やはりというべきか・・・・(タレカカ妄想付)

2016.01.08.Friday


【姫始め】

 地下鉄の改札を抜け、目的地に近い出口を探す。
 平日の午前、それもランチタイムにはまだ早い時刻のせいか、駅構内を行き交う人はさほど多くない。忙しない足取りでは見逃してしまいそうな、目立たない場所にある出口を見つけ、少し閉塞感を感じる狭い階段を昇っていく。地上に出てすぐ目に入ったのは、一昔前の雰囲気を残した商店街。デニムの後ろポケットからスマートフォンを取りだし、目的の家を地図で確認したターレスは、視線を少し動かして現在地を確認すると、迷う様子もなく歩き出した。

正月も明け、本来なら真冬というべき時期にも関わらず、今年は厚手のコートに縁のない温かい日が続いている。ターレスも濃紺の上着の下には白い七分袖Tシャツだけだったが、五分も歩けば温かく感じ始めていた。前腿部分全体を色落ちさせたブルージーンズと合わせた一見シンプルなコーディネートだったが、テーラード風の個性的なダウンジャケットとのバランスもよく、ターレスの人目を引く風貌を引き立てている。実際、すれ違う人の中には、チラっと振り返ったり、横目で盗み見る人も少なくなかったが、ターレス自身は頓着した様子もなく、庶民的な街並みを楽しむようにゆっくり歩いていた。
駅から十分ばかり歩いただろうか。店頭の日用品にやたらと派手なポップがベタベタ貼られたドラッグストアの角を曲がってすぐ次の角に入る。新旧様々な家が並んだ通りに出てすぐ、カカロットが自宅の前に立っているのが見えた。
まったく、いつから待っていたんだ……
自然と浮かぶ笑みを噛み殺し、実際にターレスが近づいている方とは反対ばかり見ているカカロットに向かって歩いていくと、あと三メートルというところで何かを感じたのか、いきなり振り返る。
「ターレス!」
どことなく子猿が跳ねているような印象で駆け寄ってきたカカロットは、整った顔をふわりと緩め、満面の笑みを見せた。
「どのくらい待っていたんだ?」
 わざと呆れ顔を見せつつ訊ねたターレスに、20分くらいだと照れ臭そうに答える。ターレスはカカロットの少し紅潮した頬を浅黒い手で挟み、フッと笑みを浮かべた。
「中で待っていればいいものを……いくら温かいといっても、冬だぞ」
「ターレスの手の方が冷たいよ」
 甘やかすように眉を下げたターレスを見上げ、カカロットは長い指をターレスの手に絡めながら、ひょいっと首をすくめた。
「おまえに温めてもらうから構わない」
「ばーか」
 からかうターレスの言葉に子どものように舌を出して答え、カカロットは「早く入ろう」と言ってターレスの手を握った。
「今日はゆっくりしていけるんだよな、ターレス?」
「ああ。オレはいいが……」
「大丈夫。今日、家オレしかいないから」
 目を逸らし、独り言かと思う声で答えたカカロットの頬にさっとキスを落とし、ターレスはそのままカカロットの耳に唇を寄せた。
「――逃げるなよ」
 低い囁きに無言で頷いたのを合図に、二人は並んでカカロットの家に向かって歩き出した。



・・・・続く、絶対に続ける!w

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