妄想リハビリテーション^^(タレカカ妄想)

2015.01.10.Saturday


 シャワーを終え、肌触りのいいバスローブを身に纏う。
 長身のせいか、スーツ姿の時のターレスはスマートな印象だが、バスローブから覗く胸元も長い手足も古代の英雄を思わせる見事な筋肉に覆われている。

 バランスのいいマーブル模様の大理石でできた洗面台の鏡に映った自身の姿をチラっと見たが、さほど興味もなさそうに視線を逸らし、バスルームを出る。一人で泊まるには持て余しそうな広い部屋は、夜景が自慢のこのホテルの最高級スイートルームだ。
 特に誰かを迎え入れる予定もなく、ただの仕事絡みの旅なのだから、ターレス自身がここまでの部屋を用意するように指示している訳でもないが、事実上のオーナーを迎える側としては全てにおいて最高級のもてなしをと思うのは当然だろう。チェックインの時から支配人自ら出迎える念の入れようだったが、必要以上に腰が引けているわけでもなく、落ち着いた初老の紳士の対応は、内心悪くないと思っていた。

 髪に残る水気を拭いつつ、華やかな都会の灯りが一望できる窓辺に近づく。
 テーブルの上には見ようによっては金魚鉢のような形をしたガラスの器が置かれ、クラッシュアイスとほどよく冷えたシャンパンが用意されていた。

「一人だと言ってあるのに、随分なお膳立てだな」
 フッとシニカルな笑みを浮かべ、肩を竦める。
 ボトルを手に取り、シャンパンクーラーの傍に用意されていたソムリエナイフで鈍く光る赤道色のキャップシールを外す。コルクを押さえている針金を緩め、白い布でコルクを覆うと、ボトルの底を押さえてゆっくり回した。
 ごく小さな鈍い音とともにコルクが外れ、まだグラスに注いでもいない内から芳醇な香りが立ち込める。この品質なら一人で飲むのも悪くない。緩い曲線を描いた細長いグラスにシャンパンを注ぎ、傍のソファに腰を下ろすと、待っていたようなタイミングで電話が鳴り出した。

「何だ?」
 ソファの脇にある足が一本だけの小さなテーブルに手を伸ばし、スピーカーボタンを押す。交換手は先にお寛ぎのところをと謝罪した後、電話の相手が誰か告げた。
「分かった。……そいつなら24時間いつでも構わない。繋げ」
「あ、はい」
 意外な答えに驚きを隠せない交換手の声に小さな笑いで答え、ターレスは電話の向こうの相手が切り替わるのを待った。
「ターレス?」
 繋がったかどうか分からなかったのだろう。
 電話の相手は少し戸惑いがちに声をかけてきた。
「カカロット、何かあったのか?」
「あ、良かった、繋がった。……ごめん、疲れてる時に。最初断られたんだ」
「いや。今日はそれほど忙しくなかったから、大丈夫だ。明日なら電話には出てやれなかっただろうが。第一、わざわざホテルにかけて来なくても良かっただろう?」
 カカロットはもちろんターレスの携帯電話の番号を知らないはずもない。
「携帯にかけて仕事中だったら悪いと思って。それに、本当は……」
 可笑しそうに問うと、カカロットは遠慮がちに答えていたが、何かを言いかけて黙り込んだ。
「なんだ?」
「うん。まだ6時前だし、絶対ホテルには帰ってないと思ってたんだ。かけていませんって言われたら諦めつくし、仕事の邪魔もしなくて済むなと思って」
「……我儘を言うかと思えば、そんな健気なことも言えるのか」
「オレだっていつまでも子どもじゃないよ。会えない時間が多いから、ターレスが気づいてないだけじゃない?」
 からかうターレスの言葉にカカロットはわざと子どもっぽい口調で答えた。
「そうだな。今のおまえの年頃だと、確かに一日一日成長する。見逃してばかりだと、他の奴にうつつを抜かされるかもしれないな」
「それだけは有り得ないよ」
 カカロットは心底可笑しそうに笑ってそう言うと、受話器にチュッと音を立てて口づけた。
「……オレのキス、届いた?」
「ああ。――三日後には帰る。いい子で待ってろよ?」
「うん。あ、ターレス、今、外見える?」
「ああ。どうかしたのか?」
「オレ、今テラスにいるんだけど、海の方の夕焼けがすごいんだ」
「そうか。一緒に見られたらよかったが……こっちはもう星空だ」
「え?あ、そうかっ。――随分離れてるんだった。同じ空見てるんなら、少しは……気が紛れるななんて思ったんだけど」
 隠しきれずカカロットの声に寂しさが滲む。
 ターレスはグラスに注いだまま口を付けていなかったシャンパンを一口飲み、自嘲気味な笑みを浮かべ、片手で黒髪をかき上げた。
「オレの寂しさが少しは分かっただろう?」
「へ?」
 素っ頓狂な声を聞くと、思いがけない言葉に青い目を丸くしているカカロットが容易く想像できる。
「おまえがオレのことをパートナーとして理解したのは、まだほんの一年足らずだ。……だが、オレはそれよりずっと前からおまえしかいないと決めていた。つまり、会えない寂しさもオレの方がずっと前から味わっていたというわけだ」
「嘘吐き」
「――カカロット、オレはおまえだけは騙さない」
「早く、帰ってきてよ、ターレス」
「ああ。……覚悟を決めて出迎えろよ」
 その後、二言、三言甘い言葉を交わし、電話を終えたターレスは、グラスに残ったシャンパンをゆっくり一気に飲み干し、カカロットに出会うまで想像したこともなかった甘い時間を悪くないと感じている自分を皮肉るように小さく笑った。

 



・・・・・すいません。超自己満足というか、オフ本『No Reason to Love』の設定から抜けてきた二人です。プチではこんな感じで、もし、タレカカさんが甘ラブになれるんだったら?ってのをおまけ的に配ります><苦手でなければもらってください。

って、↑の話しとは全然違いますけど^^
要するに愛し合ってる二人が今は超絶マイブームなのです(;´▽`A``
あと、本編書いてる時もそうだったんですが、なんかもう思いっきり庶民が思うセレブの空気感的なのを書けるという意味でもノリトラは書くのが楽しかったです/////

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