秋めいてきましたね^^(タレカカ妄想付)

2014.09.20.Saturday



 一メートル先の角を曲がれば、自宅のドアと言うところに来て、ターレスは小さく舌打ちした。

 劣悪な環境の星をたった一人で制圧し、決まり通りの遠征報告を終えたターレスへの労いは『思ったより時間がかかったな』の一言だけ。
 フリーザの配下で今さら何を期待するわけでもなかったが、当然心地よく受け止められることでもない。返事もせずに立ち上がり、踵を返してだだっ広い部屋を出てからずっと押し殺してきた苛立ちが、あと少しでプライベートな空間だと思った途端、取り繕うことなく露わになった。
 いつもなら面倒な遠征報告は同行者に任せるところだが、単独派遣ではどうしようもない。以前、対面報告をすっぽかした時に、サイヤ人にとって一番辛い制裁とも言える、半年の遠征派遣停止を言い渡されて以来、頭を下げ、平静な顔を保っていれば過ぎる時間だと諦めることにした。

 全身をベールのように覆う埃をシャワーで流したら、安酒でも飲んで寝るに限る。
 そんなことを思いながら、角を曲がった途端、何かに躓いた。
「っ、何だ、畜生っ」
 無様にスッころんでしまい、怒りを露わにして毒づいたターレスは、自宅の玄関脇で膝を抱えて座り込んでいる男に気づいて、ジロリと睨みつけた。
「おい! こんなところで何してるんだ!」
「……ターレス?」
 ターレスに怒鳴りつけられ、さっと顔を上げた男は明らかな寝ぼけ眼で顔を上げた。
「カカロットか?」
 思いがけない相手だと気づき、訝しげに問いかける。
 まだ満月まで七年以上かかる月は、夜を照らす役には立っていなかった。
「うん。良かった、今日であってた」
「オレを待ってたのか?」
 嬉しそうに立ち上がったカカロットを尻もちをついたまま見上げ、ターレスは眉間の皺を深くした。
「うん。今日帰ぇるって聞いたけど、時間が分かんなくて、待ってたら寝ちまった」
 ターレスは自分も立ち上がると、ヘヘっと笑ったカカロットを訝しげに見つめた。
「オレに何か用なのか?」
「……えっと、まぁ、そうなんだけど、入っちゃダメか?」
 互いの表情もハッキリ見えない闇の中で話すのは落ち着かないのだろう。
 正直機嫌がいいとは言い難い状態だからイエスと答えたくはなかったが、天真爛漫すぎるあまり空気の読めないカカロットが珍しく遠慮がちに尋ねるのを見ると切り捨てるのも忍びなかった。
 ターレスは迷惑そうな溜め息を吐いて見せることは忘れずに、長く不在にしていた家を開錠すると、顎でカカロットを促して中に入った。

「手短にしてくれ。ご覧のとおり遠征帰りだ。風呂に入ってゆっくり休みたい」
「うん。分かってる。ごめんな」
 曖昧な笑顔で素直に謝罪されると、罪悪感を感じ、溜め息が漏れる。ターレスは食器棚から適当なグラスを出して酒で満たすと、カカロットにも差し出した。
「あ、さんきゅ」
「それで? 何の話だ」
 丸い石製の椅子に腰を下ろし、単刀直入に尋ねると、カカロットは何かもごもご言った後、いきなりグラスの酒を一気に煽った。
「おい、大丈夫か?」
 何度も酒を酌み交わしたことがあるわけではないが、ターレスの記憶では、カカロットはお世辞にも酒に強いとは言えないはず。
 突然のことに止める間もなく、目を見張ったターレスの目の前でカカロットはみるみる赤くなっていった。
「へいっ、平気っ、だ。あのなっ、ターレス!」
「な、なんだ?」
 独り暮らしのサイヤ人の家によくある四角い小さなテーブル越しにグイッと身を乗り出してきたカカロットの迫力に押されつつ、ターレスは眉を寄せて返事をした。
「おめぇがっ、遠征行く前の日、なんだけどっ」
「ああ」

 ……忘れてなかったのか。

 気のない相槌を打ちながら、ターレスは漸くカカロットの訪問の意味が分かった。

「あの時っ、オラっ、その、すげぇ酔っぱらっててっ記憶がいっぺぇ途切れてんだ」
「だろうな。――あれでよく襲われなかったと感心した」
 どうやら悪友達に付き合って飲み過ぎたらしいカカロットが前後不覚のままターレスの家の前に倒れていたのだ。送り届けようかとも思ったが、ここに泊まると繰り返すカカロットを仕方なしに家に上げてやったのだが……
「あの、時……そのっ、オラ、たち……何かあったんか?」
「――あったと言ってもなかったと言っても覚えてないなら同じだろう」
 いつもの余裕を取り戻したターレスは、酒を一口含む間、カカロットを待たせて、静かに答えた。
「だよ、な……」
 あからさまに落ち込んでいるカカロットを見て大袈裟な溜め息を吐き、ターレスはカカロットの隣の椅子に移動した。
「安心しろ。何もしちゃいない。あんな酔っぱらいを相手にしなきゃならないほど相手にも困ってないからな」
 ポンポンと肩を叩いてそう言うと、カカロットは今にも泣きださんばかりの顔でターレスを見た。
「違ぇんだっ。……あの日、オラ、友達と飲んでたなんて嘘なんだよ」
「は?」
「めちゃくちゃ酔っぱらえば、ターレスにも、その……かと思って」
「何だ?」
 はっきりと聞こえず問い質すと、カカロットは酒のせいだけとは思えないほど赤くなった。
「ターレスにも、相手してもらえるかと思ったんだっ。オラっ、一回だけの相手でもなんでも、初めてはターレスがいい!」
「ハァっ!?」
 状況から考えても、カカロットがあの日、ターレスにセックスを迫るつもりだったという意味以外考えられない。予想だにしなかった告白を受け、ターレスは滅多にないほど驚いていた。
「分かってるよっ、オラ、ターレスから見たら子どもみてぇだろうしっ」
「いや、まぁ、身体だけはデカくなってきたとは思うが……」
「――頭はまだガキってことか?」
「それは分からないな。まさかおまえがオレとしたがってるとは思ったこともなかった」
「対象じゃねぇって意味だよな、それ」
 シュンとうなだれたカカロットを黙って見つめていたが、ターレスはカカロットの顎に手を添え、やや強引に顔を上げさせた。

「――んっ、ぅ、ぐ、ふ……」
 一言の断りもなく唇を重ね、目を丸くしているカカロットに構わず歯の隙間から舌を挿しいれる。まだ目を開けっ放しでパニックしているカカロットはターレスの浅黒い腕を掴み、舌を絡め取る動きを深めるたび、腕にかかる力も強くなっていった。
「こんなもんじゃすまないんだぞ、意味が分かってるのか?」
「オラっ、そこまで子どもじゃねぇ!」
「……何故オレなんだ?」
「おめぇは覚えてねぇだろうけど、まだオラが小さい時、結構家に遊びに来てくれてただろ?」
「ああ、そうだな」
「――おめぇ、オラとだいぶ歳も離れてたのに、嫌がらず遊んでくれて。だから、オラ、絶対大きくなったら父ちゃんと母ちゃんみてぇに、おめぇとずっといるんだって決めてたんだ」
「はぁ……」
「でも、そのっ、そういうのは……あんま男同士でしねぇって分かって、それでも、おめぇといたかった。だから、一回だけでも、相手してくんねぇかなって思ったんだ。おめぇにとって特別になれなくても、おめぇとの特別な思い出が残ればいいかなって」
「……忘れるほど酔っぱらってか?」
「それはっ!! そ、そうだけど……」
 真っ赤な顔で反論しかけたが、カカロットは何も言えずに俯いた。
「全く、危なっかしい奴だな。サイヤ人のくせに、そんなに誰か一人を思って、隙だらけでどうするんだ」
「そう、だよな……」
「ま、あのギネの子なら、それもありなのかもしれない。バーダックまで丸くしちまうくらいだからな」
 フッと笑みを零し、ターレスはカカロットの前髪をかき上げた。
「おまえを一度だけの遊び相手にしたら、おまえの両親に殺される」
「オラ、何も言わねぇ」
「……それは、つまりオレとは一度きりで十分だと言うことか?」
「ち、違うよっ」
 慌てて首を左右に振るカカロットをジッと見つめ、ターレスは自身の胸の奥にじわりと広がるくすぐったいような、甘い感情をどう受け止めたものか分からず、小さく息をはいた。
「ターレス?」
「セックスを知りたいだけなら、今すぐ教えてやる。――オレを知りたいのなら、シャワーを浴びて、そうだな。今夜はとりあえず一緒に飯を食ったら、オレが眠るまで話しでもしないか?」
「うん!」
 目を輝かせたカカロットの唇に軽く触れるだけのキスをし、ターレスはフウッと息を吐いて立ち上がった。
「オラ、なんか作るな?」
 バスルームへ歩き出したターレスの背中に、カカロットが弾む声で言った。
「出来るのか?」
「簡単なもんだけだけど、兄ちゃんに教わってっから」
「そうか。じゃあ、頼んだぞ」
 ターレスは薄い弧を描いた笑顔で答え、自分に似つかわしいとも思えない穏やかな会話を頭の中で反芻していた。





まだまだこれからーな二人です^^
きっとタレさんに開発されるんだよ、色々星

22:45|comment(0)

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