今週は・・・

2012.11.27.Tuesday


 学校の近くの本屋でパソコン関連の雑誌を立ち読みしていると、隣で誰かが立ち止まった。

「なんだ、カカロットか」
「先輩に向かってなんだって言い方ねぇだろ」
「別に世話になってないからな」

 ふいっと顔を逸らして答えたターレスの隣を離れようとせず、カカロットが同じ雑誌を覗き込む。どうせ自分が諦めるまでここにいるのだろと溜め息を吐き、ターレスは雑誌を元に戻した。

「お、もういいのか?」
「何か用?」
「別に。用がなくてもおまえの顔見ていたいからな」

 いったい何が面白いんだか……

 精一杯呆れた顔をして見せたところで、カカロットは一向に堪えた様子もない。
 こうして向かい合って立ち話をしているだけでも、傍を通り過ぎていく他の客がチラチラ横目で見ていくほど整った容貌のカカロットが実はゲイだと知ったら、店の表で噂している女子高生たちはどんな顔をするだろう。

 もっとも、ターレス自身、見た目で言えば決してカカロットに引けを取っているわけではない。むしろ、目立つ二人が一緒にいるから余計に注目を集めているのだが、カカロット同様ターレスも自分の容姿にそこまで頓着していなかった。


「帰る」
「暇なら、コーヒーおごってやるよ」
「あのなぁ、話し聞いてるのか?」
「話し?カフェでゆっくり聞いてやるって。来いよ」

 言葉尻を捕えてターレスの苛立ちをかわし、カカロットはターレスの肩に腕をかけて強引に歩き出した。逆らうだけ無駄と諦め、仕方なく表通りに出る。木枯らしに首をすくめると、ターレスの肩を抱いたカカロットの腕に力が籠り、二人の距離がさらに縮まる。

「離れて歩……」
「ターレスじゃないか?」
「え?」

 背中から二の腕に回されたカカロットの手を掴んで身体を離そうとした時、後ろから声をかけられた。
 反射的に答えたものの、聞きなれた声にターレスの頬がヒクっと引きつった。表情の変化に気づいたカカロットも一緒に振り返ると、二人の後ろにはダークスーツ姿でポケットに手を突っ込んだ長身の男が立っていた。

「……こんなとこで何してるんだよ、トーマ?」
「仕事に決まってるだろ?」

 ニヤっと笑って答えた男の視線がターレスから離れ、隣のカカロットに向けられる。ト

 ターレスが明らかに年上の男を呼び捨てにしているだけでも気に入らないというのに、トーマと呼ばれた男の品定めするような視線に益々苛立ってきた。

「仕事って、こんなところでか?」
「この時間は営業回りコースをおまえに会えそうな街にしてるだけだ」
「ハァ、……ありえない」

 事もなげに答えたトーマに溜め息混じりに答え、ターレスは隣で不服そうにトーマを睨んでいるカカロットに目を向けた。

「オレ、帰るからな」
「え、ターレス、コーヒー……」
「今日はムリ」

 キッパリと答えたターレスと拗ねたように唇を尖らせているカカロットを交互に見ていたトーマは、片眉を上げて可笑しそうに目を躍らせた。

「なんなら、オレが奢ってやろうか、坊や?」
「はぁっ!?誰が坊やだよ、おっさん!」
「そりゃ失礼」

 青い目を怒らせ、カカロットがトーマに食って掛かる。
 だが、トーマはこれっぽちも気にした様子を見せず、かえって怒りを煽る軽い口調で詫びた。

「ふざけ……っ」
「止めろよ、カカロット」
「なんだよ、ターレス! コイツ、なんなんだ?」
「そりゃ訳ありに決まってるだろ」
「トーマ!! 何もあるわけないだろ? 何回も言ってるけど、オレはノーマルなんだ」
「自分を知らないだけさ。……なんなら、こっちの坊やもまとめて可愛がってやるぞ?」
「おっさんに興味ないっ」

 ターレスはトーマに噛みつかんばかりのカカロットの肘を掴んで後ろに下がらせると、大きく溜息を吐いた。

「見世物になってるから止めろ、バカ」
「だって、ターレス……」
「分かった、コーヒーつきあうから。それでいいだろ?」
「……うん」

 渋々頷いたカカロットを促し、ターレスはトーマにチラっと目を向けた。

「友達、だからな?」
「はいはい」
「なんで言い訳するんだよ、ターレス」
「そうじゃないっ。オレが男に興味持ったら、無理矢理でも自分のものにするって宣言されてるんだ」
「はぁ??」
「いいから、行くぞ、カカロット」

 今度こそ先に立って歩き出したターレスを追いかけ、カカロットは追い付いて並ぶ寸前にもう一度後ろを振り返った。
 本屋の前で相変わらずポケットに手を入れたまま二人を見送っているトーマの、奇妙に落ち着きに胸騒ぎを感じながら、カカロットはターレスの手を掴んでものすごい勢いで歩き出した。





どっちがタレしゃんGETでしょうねぇ〜ヽ(^。^)ノ
トマさんは恋人じゃなくても、大人のご教示でおさんぴぃもい……ゲフゲフ

22:14|comment(2)

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