ちょっと嬉しい(トマカカ妄想付)

2014.09.25.Thursday


【Strange Familiar Face(…の冒頭だけw)】

 それは遠征から帰還したある夜の出来事だった。
 夕食を兼ねて酒場に立ち寄ったトーマは、営業目的で引き止めようとする店の女に適当な挨拶をして家路についた。
 何となく歩きたい気分になり、家から少し離れたところで地面に降りる。蒼く光る月が、下級戦士の居住区を冴え冴えと照らしていた。

 そういえばあと数日で八年に一度の満月だった。
 
 剥き出しの腕と足を撫でる夜風の心地よさを感じながら夜空に目を向けると、戦闘民族の星には不似合いに思えるほど美しい月がトーマを見下ろしていた。
 満月の前にまとめて食料を手に入れておかないと、その日は星中が息を潜めてしまう。
 独り者の下級戦士にとって、満月は随分退屈な夜だ。女でも男でもサイヤ人の血を騒がせる月に惑わされて身体を投げ出す者はいくらでも見つけられるだろうが、たとえ悪友どもにからかれようと、一夜限りの関係はどうもトーマの性に合わない。もちろん、もう少し若い時なら、発情期をコントロールできないこともあったが……

 つらつらととりとめのないことを考えながらあと少しで家というところまで来たトーマは、明らかに自力で立っているのが辛そうな見知らぬ青年が自宅の前にいるのに気づいた。

 どこの星の奴だ……

 戦闘服こそサイヤ人も愛用している見慣れたものだが、俯いて苦しげに息を吐いていてもなお端正な横顔の青年は、今夜の月のエネルギーをその身に吸い込んでいるのかと思わせる淡い金のオーラを纏っている。これだけ目立つ風貌の異星人ならとっくに噂になっていそうなものだが、トーマが星を離れている間に来たのかもしれない。
 惑星ベジータは捕虜上がりでフリーザに仕えることになった異星人も少なくないから、大かたこの青年も制圧された星の生き残りだろう。
 逆立った金髪と同じ色の尻尾を苦しげに垂らし、肩で息をしている青年に近づきながら、トーマはアンダースーツの下に押し込んでいたスカウターを付けた。

「――っ、な、んだ!?」
 別に危害を加えそうに見えた訳ではない。
 ただ、見知らぬ男の戦闘力を測ることはサイヤ人の修正のようなもの。
 だが、トーマのスカウターはその数値を知らせることなく、一瞬でオーバーフロー状態になり、緑の液晶が弾け飛んだ。
 
「トー、マ……?」
 警戒することすら馬鹿馬鹿しいほど力の差がある相手を目の当たりにして呆然としていると、壁に片手をついて苦しげな呼吸を繰り返していた青年はトーマの声に気づいて顔を上げ、思いがけずトーマの名を呼んだ。
「オレを……知ってるのか?」
 二度目の驚きで言葉を出すことが出来た。
 青年は翡翠色の瞳でトーマをジッと見据えていたが、ゆらりとした足取りで近寄ってきた。
「オレが、分から、……な……」
「おい!」
 まだ寒いとまで言える季節でもないのに青年が吐く息は喋るたび白く変わる。
 身体が燃えそうなほどの高熱に浮かされているのだと気づき、トーマは相手の戦闘力や素性を確かめることも忘れて、慌てて手を差し伸べた。
「大丈夫か?」
 フラリと倒れ掛かってきた青年を抱きとめ、軽く頬を叩く。
 青年は頷き、僅かに首を動かしてトーマの耳に唇を寄せた。
「……だい、じょうぶ。月の……せぇ、だと思う、多分」
 掠れた声で答える青年がどうすれば楽になるのか分からないまま背中を撫でてやると、あ、と短く声を上げた。
「すまん、痛かったのか?」
「違う。トーマ……っ、オレ、もうダメだっ。頼む、から……シテ」
「は?」
 何を言われたか分からず、間抜けた返答をしてしまう。
 だが、トーマより頭半分ほど背の高い青年は、文字通り息も絶え絶えといった様子でトーマの肩に頭をあずけ、形のいい筋肉がついた両腕をトーマに回した。
「突然、で、……悪い、と思うけど、このままだとオレ、死ぬか……どっか飛んでって、誰でもいいから犯してくれって言っちまう」
「おい、おまえ、いったい……」
「今夜だけで、いいんだ、トーマっ。相手に、ならないガキだってことくらい、分かってる、でも、頼むよ」
「何故オレなんだっ、おまえ、いったい……」
 訳が分からず、青年の肩を掴んで身体を離させ問い質そうとしたトーマは、単純明快なほどはっきりと欲を孕んだ青年の目が月光を受けて青く光るのを見て言葉を切った。
「トーマ……」
「どう、なってるんだ、いったい」
「家に入れるのが、嫌ならここで、犯してくれてもいい」
「馬鹿かっ、くそ!」
 ただ、一夜の相手が欲しいというのとはどこか違う、見知らぬはずの青年から真っ直ぐな情熱を感じ、突き放せなくなる。トーマは立っているのもやっとの相手に肩を貸し、家へと歩き出した。
「入れて、くれるんだ?」
「何故オレなのかは分からないが、……おまえの望みどおりにしてやる。だが、外でじゃあんまりだろう」
「……ありがとう」
 安心したように微笑んだ青年を促して歩かせ、トーマは胸のざわめきがただの動揺だけではなくなっているのを感じていた。




・・・・はい、ザ★中途半端(*´∇`*)

23:09|comment(0)

back

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -