止まらない(*^^*)

2013.09.09.Monday



「いってきます……」
不機嫌さを隠そうともせず、それでもとりあえず挨拶だけはして席を立つ。
三人で食卓を囲んだ時から、カカロットが不穏な空気を漂わせているのは分かっていたが、原因がわかっている悟空は何も言えず、唇を噛んですらりとした後ろ姿をみおくった。

「口きいてもらえないのが嫌なら追いかけて正直に言ったらどうだ?」
一人ポーカーフェイスで新聞を片手にコーヒーを飲んでいたターレスの言葉に悟空が勢いよく立ち上がる。
「そんなっ、カカに喜んでほしくてせっかく準備したのにっ」
「なら、辛気くさい顔するな。はじめからこういうことも予測できただろう」
テーブルから身を乗り出して抗議する悟空をチラッと見て、ターレスは軽く肩をすくめた。
「出来てねぇっ。お、おめぇが、あん時あんな……っ」
バンと机を叩いて大声を上げたものの、口にしかけた言葉が恥ずかしくなりしどろもどろになる。ターレスは出会ったばかりの時のような冷笑を浮かべ、テーブルに肘をつくと、サラダをつついていたフォークを小馬鹿にしたように揺らしてみせた。
「キスか? 自分も同じ日に生まれてるくせに、嬉しそうにカカロットのサプライズバースデーの企画してるおまえが可愛かったから、気分が盛り上がったんだ。オレはおまえたちのパートナーだぞ? 常に三人一緒じゃなきゃキスもできないのか?」
もっともな指摘に返す言葉が見つからず、悟空が唇を噛む。たまたま同じ日に生まれた従兄弟のカカロットとは小さい時から鏡台のように仲良く育ち、気づいたときには誰よりも特別な思いを抱いていた。もっとも、二人にそれを気づかせたのは、ターレスがいたからこそだ。
好きなら悩むことじゃないとあっさり言われ、特殊な性癖に驚く様子もなく二人に同性同士が求めあう意味も方法も教え、いつしか三人でいるのが当たり前になっていたのだが……

「ま、どっちにしても今夜はキャンセルだな」
「そんなっ。ケーキだって頼んでるしっ、オラッ……」
「出掛けてるはずの俺たちが、こそこそ家に残ってキスしていた訳を話せば、それで理解してもらえるだろ」
「それじゃサプライズになんねぇ」
「ふん、下らない。あとはおまえの好きにしろ」
「ターレス!」
大声で叫んだが、スーツのジャケットを羽織ったターレスは振り替えることなくて出ていった。

「……だって、三人で……っ、一緒に……迎える誕生日、はじめて……じゃねぇ、かっ」
涙が溢れそうになるのを堪え、喉をひくつかせながら切れ切れに声を絞り出す。
ぼんやり座ったまま食卓から動けなかった悟空は、携帯のアラームの音で我に帰った。
「……いかなきゃ」
差出人を確認することなく、ふらりと立ち上がる。
半日で帰宅する予定のターレスと食事の用意をするのに、本当ならいろんな店で買い出しをするはずだった時間だ。
たとえ計画が中止でもケーキだけはとってこなくてはいけない。もっとも、マンションの直ぐしたにあるケーキ屋だったが……

こうなったらケーキを一人でやけ食いしてやると決め、悟空は財布を手に立ち上がると、ため息混じりにキッチンのドアを開けた。

「−−っ?」
「悟空、おめでとうっ」
パンという破裂音に息を飲んだ悟空は、いきなり誰かに抱きつかれ、倒れそうになった。
「カ、カカッ?」
状況が飲み込めず、目を丸くしている悟空の黒髪にクラッカーの中から落ちてきた紙吹雪がくっついた。
バランスを崩した体を支えてくれた相手を振り替えれば、ターレスが少しシニカルに笑っている。浅黒い手が掲げた白い箱はマンションの下のケーキ屋のものだ。

ようやく自分が同じくサプライズバースデーを仕掛けられていたのだと気づいた悟空は安堵のあまり、カカロットを抱き返すこともできず、その場にしゃがみこんでしまった。

「悟空、ごめんな?」
「芝居で、良かったっ」
泣き出さんばかりの顔をした悟空を見て、すっかりうろたえてしまったカカロットは、自分もその場にしゃがみこむと、黒髪を何度も撫でてて必死で謝った。
「怒って、ねぇっ」
「そりゃ良かった」
「ターレスには怒ってっぞ!」
ムッと口を尖らせた悟空を見て、カカロットは思わず吹き出した。
「……なら、お詫びは今夜ベッドでしてやるさ。おまえにも、カカロットにもな」
ターレスは楽しげにそういうと、顔を見合わせて赤くなっている二人の頬にキスをし、開けっぱなしのドアからキッチンへ歩きだした。






タレカカ空、マジ、へブーン\(^_^)/

19:21|comment(0)

back

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -