さすが

2012.12.17.Monday



コーヒーメーカーが豆を挽く音が遠くから聞こえ、ん、と声を出して寝返りをうつ。

まだ少し気怠るい体を起こそうとして、隣の男に手がぶつかってしまう。

あれ……?

先に起きたターレスがキッチンでコーヒーを淹れているのだと思っていたから、少し驚いてしまった。用意だけしてまたベッドに戻ってきたのだろうか。

それなら続きは自分がしてやろうと思い、起こさないように気をつけながらブランケットに手をかける。半分もめくらないうちに悟空は口をあんぐり開けて、暫くは言葉もなくただただ隣で眠っている男を見つめていた。

「……おはよう、悟空」
「カ、カカ!?」

眠っていたわけではないのだろう。
ニッコリ笑ってこちらを見ているのは、数年前に長期出張に出て以来、電話で声を聞くだけになっていたカカロットだ。少し照れくさそうな声も、青い瞳も、端正な顔を引き立てる金髪も、記憶の中とまったく変わらない。
悟空は一声叫んだ後、何か言おうとしたが言葉にならず、黒い目からボロボロ涙をこぼした。

「悟空、大丈夫?」
「う、んっ、オラ、お、驚い……っ、て……」
「ごめんな。ほんとは4日前にこっちに帰ってくるのが決まって、昨日ターレスと会ったたんだ。その時にサプライズにしようって計画して……」
「じゃ、じゃあ。ターレス、……はっ、ヒクッ、ーーっ、知ってたんか?」
「怒らないでくれよ?オレが悟空に黙っててって言ったんだから」
「いい子のところにはサンタが来るもんだろう?」

不意に戸口から聞こえた声にカカロットが振り返り、泣かれちゃったと苦笑いを見せる。カカロットに抱かれて、背中をさすってもらっていた悟空は、顔を上げてカカロットの肩越しにターレスを見た。

「ターレス、今度は……おめぇが、どっか行く、とかじゃねぇよな?」
「なんだ?カカロットと水入らずがいいのか?」
「そんなこと行ってねぇ!!」
「わかってる、怒るな。黙っていたのは悪かった。……だが、せっかくのクリスマスだ。おまえを驚かせたいカカロットの気持ちも分かるだろ」
「うん。……でも、オラも……一日でも早くカカに会いたかったな」
「悟空……ごめん、でも、これからは三人一緒だから、な?」
「うん。三人のクリスマスなんて久しぶりだな」

気を取り直して笑顔になった悟空にターレスが片頬を上げた笑みで答える。カカロットは少し寝癖のついた黒髪を愛しむように優しく撫で、悟空の頬にキスをした。

「食事にするぞ」
「うん。あ、あの、さ……」

カカロットと一緒にベッドを降りた悟空は、少し迷ってからターレスの腕を軽く掴み、上目遣いで声をかけた。

「なんだ?」
「き、昨日、カカと会って、その……おめぇら……」

言い始めた側からどんどん赤くなっていく悟空を見て、ターレスがおかしそうに目を光らせる。悟空の隣のカカロットに片眉を上げて見せ、ターレスは俯いてしまった悟空の顎を片手ですくい、触れるだけのキスをした。

「秘密だ」
「あ、ずりぃ!!」
「よけいなこと気にしなくていいくらい、今夜はオレとターレスでたっぷり悟空に奉仕するよ」
「オラ、別にそういう……っ」

耳まで赤くなった悟空を見て楽しげに笑い、カカロットはターレスの意味ありげな視線に軽く舌を出して答えると、悟空の手を握ってキッチンへ歩きだした。




タレ金さんが再会の日になんかあったかは、お好みで(笑)

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