ダメだ・・・・

2013.09.04.Wednesday


「ターレス!!」

 後ろから声をかけられ、ギクリと足を止める。

 ……瞬間移動か。
 舌打ちしたくなる衝動を抑え、仕方なく振り返る。 
 満面の笑みを浮かべた悟空と目が合うと、ターレスは軽く眉を下げ、苦笑いした。

「やっぱり帰ぇってきたんだな!」
「……瞬間移動は止めろと言っただろう」
「悪ぃ。でも、おめぇの気だって思ったらもう勝手に飛んできちまってた」

 半年ぶりの再会をこともなげにやり過ごして見せようとしたターレスの思惑は見事に外された。
 広い胸に頬を押し付け、マント越しにターレスの背中に手を回している悟空の心底嬉しそうな笑顔を見せられると、二人の出会いが最悪の敵対関係だったことすら忘れそうになる。
 自分と同じ左右に跳ねた悟空の黒髪を片手で撫で、もう一方の手で抱き返す。
 尻尾が残っていたら、きっと嬉しそうに振っているのだろうと思うと、皮肉を言う気にもなれず、ターレスは悟空を抱く手に力を込めた。

「キスさせろ、カカロット」

 静かにそう言うと返事を待たずに顔を近づけ、柔らかな唇にキスを落とす。
 微かに頬を染めたものの、ターレスのキスを拒否することなく受けとめた悟空は、唇が離れると、照れ臭そうに笑った。

「――おまえがこの星を離れられない以上、オレもここに帰るしかないようだな」
「うん」
「今日はオレのものでいろよ、カカロット」
「分かってる」

 短く答えた悟空の黒い瞳が一瞬揺れて見えた。
 だが、ターレスと悟空はどちらも胸を刺すごく小さな痛みは口にせず、温もりを確かめ合うように、もう一度どちらからともなく唇を重ねた。

23:43|comment(0)

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