さらに倍っ//////

2012.11.21.Wednesday


 新幹線の窓側の席で窓の細い縁に肘をつき、ホームを行き交う人の流れに目を向ける。

 発車のベルと扉が閉まる音にフッと自嘲気味な笑みが浮かんだが、半分諦めてもいたことだと思い直し、ターレスは周囲に気づかれない程度の溜め息を零した。


 賭けは、……オレの負けか。

 煙草が欲しくなったが、全席禁煙ではどうしようもない。
隣の空席に鞄を置き、暇つぶしにタブレット端末を開いた時、真横の通路で誰かが立ち止まった。

「すいません。ここオレの席なんですけど」
「カカロット……」
「荷物、どけてくれよ」

 硬い表情で言った青年の名はカカロット。もう別れて3ヶ月になる元恋人で、ターレスが発車間際まで待ち続けていた相手だ。

 最後に会った日よりも、幾分大人びて見える青い瞳を見つめ、無言で荷物を退ける。
 ほとんど手ぶらに近い格好のカカロットは、少し乱れた金髪を片手で梳き、眉間に皺を寄せてターレスの隣に座った。

「……もう、来ないかと思っていたが、な」
「来るつもりなかったよ。……でも、結局チケット捨てられなくて……気づいたら、時間ギリギリなのにホームを全力疾走して……飛び乗ってた」
「期待するぞ?」

 抑揚のない声にカカロットのこめかみが引きつる。
  
「何のつもりで連絡してきたか、聞きに来ただけだよ。もう……、振り回されたくないんだ」
「新しいパートナーがいるってことか?」
「関係、ないだろ」
「……いたら、おまえはここに来ないな」
「分かってるなら聞くな」

 フイっと顔を背けたカカロットの頭に手を伸ばし、強引に視線を合わさせる。混乱した青い瞳をじっと見つめ試すように顔を近づければ、カカロットは一寸大きく目を見開いたが、ターレスの唇が頬に触れるのを避けようとはしなかった。

「おまえに謝るまではキスする資格はないだろう?」
「ターレス……」
「悪かった」
「もう、いいよ。呼ばれて、来た時点で……もう、自分の気持ちに逆らえなかったってことだから。でも、どうして、新幹線なんかに呼び出したんだよ」
「来なけりゃ、手っ取り早く一人で傷心旅行に行けるからな」
「ハハっ。相変わらず勝手だよな」

 声を上げて笑ったカカロットの手を座席の肘掛けの上で握り、ターレスはややシニカルな笑みを浮かべた。

「カカロット……」
「何?」
「今度こそおまえから逃げだしたりしない。だから覚悟を決めろよ」
「覚悟?」
「愛される、覚悟だ。……オレは一筋縄じゃいかないからな」

 唇を引き上げてそう言ったターレスの頬に片手を添え、カカロットは身を乗り出して触れるだけのキスをした。

「オレも今度は逃がさないから、ターレスこそ覚悟決めろよ?」
「ああ」

 周囲の視線が自分たちに集まっているのを気にすることなく、二人は重ねた手に軽く力を込め、もう一度吸い寄せられるようにキスをした。




何か公共の場でいちゃいちゃさせたかっただけです(^▽^;)
さて、もうちょっとだけ頑張って寝よう^^

23:23|comment(0)

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