだけ。ごめんなさい 」

悟飯は極力前を見ないようにしてそう言うと、食卓を離れ、自分の部屋までかけ上がった。

いつになく乱暴にドアを閉め、ベッドに突っ伏する。同じ屋根の下に住んでいるのに、こんなことでどうするんだと、胸の内で自分を叱咤したが効果はなかった。

5分ほどそうしていただろうか。
ノックの音に驚いて顔を上げると返事を待たずにドアが開いた。

「もう18だろう?少しくらい取り繕えないのか?」
「うるさいっ」

呆れ顔で近づいてきたターレスをにらみかえし、バンとベッドを叩く。顔を紅潮させた悟飯の興奮を気にした様子もなく、ターレスはベッドに並んで腰を下ろした。

「何があったんだ?」
「ーーっ、夢に……ターレス、が……猫で、僕を……」
「おい」

脈絡のない言葉に眉をひそめかけたが、いきなり抱きついてきた悟飯を受け止めることになり、問いただす言葉は途切れてしまった。うなじまで赤くなった悟飯の背を撫で、時おり誘うように漏れる吐息を唇でふさいだターレスは、悟飯にゆっくり覆い被さった。

「抱いてやる。オレに任せていろ」
「猫に……ならないよね?」
「?」
「ごめん。僕、で、いいの、ターレス……」
「おまえがいるからここにいるんだ。だけど、そろそろポーカーフェイスも練習しておけ。そのうちカカロットに気づかれるぞ?」
「うん」
「怒ったわけじゃない。バレたらバレたで、……お前はオレのものだと言うだけだ」
「ターレス」
「しっ。甘い言葉は後にしてくれ。おまえを味わってからだ」

人差し指を悟飯の唇の前に立て、少し悪童めいた笑みを浮かべたターレスの言葉に頷き、悟飯は肌を這うリアルな舌の感触に甘い吐息をもらした。





タレ飯も好きじゃー♪ヽ(´▽`)/
メタモルフォーゼ。大好きなネタw

19:57|comment(0)

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