月曜は……(タレカカ妄想付)

2014.06.30.Monday


「……ターレス?」
 ノックをしても返事がない。そっとドアを開け、控えめに声をかけてみてもやっぱり答えは返ってこない。
 間接照明だけになった部屋を突っ切り、足音を忍ばせてベッドに近づく。

 寝ちゃったのか……

 早めに風呂を済ませたから、少し残念だった。
 ただ、ターレスの寝顔をジックリ見るのは初めてかもしれない。起こさないように、気づかれないように、息を潜めて顔を近づけ、額の上の前髪にキスをする。くすぐったそうに眉をひそめたのを見て、心臓が大きく跳ねた。
 起こしてはいないと分かり、ホッと息を吐く。
 意外なくらい穏やかなターレスの寝顔を見ていると、愛しくて堪らなくなり、胸の奥まで熱くなる。写真に収めたいなと思ったけど、バレたらきっとすごく怒られてしまうだろう。それに自分のこの青い二つの目以外、たとえそれが無感動なレンズでもこの顔を映すのは嫌だった。
 起こさないように気をつけながらベッドに潜りこみ、真横にあるターレスの顔を改めて見つめる。いつもオレが眠るまでつまらない話でも馬鹿にすることなく静かに聞いてくれるターレスが、仕事には非情だと聞いても正直ピンとこなかった。
 
 偶然というには出来過ぎた出会いからもう10年。
 ターレスといる時間が当たり前になってきたことは嬉しくもあり、怖くもある。
 本当にこんな幸せがいつまでも続くのかと考えると、いつも不安になるからだ。オレにほんとの意味での取り柄なんてあるんだろうか。

 ……いや、無ければ作ればいいんだ。

 そのくらいの意思がないなら、ターレスの傍にいる資格はない。
 いつものようにターレスが浅黒い大きな手で頭を撫でてくれているのなら、自分を奮い立たせるのは簡単だったけど、一人で考えているといつの間にかネガティブになる。

 情けないな。

「どうした?」
  思わず溜め息を零した直後、まるでさっきまで起きていたかのように声をかけられ、飛び上がりそうなほど驚いた。
「お、起きてたの?」
「いや」
 欠伸を噛み殺し、ターレスは眠そうに答えた。
「何でもないよ、ごめん」
「……何でもないって顔じゃないが、言いたくないなら追及はしないでおく。それよりもっとこっちに来い、カカロット」
 抱き寄せる太い腕に身を任せ、落ち着いた鼓動を感じる。
 ターレスはいつも本当にオレが何を欲しがっているか分かっているんだ。そう思うと、少しだけ泣きたくなった。
「オレ、もっともっと勉強して、ターレスの役に立てるようになるから。それまで、待って……って言うのは可笑しいけど、でも、……」
 大きな手が頭を撫でる感触に身を任せていると、訊かれたわけでもない言葉が次々漏れ出し、鼻の奥がツンと痛くなった。
「何がそんなに不安だ?」
 ストレートに問われ、抑えようとしていた涙が溢れる。泣き顔を見られまいとターレスの胸に額を押し付けた。
「カカロット」
「な、に……っ」
 情けない。声が途切れれば、泣いてるのはすぐにばれてしまう。
「オレを見ろ」
「嫌だ、今は……っ、ごめんっ」
 情けない。情けない。情けない。情けない。
 もうそれしか考えられなくなっていた。涙をのみ込もうとすれば肩が震える。堪らずターレスに背を向け、枕を抱きかかえた。
「カカロット」
「起こして、ごめ……っ」
「おまえが目の前にいるのに夢の方がいいわけないだろう? こっちを向け。――それとも、オレには慰めさせてくれないのか?」
「だって、――こんなっ、訳分からず、泣くなんて……子ども、みたいだ」
 結局、自分の心中を吐露してしまい、益々情けなくなった。
 背中でフウッと息を吐く気配を感じてすぐ、ターレスに肩を掴まれ、仰向けに寝かされる。多分オレの顔は涙でぐしゃぐしゃになっているのに。
 笑われるかもしれないと思ったけど、ターレスは人差し指を軽く曲げてオレの涙を拭いとっただけだった。
「ごめ……っ」
「抱くぞ」
「え?」
「オレは保護者と言ってもおまえと血の繋がりはない。……想いを伝えるのが得手な方でもない。だから、おまえがオレを身近に感じたいのなら」
「うんっ、ぃ、あっ、っ」
「――そうやって力を抜いて、全部オレに預けていろ」
「ターレスっ、――っ、ぁ……!」
 低い声が耳元をくすぐるだけで、さっきまでの感傷は吹き飛んでしまう。
 キスよりも欲情を剥き出しにした愛撫が、オレを翻弄していく。
 何故自分じゃ駄目かもしれないなんて疑ったのか。
 全てが馬鹿馬鹿しく思えるほど、ターレスの手や舌はいつも、――熱い。そして、映画や小説で見たどんな言葉より圧倒的で優しかった。
「ターレス……っ」
 行為の始まりから終わりまで、いつもオレは酔ったようにターレスの名前を繰り返す。
 それが何よりも甘い媚薬だから。



鍵なしなので強制終了(笑)
なんかスイマセン(;´▽`A``

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