So Cute!!!
2013.01.14.Monday
「成人の自覚を持って、より大きな夢にはばたく人生になることを……」
お決まりのスピーチに欠伸が出そうになるのを何とか堪え、立礼の声かけで立ち上がる。高校のクラスメイトたちと10分程度の立ち話をし、後の誘いは適当に理由をつけて断った。
「……成人ねぇ」
何を今さら、と皮肉な笑みが浮かぶ。
周囲の人間が恋だ友情だと浮かれていた時から、大人社会の中に叩きこまれ、衣食住の全てを自力でまかなってきた。
中高一貫の学校に奨学生で入学できていなければ、高校も諦めるしかなかっただろう。
成人どころか老人のように達観する以外、道を外さない術はなかった。もちろん、自分一人の力ではないのも分かっていた。
「おまえなら、きっといつかデカいことが出来る。とにかく飯だけはちゃんと食って頑張れよ」
卒業式の日。
そう言ってターレスの頭を大きな手で撫でた担任の教師には、6年間ずっと陰で支えられていた。何か感謝の言葉を口に出来ればよかったが、気恥ずかしさが勝ってただ頷いただけだったことは、今でも少し悔やまれる。
出る気のなかった成人式に、周囲の誰よりも板についたスーツ姿で出席したのも、偶然街で再会したその担任に進められたからだ。
ま、悪く……なかったかな。
気乗りしないまま来たものの、懐かしい面々との再会は、それなりにエネルギーをもらえるものだった。
記念品の箱と出口で渡された赤いバラを手にホールを後にする。
吹きつけてきた風の冷たさに一瞬首をすくめて直ぐ、ターレスは階段下に立っている男に気づいて足を止めた。
「バーダック……」
「やっぱり直ぐ出て来たな」
ターレスの声に気づいて顔を上げた男はバーダック。
ターレスより一つ年上で、中学進学でこの街に越して来る前は、はす向かいの家に住んでいた幼馴染だ。
生活の全てが一変した8年前。
中学に上がったばかりのバーダックは、引っ越しの前夜にふらりとターレスの家に来て、涙を堪えられないターレスをなだめるでもなく、必ず会いに行くからとだけ言った。
十数段の階段がフラッシュバックする思い出のせいで奇妙に長く思える。
近づけば消えてしまうのではないかと危ぶみながら、ゆっくり歩いていくと、銀の灰皿に煙草を押し付けたバーダックが手にしていた花束を差しだした。
「オレに?」
「似合わねぇけどな。少なくともオレが持つよりはいい」
「――それは、そうかも」
「ふん。可愛くねぇ奴」
「あんたにだけは言われたくない」
「……可愛いだろ、十分。積年の……約束通り、会いに来てやったんだ」
「覚えてたのか?」
「ああ。住所も知らせないバカに会えるとしたら、今日しかないと思っていた」
「会えなかったら……?」
バーダックに一歩近づいて尋ねると、花束を包んだセロファンが相手の膝に辺り、ガサリと音を立てる。
面影を探すのが難しいほどお互い大人になってしまったが、至近距離で見つめ合うだけで言葉はいらなかった。
「会えると信じて動いたんだ」
「バダ、あんた、そんなに可愛かったっけ?」
「大きなお世話だ、バカ野郎」
「ハハっ。……プレゼントは、花だけ?」
「生憎こっちはまだ新人サラリーマンだ。そうそう豪華な飯なんぞ奢れるか」
「じゃぁ、あんたを食わせてくれよ。金かけなくていいから、オレにあんたの時間を分けてくれ」
「そっちの気があるのか?」
「男とヤルのなんて初めてだな。……でも、あんたとなら気持ちいいって確信してる」
「なんだそりゃ」
「説明しなくても分かるだろ?」
周囲の目を気にすることなく、バーダックの耳元に唇を寄せ、ターレスは低い声で囁いた。
すげぇ中途半端^^
タレさん、男と経験はないけど、初恋は担任の先生ですw
バダと幼馴染だった時は、恋心……とかの自覚はないといいなあ^^
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