朝から
2012.12.20.Thursday
これで何本目だったか……
ホテルのロビーから少し離れた喫煙スペースの銀の灰皿にタバコを押し付け、苦笑いする。
何も待ちぼうけをくってるわけではない。約束の時間までまだ30分はある。時計を確認し、新しいタバコに火を点けるか迷っていると、半面ガラス張りのドアの視界ギリギリのところをロビーに向かう人影に気づいた。
カカロット?
浮き足立つあまり見間違えただろうかと危ぶみながら、喫煙スペースの扉を開け、さっきの男が歩いていった方に目を向けてみる。名の通ったホテルらしい落ち着いた雰囲気のロビーの、焦げ茶色の革のソファに座って携帯を取り出した青年は間違いなくカカロットだ。芸能人だと言われてもおかしくない整った容姿はただ座っているだけでも、ロビーを通る客がチラチラとカカロットを見ている。一瞬近づくのを躊躇していると、携帯から顔を上げたカカロットと目があった。
「トーマ!」
青い目を見開いて立ち上がったカカロットが嬉しそうに笑い、近づいてくる。周囲の視線が自分に集まっているのを痛いほど感じながら、額に汗を滲ませて笑顔を返した。
「もう来てたんだ」
「ああ。おまえも早かったな」
「うん。なんか、さ……初めてトーマとクリスマスにデートで、しかもホテルで食事なんて思うと、落ち着かなくて」
照れ臭そうなカカロットの答えに緊張が緩む。
「いや、実は俺もだ。慣れないことはするもんじゃないと思ったが、やっぱり特別な日にしたい気持ちもあってな」
頭をかきながら説明すると、カカロットの頬が微かに赤くなった。
「嬉しいよ、ほんとに」
「まぁ、俺はともかく、おまえにはよく似合う場所だ」
そう言ってカカロットの髪を片手で軽くつぶすと、青い目が柔らかく微笑んだ。
「俺に一番似合う場所は、トーマの隣」
幸せそうな笑顔に笑顔を返し、トーマはカカロットの腰に手を添え、好奇の目を無視して歩き出した。
リア充クリスマス〜♪ヽ(´▽`)/
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