なんなのだよ(*Vдv艸)(タレカカ妄想付)

2014.07.02.Wednesday


 鼻先に人の気配を感じて、自分が眠っていたことに気づいた。
 いつもの癖で警戒心が先に立ったが、シーツについたミント系のリネンウォーターとレモングラスのシャンプーの香りが、目の前の相手が誰かを教えてくれた。
「どうした?」
 先に訪ねてから目を開けると、カカロットが文字通り飛び上がらんばかりに驚いている。
「お、起きてたの?」
「いや」
 欠伸を噛み殺して答えると、さも申し訳なさそうに金の眉を下げた。
「何でもないよ、ごめん」
 困った奴だな。
 笑みが零れそうになったが、笑えば傷つけるに違いない。
 ――いつまで遠慮する気なのか、いい加減往生際が悪い。
 まぁ、生い立ちを思えば、突然あらゆることが不安になるとしても無理はないが。
「……何でもないって顔じゃないが、言いたくないなら追及はしないでおく。それよりもっとこっちに来い、カカロット」
 風呂上がりでまだ少し湿った金髪に指を通し、促すように肩を抱く。
 素直にオレの脇に頭をあずけたカカロットは、鼓動を確かめてでもいるように青い目を閉じた。
「オレ、もっともっと勉強して、ターレスの役に立てるようになるから。それまで、待って……って言うのは可笑しいけど、でも、……」
 何を言うかと思えば……
 いつもなら皮肉な視線を返し、歯牙にもかけない言葉ばかりだが、カカロットに言われると胸の奥へダイレクトに響いてくるような錯覚を覚える。
 オレをここまで骨抜きにしておいて……
「何がそんなに不安だ?」
 頭で考えていたことを途中から口にすると、カカロットはどうやら泣き出しそうになっているのか、ごく一瞬鼻をすすり、オレの胸に顔を押し付けてきた。
「カカロット」
 頭を撫でながら声をかけ、顔を上げさせようとしたが、頑なに動こうとしない。
「な、に……っ」
 何ごともないフリをしようとしたカカロットの声は途切れ、語尾が震えている。
「オレを見ろ」
 低い声で命じたが、カカロットはくるりと背を向けてしまった。
「嫌だ、今は……っ、ごめんっ」
 肩を震わせ、明らかに涙声になっているカカロットを見ていると、甘い囁きで慰めるよりも直接的な衝動が込み上げてくる。
「カカロット」
 肩に手をかけ、身を乗り出し、耳元でもう一度名前を呼ぶ。
 背伸びをしようとして、一人で不安になり、愛されていることを証明して欲しいと思いながら口にできずに身悶える。
 ――陳腐な言葉を聞かせるつもりはない。
 ただ、オレをどこまで虜にしたら、コイツは安心できるのだろうか。
 一人の人間に心酔している自分を想像したことはなかった。
 ……だが、カカロットと過ごす時間を重ねていくことが出来れば、それはきっと起こり得ることだ。
「起こして、ごめ……っ」
 もはや隠しようもなく、涙で声を詰まらせているカカロットの耳に口づけ、諭すように囁く。 
「おまえが目の前にいるのに夢の方がいいわけないだろう? こっちを向け。――それとも、オレには慰めさせてくれないのか?」
「だって、――こんなっ、訳分からず、泣くなんて……子ども、みたいだ」

 言い聞かせようとするだけ無駄だな。
 
 掴んだ肩に力を込め、こちらに背を向けているカカロットを強引に仰向けにする。
 カカロットは驚いて息を飲むと、整った顔を幼子のように歪め、青い目から涙を溢れさせた。
「ごめ……っ」
 端正な顔を濡らした涙を指で拭で拭ってやる。
 詫びかけたカカロットを真っ直ぐ見つめ、幾つの言葉を重ねるよりも確かな繋がりを与えてやろうと思った。
「抱くぞ」
「え?」
 端的な言葉に驚きの声を上げたカカロットの頬を片手で包み込む。
「オレは保護者と言ってもおまえと血の繋がりはない。……想いを伝えるのが得手な方でもない。だから、おまえがオレを身近に感じたいのなら」
 言葉をかけながら、オレの目の前に無防備にさらけだされたカカロットの白いうなじに吸いつき、鎖骨をねぶった。
「うんっ、ぃ、あっ、っ」
「――そうやって力を抜いて、全部オレに預けていろ」
 平らな胸を撫で、先端を指先で掻くと、カカロットの反応が熱っぽくなる。
「ターレスっ、――っ、ぁ……!」
 余計なことなど考える必要がないように、この手で舌で快感の淵に沈めてやろう。熱病のような感覚に導き、心を曇らせる余地がないほど、オレの存在をこの身体に刻んでやりたい。
 ありきたりな慰めの言葉の羅列よりも生々しく、もっと即物的な時間。
 ――そうだ。
 オレを感じていればいい。そうだろう、カカロット。
「ターレス……っ」
 繰り返し、繰り返し、快感の中からオレの名前を呼ぶカカロットの声は、最高の媚薬だ。
「離せと言われても、もう離す気はない。安心しろ」
 肉欲に翻弄され始めていたカカロットは、オレの言葉に答える代わりに背中に爪を立てた。



,、'`,、 (´∀`) ,、'`,、
・・・・・・どっちサイドでも難しかった。
ただ、あえていうならタレさんの方が若干書きやすい……かな。気のせいの可能性も大だけど<●><●>

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