見事なまでに・・・

2013.02.10.Sunday


「悟空、さっきから何をきょろきょろしてるんだ?」

 久々に三人の休みがあった日曜日。
 せっかくだからと少し遠くの街までショッピングに出てきたのだが、ランチを食べた後、何やら悟空の様子が落ち着かない。
 さほどウィンドウショッピングが好きな方でもないのに、ターレスとカカロットから何度も遅れて慌てて追い掛けて来たり、一度などはCDショップに入るという会話を聞いていなかったのか、人通りの多いモールで完全に見失ってしまった。

 いい加減呆れ顔で問いかけたターレスを見上げ、何でもないと口ごもったが、悟空の顔は赤く染まって全くごまかし切れていなかった。

「何でもないって顔じゃないだろう。行きたいとこでもあるのか?」

 問い詰めるターレスの口調がいつになく有無を言わせない様子なのを感じて、叱られた子どものように俯き、悟空はごく小さな声で答えた。

「うん。でも、お、男同士で行くとこじゃないし……」
「ターレス、そんなにイライラするなよ。悟空も今さらそんなの気にしなくていいだろ?悟空の行きたいとこに行こう?」

 とりなすように笑ったカカロットの言葉にホッと息を吐き、おずおずとターレスを見上げる。ターレスは肩をすくめて悟空の肘を掴み、行き交う人々の邪魔にならないように通路の端に連れていった。

「怒っちゃいない。どこに行きたいんだ」
「あそこ……」

 頭を軽く動かして悟空が差した方にターレスとカカロットが揃って目を向ける。
 視線の先にある特設売り場を見て、ターレスとカカロットは顔を見合わせた。

「チョコレート?」
「う、うん……」
「まぁ、確かにあそこに男三人はきつそうだな」
「だよ、な……」

 青い目を丸くしているカカロットと、苦笑いしたターレスを見て悟空が肩を落とす。ターレスはいかにもガッカリしている悟空の頭をクシャッと撫でた。

「バレンタインなんかしたいのか?」
「うん……ターレスとカカにあげてぇな、って」
「そんなの、貰わなくても悟空の気持ちは……」
「だ、だって!と、特別な日だしっ」
「悟空可愛い」
「ちょっ、カカ!!人が見てる!!」

 いきなりギュッと抱き締められ、悟空の顔が耳まで赤くなる。

「いいよ。見せつけとけば、売り場に行ってもそういう関係だって分かって恥ずかしくないだろ?」
「カカっ、そういう問題じゃ……っ」
「一理あるな」
「ターレ……っ!?」

 思いがけない同意の言葉に驚いた悟空がカカロットに抱き締められたまま顔を上げると、タイミングを計っていたターレスのキスが額に落ちてくる。ただそれだけで顔から湯気が出るかと思うほど赤くなった悟空に追い打ちをかけるように、カカロットも柔らかな頬にキスをした。

「ふ、二人とも〜〜〜!」
「これで度胸がついただろ。行くぞ」
「そうだよ。行こう、悟空」
「分かったよ!!……オ、オラ、あんま高いの買えねぇけどっ」
「どんな高級品もおまえの甘さにはかなわないから、気にするな」
「そうそう。――お返し、今夜早速してあげるよ、悟空」
「うん……」

 悟空はこれ以上ないほど赤くなったが、素直に頷くと、自分からターレスとカカロットの手を握った。

「オラ、ターレスもカカも、大好きだからっ」
「オレもだよ、悟空」
「――ま、そうでなきゃここで見世物にはならないな」
「素直じゃないなぁ、ターレス。そんなことばっかり言ってると、オレ、悟空をさらっていくよ?」
「カカ?」

 驚いて目を丸くした悟空を青い瞳を悪戯に光らせて見返し、冗談だと言いかけたカカロットの金髪を大きな手が梳いた。

「おまえも離れられないだろう?」
「まあ、ね……」

 悟空の頭の上で視線を交わした二人は、互いの唇を重ねる代わりに悟空の跳ねた黒髪に同時に唇を落とした。






何かよく分からんままに、お出かけタイムで強制終了。
 

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