またもまたも

2013.09.17.Tuesday


 ポンと肩を叩かれ、振り返ってみると、長い髪を後ろでまとめた男がターレスを見下ろし、フッと笑った。

「捕まえたぞ」
 眉を上げて楽しげに言った男はトーマ。
 ターレスと同じ下級戦士で、幼い頃に親を亡くしているターレスをいつも気にかけてくれている。もっとも、ターレスに言わせれば頼んだわけでもないのに大きなお世話だというところだが、悪態をついても実際親子に近い歳の差のせいか、トーマはいつも軽く受け流していた。
「――スカウターがありゃ分かるだろ」
 子どものように膝を抱えてぶっきら棒に答え、ふいっと顔を背けてみても、男は特に機嫌を損ねた様子もなくターレスの隣に並んで腰を下ろした。
「ムードのない奴だな」
「意味わかんねぇ」
 緑の少ない惑星ベジータには珍しく、柔らかな草に覆われた小高い丘を吹く風は少し冷たい。手足がむき出しの戦闘服で何もせずに小一時間も座っていれば、当然冷えてくる。堪えきれず短いくしゃみをすると、肩からふわりとしたものがかけられた。
「何?」
「プレゼントだ」
「え?」
 浅黒い肌を覆った布を広げてみると、どうやらマントらしい。
「何でこんなもん……」
「寒いの苦手だろ? 初の単独遠征のお祝い兼実用だな。あの星は寒い」
「じじ臭い。オレは若いんだよ」
「……もう一つ理由もあるんだが」
「何だよ?」
 いつもはエリート戦士相手でも皮肉な態度をとるターレスだったが、トーマと話しているとどうしてもムキになってしまう。
「あんまり肌出してウロウロするな」
「は?」
 思いがけない言葉にターレスらしくない間抜けた声が出た。
 トーマは何やら口の中でブツブツ言いながら頭をかいていたが、ふうっと息を吐いた。
「妙なのに目をつけられやしないか、心配なんだ」
「……バカじゃねぇの」
「あー、まぁ、そうだよな。これじゃおまえに下心があるって言ってるようなもんだもんなぁ」
「そのつもりでガキの頃からオレに構ってたのか?」
「――そういうつもりじゃない。合意の上じゃなきゃ手は出さない。約束する。おまえに嫌われたくはないからな」
 トーマは少し決まり悪そうにそう言うと、ターレスの頭をポンと叩いて立ち上がった。
「飯まだだろう? 遠征前だし、いいもん食わせてやる」
「……うん」
「やけに素直だな」
「別に。……なぁ、トーマ」
「ん?」
「今度の遠征から、生きて帰ってきたら……その時答える」
 ターレスは独り言のようにそう言うと、マントを肩からかけ直し、トーマの言葉を待たずに勢いよく空へ舞い上がった。
「あの程度の星でおまえが死ぬわけないだろ」
 トーマは小さくなっていくターレスを見上げ、楽しげに言った。



タイムリミットだわ(*゜▽゜)ノ
万に一つだとしても、戦いの場にいく以上、絶対に生きて帰るって保証がないのがサイヤ人。
なので、最初はタレが遠征行ったらどうなるか分からないから、その前にって言う話を考えていたんですが、なんかそんな気弱なのはタレらしくないかなぁ?と思い、この展開に^^単独遠征を無事終えて、一人前のサイヤ人と認められてからなら自分もトーマさんのパートナーになれるとか思っていたら可愛いな、と★
うーん、何を舞台に書いても悲恋チックにはならない今日この頃。

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