ひとりでトマさん愛で祭!C(トマカカ妄想付)

2014.10.04.Saturday



「トーマさん、おはよう!!」
「ぐぇっ!?」
 サイヤ人下級戦士の居住区に並ぶ家は、発達した科学技術とは反目するかのような原始的な造りだ。自分たちの身は自分で守るのが当然の彼らは、基本的に防犯設備とも縁がない。
 だが、この朝、トーマが受けた攻撃は危険とは無縁なもの。
 もっとも見事にみぞおちにめり込んできた膝のせいで数秒は呼吸が出来なかったが……。
「あれ? 大丈夫か?」
「――っ、ゲホッ、ゴホッ、ッ。カ、カカロット、か……」
 トーマは膝を跨いでベッドにぺたりと座り込んでいるカカロットを見て、痛みに顔を歪めながら起き上がった。
「オラに決まってんだろー。こんな起こし方」
 ニコニコ笑って答えるカカロットを見ていると、悪気の欠片もないのはよく分かる。
 半袖とショートパンツタイプのアンダースーツを身に着けた本人は、まだ子どものつもりかもしれないが、さすがに眠っているところにダイブされるとダメージを受ける程度には身体も成長している。
「あのな、遠征から帰ったらこうして遊びに来てくれるのは有難いが、起こし方はそろそろ変えてくれ」
「へ?」
 心底不思議そうに目を丸くしているカカロットを見て苦笑いし、トーマは身体を起こしてカカロットの頬を軽く叩いた。

「顔だけなら、まだまだガキなんだけどな」
「あ、馬鹿にしてんだろ」
 カカロットはムッと口を尖らせ、トーマの方に身を乗り出した。
「オラだって、ちゃんと大人になってんだぞ!」
「はいはい。で? 今日はどうし……っ!?」
 軽くあしらって話題を変えようとしたトーマは、唇を柔らかいもので塞がれ、目を見張った。
「――っ、お、おい!」
 暫く思考が停止した後、ようやくキスをされていると分かり、慌ててカカロットの肩を掴んで引きはがす。息をする余裕もなく、ただ唇を押し当てていただけのカカロットは、赤い顔で胸を上下させて呼吸を繰り返していた。
「何してるんだ、カカロット!」
 珍しく厳しい口調になってしまったせいか、カカロットの肩がビクッと跳ねる。
「……やっぱ嫌、なんか?」
 さっきまで無邪気な子どものようだったカカロットの黒い瞳が明らかな意思を孕んで潤んでいた。
「いや、別にっ、その嫌とかじゃなく。な、泣くな!!」
「――泣いて、ね、っっ」
 しゃくり上げそうになるのを堪え、唇を噛んで首を振っているカカロットの肩から手を離し、トーマは髪を握りしめて大きく息を吐いた。
「いったいどうしたんだ?」
「わかんねぇ。でも、オラ、……父ちゃんの友達だからって理由だけじゃなくて、トーマさんにオラと一緒にいてぇって思って欲しいんだって、分かったんだ。だから、……子どもん時みてぇに起こしても、もう子どもじゃねぇってのも分かって欲しくて」
「だからって、誰にでもすることじゃない」
「トーマさんにだからしたんだ!! 母ちゃんが言ってたっ、すっげぇ好きな人にだけする特別なことだって」
「好きって……」
 困り果てて言葉に詰まっていると、カカロットはシュンとうなだれた。
「オラじゃ相手になんねぇよな」
「あのな、相手……って、意味分かってないだろう?」
「そ、そうかもしんねぇけど、ただ、いつまでもトーマさんに川とか海で遊んでもらえるんじゃねぇってことは分かる。そしたら、次はどうしたらいいんかわかんねぇけど、大人同士の付き合いっちゅうやつだろ?」
 さっと顔を上げ、いたって真剣な顔で尋ねるカカロットの尻尾は感情的になっているせいか毛が逆立っていた。
「確かに大人になったな」
 困ったように眉を下げ、トーマは少し戸惑いつつカカロットの肩に触れ、全身を震わせている一回り華奢な身体を抱き寄せた。
「トーマ、さん?」
「……だからって慌てて大人にならなくていい」
「じゃ、オラ、どうすりゃいいんだ?」
 トーマの胸に素直に身体をあずけ、カカロットはシーツの上のトーマの尻尾に自分の尻尾を絡めると、困ったように尋ねた。
「ゆっくり、考えよう。……二人で、な?」
「うん!」
 二人でと聞いた途端、カカロットの顔にが花が咲いたような笑顔になる。
 トーマは突然突き付けられた感情の意味を悟ることは一先ず止めにして、カカロットを太い腕の中にしっかりと閉じ込めた。



トーマさんはきっといきなり手を出したりしない。どっかの浅黒い人と違って(笑)

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