あっと5日♪(タレ空妄想付)
2014.07.02.Wednesday
【Bitterness】
自分とクラスメイトたちの大きな違いがあることに初めて気づいた時、ターレスは十二歳だった。
小学校の卒業式を三日後に控えたある日。
放課後、ターレスのクラスの生徒は数組のグループに分かれ、担任に感謝を表すサプライズ企画の準備をしていた。
グループの一人の家に集まって準備をしながら、男子だけになった時、待っていましたとばかり始まった会話にどう加わっていいかさっぱり分からなかったことがきっかけだ。
「ターレスも言えよ!」
隣に座っていた友人に肘で脇腹を小突かれ、皆の注目がターレスに集まる。
要するにクラスの女子で誰が一番可愛いと思うか、誰それが誰を好きだと言った類の話だが、ほとんど聞いていなかったから、誰の名前で盛り上っていたかも分からない。
耳だけ肥えた会話に出てきた行為には多少興味をそそられたが、そんなことをしたいと思うような女子は一人もいなかった。ターレスのクラスの一番人気ということらしい女子の顔さえ、思い出そうとしてもさほど際立った印象としては浮かんでこない。
心の底から面倒くさく、舌打ちしたい気分になる。
「おまえ、モテるから、好きな奴いるなら卒業前に告っちゃえば?」
好奇の視線を受け、誰か適当な名前を上げるしかないだろうかと諦めかけた時、思いがけないところから助け舟が入った。
「おめぇら、もう止めろよ」
「何だよ、悟空。つまんねーこと言うなよ」
「だって、言いてぇ奴ばっかりじゃねぇだろ。オラだって、女子なんかみんな同じに見えるっちゅーか、よくわかんねぇぞ。それより早く色塗っちまわねぇと間に合わなくなって、買いだし組に文句言われっぞ」
悟空と呼ばれた少年もターレスとは恐らく理由は違うだろうが、ウンザリした様子で言った。
「あ、じゃあ、オレこっち塗るよ」
「そっか? さんきゅー、ターレス」
歳の割に落ち着いているターレスとは対照的に、いかにも小学生男子といった快活さを持った悟空とは、これまであまり話をしたことはない。ただ、特に根拠もなかったが、話しをした時にはお互い何となくウマが合うと感じていた。悟空に渡されたサインペンを受けとり、黙々と模造紙に描かれた絵を塗り始めると、ワイワイ騒いでいた他のクラスメイト達も作業に加わってくる。
ターレスは心の中で悟空に感謝しつつ、目の前の作業に没頭していった。
それから十日後。
中学の入学式の日、校門前で悟空にばったりあった。
「あ、ターレス、おはよう!」
「おはよう」
悟空の屈託のない笑顔にターレスも笑顔で挨拶を返す。
玄関前には大きなベニヤ板を立てたものが並べられ、どうやらクラス名簿が貼られているらしい。
何となく二人並んでまだ着慣れない学生服に身を包んだ集団に近寄り、名前の並んだ紙に目を向ける。悟空がA組から確認し始めたのを見て、ターレスは反対のEからチェックすることにした。
「ターレス!!」
「ん?」
いきなり大声で名前を呼ばれ、悟空の方を見ると、目を輝かせて手招きしている。
何だろうと思いながら近づいていたが、待ちきれず駆け寄ってきた悟空に手を握られ、B組の名簿の前まで引っ張って行かれる。
「ホラ!」
「あ、ああ。悟空、B組なんだな」
「おめぇもだよ!! オラだけなら知らせても仕方ねぇだろ」
悟空はじれったそうにターレスの名前が書いてあるところを指差した。
本当は悟空の名前を見つける前から気づいていた。
飛び上がりたいほど嬉しかったが、その時、ハッキリと自覚した感情をどうしていいか分からず、気づかないフリをしたのだ。
「……ほんとだな」
「あれ? 嬉しくねぇんか?」
明らかにがっかりしている悟空を見て、慌てて首を振る。
「違う違う。嬉しいって! 前から、悟空とは二人、……あ、えっと、もっと話してみたいと思ってたし」
二人でと言いかけたのを慌てて誤魔化し、笑顔を作る。
「そっか! あ、とりあえず教室行かなきゃいけねぇな」
「ああ」
「ターレス?」
「いや、悪い。行くか?」
離れかけた悟空の手を思わず握り直してしまった。
当然驚いて目を丸くしている悟空に少し引きつった笑顔を返し、ターレスは内心名残りを惜しみながら手を離すと、先に立って歩き出した。
「うん……」
戸惑いながら頷いた悟空が、すぐに早足で追い付いてくる。
ターレスは否定できないほど急速に膨らんでいく思いの苦さに、漏れかけた溜め息を噛み殺した。
end
タレさん同性愛意識&初恋でしたw
一応このタレであと何話か……相手を変えて予定したい。←願望過ぎwww
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