トマタレ劇場其の二

2013.01.19.Saturday


「悟飯!」

 他の生徒につかまって今日の授業の質問を受けていたトーマは、教室を出て行く悟飯を視線の端で捕らえ、慌てて声をかけた。

「はい?」
「ちょっと待っててくれ。直ぐ終わる」
「はい……」

 悟飯は一瞬迷いを見せたが、他にどうすることも出来ずに足を止め、その場でトーマがクラスメイトと話しを終えるのを待った。

「すまん、待たせたな。用があったんじゃないのか?」
「あ、いえ、大丈夫です。図書館に行こうと思ってただけですから」
「そうか。いや、昨日家に来てくれたんだろ?何か大事な話しだろうと思ってな」
「…………」
「悟飯?」
「あ、あぁ、すみません。あの、もうっ、……大、丈夫、です。なん、でも……ない、っていうか、たまたまっ、前……通っただけ、ですから」

 訪ねたのが自分だと知られることは想定していなかったのだろうか。
 トーマの問いに顔を紅潮させたかと思うと、直ぐに青ざめてしまう。
 訝しげに眉を寄せたトーマを見上げ、いつもの理路整然とした優等生らしさとはかけ離れた様子でしどろもどろに答えた。

「その嘘で大人を誤魔化せるとは思ってないだろ?」
「……すみません」
「とにかくここじゃあれだ。ついて来い」
「あの、僕……本当に……」
「いいから来い。生徒指導だ。拒否権はないぞ」

 トーマは努めて明るい声で大らかな笑顔を見せ、悟飯の髪をクシャッと撫で、俯いている青年の肩を抱くようにして生徒指導室へ連れて行った。


「……ほら、そんな硬くならずに入れ」
「失礼します」
「説教したくて読んだんじゃない。あの日も、……おまえは親でも友達でもなくオレを呼んでくれたからな。昨日も話しを聞いて欲しかったんじゃないのか?」
「確かめ、たかっただけです……」

 小さな机を挟んで向かい合い、極力穏やかな口調で尋ねると、机の上で祈りのように両手を組み合わせていた悟飯は聞こえるか聞こえないかの声でポツリと呟いた。

「ん?何をだ?」
「……トーマ先生、部屋にいた人、誰ですか?」
「あ、ああ、あいつか。……教師、仲間だ」
「先生よりだいぶ若いですよね?――家に泊めるほど仲がいいんですか?」
「おい、悟飯?オレはおまえの話しを……」
「……先生に、恋人が、いるのか知りたかったんです」
「は?」

 思いもよらない答えに思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
 だが、顔を上げ、真っ直ぐトーマを見つめている悟飯の目は少しも笑っていなかった。

「オレの、その……、いや、そんなことを聞いてどうするんだ?」
「分かりません。……いても、いなくても、どうせ……何も変わらないのに、本当に何をしてるのか……」

 トーマは席を立つと、ほとんど独り言のように話す悟飯に近づき、肩に手を置いた。

「悟飯?どうした、大丈夫か?」
「先生……」
「受験勉強で疲れてるんだろう?おまえは手を抜くことを知らないからなぁ」

 優しい笑顔でそう言うと、トーマは悟飯の肩を2、3度叩き、今日は図書館なんか行かずに帰れと言った。

「勉強してる方が、まだ……マシなんです。家で一人になったら、先生のことが頭を離れなくなる」
「おい……」
「あの人、恋人ですよね?」

 どこか上の空な態度が一変し、切りこむように問いかけてきた悟飯の黒い瞳に一寸気圧され、トーマの笑顔が引きつってしまう。教職という立場を考えれば、自分にとってもターレスにとっても、性癖をオープンにすることはリスクの方が大きいだろう。

「――っ、何、言ってるんだ。あいつ、は……男、……っ」

 背中をつたう冷や汗を意識しつつ、必死で言葉を選ぶ。
 笑顔でバカなことをと笑えば済む問題だと分かっていたが、完全にターレスとの関係を否定することに胸が痛み、スムーズに嘘が吐けない。
 明らかに悟飯の問いが真実だと認めているトーマの動揺を静かに見つめ、悟飯はゆっくりと立ち上がった。

「男同士、でも……先生がいいのなら、一度だけでいいんです。僕を……先生のものにしてください。そうしたら、……誰にも言いません。先生の恋人も学校の先生なら、……バレたら困りますよね?」

 いつの間に好意を寄せられていたのか見当もつかない相手の告白に、トーマは暫し返す言葉も見つからず、呆然と悟飯を見下ろしていた。




モテモテトーマ先生♪
つか、ミーハー的に騒がれそうなタレより、ある意味一途に思う生徒とか現れそうじゃないですか?夢見すぎ?そうですか、でも、いいの^^
とりあえずあと一話くらいだけ書くかもしれないし、書かないかもしれません(;´▽`A``
つか、またも悟飯さんを可哀想な位置づけにしとるー><

02:06|comment(0)

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