いつまでボケてる気だ!(タレカカ妄想付)

2014.10.19.Sunday



 大きなマグカップを両手に持ってリビングに戻って見ると、陽気に誘われたのか、カカロットは自分の肘を枕にしてソファで眠っていた。
 組手をしようと訪ねてくるカカロットの相手をするのはせいぜい三日に一度だ。邪険にしたところで気にすることもなく、――いや、残念そうにはするものの、オレがどう思っているかなど考えていないという意味でだが、また明日来ると言って言葉通り訪ねてくる。
 サイヤ人であるカカロットが手加減せずに攻撃できる相手など、この星に他にはいないのだから、気持ちが分からない訳ではない。ただ、あまりにも基本的過ぎて問い質すのも馬鹿馬鹿しいが、オレが地球を滅ぼそうとした侵略者だということを覚えているのだろうかという疑問が浮かぶたび、こいつの無防備さに苛立たされるのは間違いない。
 幼い子どものように笑みの形に唇を引き上げ、気持ちよさそうに眠るカカロットが、ソファに作った僅かなスペースに腰を下ろし、ホットミルクのカップを目の前のテーブルに置く。地球に来て初めて知ったコーヒーという飲み物を口にし、独特の芳香を感じ、少しだけ落ち着くことが出来た。

「カカロット」
 ぶっきら棒に呼びかけてみたが、一瞬五月蠅そうに眉を寄せただけで起きる気配はない。それどころか身体をもぞもぞ動かした挙句、オレの分のスペースを空けていたのも忘れたのか、カカロットはオレの膝を格好の枕だと言わんばかりに頭を乗せてきた。
「……あ、そっち、おめぇが食うんか?」
 むにゃむにゃと間抜けた寝言を呟く顔は、とてもガキがいる男のものとは思えない。
 腹を立てる気にもならないが、少し悔しいとは思った。
 
 つまり、コイツにとってオレはもはや脅威ではないのだ。
 仲間だの、友人だのと思っている訳ではないだろうが、少なくとも敵とは見なしていない。

 ――そして、腹立たしいことにそれはあながち間違いでもなかった。
 
 膝にかかった重みと温もりはあまりにも心地よく、常に何かを破壊し、搾取しなければ満たされなかったことが嘘のようだ。ただ、カカロットと過ごしていると、同時に凶暴なまでの独占欲を感じる瞬間もある。そして、その頻度は確実に……高くなっていた。

「起きろ」
 短く命じ、膝の上に広がっている黒髪を掴んで頭を上げさせる。
「痛ってぇ!? ……って、あ、ターレス。オラ、寝ちまったんだな」
 目から星でも飛ばしそうな顔で飛び起きたカカロットは、すぐに状況を理解し、照れ臭そうに笑った。
「――冷めるから飲め」
 自分のコーヒーに口をつけてからそう言うと、カカロットは一瞬世にも間抜けた顔を見せたが、すぐにテーブルに置いてあったマグカップに気づいて、笑顔になった。
「さんきゅ!」
「ついでだ」
 素直過ぎる謝辞への答え方など知らない。
 柔らかな感情は全てここに来てから知ったものばかりだから。
 いや、この星でなくとも、カカロットと出会っていれば知りえた感情なのかもしれない。
「ターレス?」
「何だ?」
 身を乗り出し、目と鼻の先まで顔を近づけてきたカカロットに面食らい、眉を寄せる。
「いや、なんかジッと見てっから、どうかしたんかと思って」
「オレが?」
「他に誰もいねぇだろ」
 何を言ってるんだとばかりのカカロットの顔を見てもまだ解せなかった。
 見つめる理由などない、……はずだ。
 オレが自分の感情に向き合うことを避けている間は、こいつを見つめる理由など、思い当たらずにいられる。
「何だよ、言いてぇことあるなら言えよ」
 困り顔のカカロットを見て、また自分が瓜二つでいながら与える印象が全く違うカカロットを見つめていたことに気づいた。
「……オレの言いたいことは、大概おまえが聞きたくないことだ」
 カップの中ですっかりぬるくなったコーヒーを煽り、はぐらかす。案の定、煙に巻かれたカカロットは、不満げに口を尖らせ、ミルクを口にした。
「地球に悪さするってんじゃなけりゃ、オラ、別に何聞いても平気だぞ」
 能天気な答えが、オレとカカロットを隔てる壁をがらりと崩す。
「――んっ、ん……っ、タ、―レス?」
 カップを手にしていた手を身体の脇に垂らし、カカロットの唇をごく短い間自分の唇で塞いで顔を離すと、カカロットは目が飛び出そうなほど驚いていた。
「今日はここまでだ。さっさと帰れ」
 飲みかけなのにも構わずカカロットのカップを強引に奪い、立ち上がる。
 何かしらの禁忌を感じたのか、カカロットはいつもなら文句を言いそうなシチュエーションにも関わらず、大人しく頷いた。

「明日、また来っから……」
「――好きにしろ」
 どこまで変わらぬ関係でいられるかはさておき、オレはまた訪ねてくるというカカロットの言葉に情けないほど安堵していた。





・・・・うーん。どうにもこうにも一人称は苦手だな。
どうしていいのか分かんなくなるんだよなぁ><
でも、読むのには臨場感があって好きなんだよぉぉ。私ももっと上手く伝えられるように書きたい!!

ので、練習あるのみ。゚(゚´ω`゚)゚。ピー



 

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