ひとりでトマさん愛で祭!@(トマタレ妄想付)

2014.10.01.Wednesday


「いらっしゃいま……」
 少々昔風のドアベルが鳴る音が聞こえ、磨いていたグラスから顔を上げたトーマは、木製のドアの前に立っている男を見て言葉を切った。

「……相変わらずしけた店だな」
 スーツのポケットに片手を突っ込んで立っている長身の男は、トーマの記憶よりもぐんと大人びていたが、人肌に餓えているような黒い瞳は全く変わっていなかった。
 もっとも、そんな深層心理にまで気づく人間はそういないだろう。いや、いて欲しくはなかった。
 トーマは何も答えず、二枚の付近で包み込むようにしてワイングラスの曇りを丁寧に拭いとると、目の前のカウンター席に置いた。
「ご馳走してくれるのか?」
「……この店で一番高いワインを、とでもいうのかと思ったぞ」
 既製品とは思えないスマートな仕立てのスーツに目を向け、わざとおどけて目配せすると、男はフッと笑みを零し、グラスが置かれたカウンターに近づき、高いストゥールに腰を下ろした。

「会いに来てくれたと思っていいのか?」
 深い色合いのマホガニーのカウンターを挟んで、男の正面に立ち、静かに尋ねる。
 ノーネクタイの白いシャツの胸元から覗く男の浅黒い肌がカウンターの落とした照明でより一層色香を増しているようだ。
 出会いから別れまでジェットコースターのようなめまぐるしい感情と、今思い出すだけでも身体の芯が疼きそうなセックスに溺れた男との時間は、若すぎる相手をいつまで傍におけるのかという不安と隣り合わせで、結局お互い傷つけ合うばかりだった。

「……どの面下げてってトーマが思わないのなら、そうだと答えるな」
 少し間を開け、一瞬露わになりかけた気まずさを皮肉な笑みで隠した男をジッと見つめ、トーマはこの八年間、後悔し続けた時を繰り返すまいと意を決して口を開いた。
「オレはおまえに会いたかった、ターレス」
「――っ、あまり、驚かすなよ。歳食って気弱になったのか?」
 ターレスと呼ばれた男は、さっきと同じくシニカルな表情を作ろうとしたが、今度は取り繕えずこめかみを引きつらせた。
「それはあるかもしれないな。ただ、オレは……八年前からずっと後悔して後悔して、例え、往来ですれ違う偶然だとしても、絶対に伝えると決めていたことをしただけだ」
「勝てないな、あんたには」
 今度は明らかに苦笑いと分かる笑みを浮かべ、ターレスはポケットから出した手で前髪をかき上げた。

「会いにきたに決まってるだろ。――歳を誤魔化して酒飲もうとした頃のガキとはもう違うってこと、見せつけてやろうと思ってきたはずが、ここまで来たら……情けないけど、あんまりにも変わってなくて、十分以上ずっと扉を開けることさえ出来なくてな」
「そうか」
「……上手いワインと、そうだな、あんたの料理で一番好きだった、ナポリタン作ってくれよ」
 照れくさそうに笑ったターレスに穏やかな笑みを返し、トーマは少し待ってろと言って店の奥に向かった。
「ナポリタンでもハンバーグでも、食いたいものは明日作ってやる。今日は……乾杯したら、店じまいだ」
 ワインのボトルを持って戻ってきたトーマの言葉に片眉を上げ、ターレスは器用にコルクを抜く手元を黙って見つめた。
「……確かに呑気に食ってる場合じゃないな。トーマ、あんたがワインを開けてる手つき、エロくて、懐かしくて、身体が熱くなってきた」
「おまえの二十歳の誕生日まであと一ヶ月ってところで別れたんだったな」
「ああ」
「――あの時、おまえの産まれた日のワインを用意してたんだ。無駄にならなくて良かった」
 唇で優しい弧を描き、トーマは製造年が書かれたワインのラベルをターレスの方に掲げて見せ、それから180度回して磨き終えたばかりのグラスをもう一つ取り出し、芳醇な酒で二つのグラスを満たした。

「……何に乾杯するんだ? 再会?」
 グラスを手にしたターレスの言葉に短く首を振り、トーマはカウンターから身を乗り出すと、意図を察して近づいてきたターレスに触れるだけのキスをした。
「まずは今夜に、だ」
「いいねぇ」
 唇を離し、低い声で囁いたトーマを熱っぽい目で見返し、ターレスは楽しげに答えた。
 ごく小さな音を立てて触れ合ったグラスの中、赤い酒が小さく揺れた。





はい。もうなんだか分かりませんねww
とりあえずごちゃごちゃ五月蠅いこと言われそうにないこじんまりした店を選んで入ったタレさん(19)が、ワインバーオーナートマさん(27)と出会い、未成年指摘されてからがスタートだった二人です^^若すぎて上手く行かず、別れたけど、お互いふとした拍子に思い出しては会いたいと思ってたらいいなぁ、なんて、スイマセン。妄想暴走w(;´▽`A``

23:46|comment(0)

back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -