あーーっ

2012.12.09.Sunday



「ターレス!?」

とっくに閉店してシャッターも下ろされた本屋の前に立っている男を見て、カカロットは思わず大きな声を上げた。

チラチラと小雪の舞い始めた寒空の下、いったい何時間待っていたのだろう。いや、三日前の約束通りだとすれば、軽く4時間以上と言うことになる。一気に酔いが覚めた頭でそこまで考えた後、たまらず駆け出し、静かに笑っているターレスに抱きつく。カカロットを受け止める時、珍しく僅かにふらついたが、ターレスは手袋をはめた手でカカロットの金髪を優しく撫でた。

「なんで、なんで……いるんだよっ、ターレスっ」
「そりゃ、待ち合わせしてたからな」
「だって、一昨日、オレあんな酷いこと……言ったのにっ」
「別に大したことじゃない。おまえが怒るのも無理はないことだったからな。おまえが来なくても、自業自得。待てるだけ待つつもりだった。それに……」
「え?」
「昔、言っただろ。約束の時間を過ぎても待てるのはおまえだけだ。ま、おまえは一度も遅れたことがないから、ようやく証明できたな」

そう言って少しシニカルに笑ったターレスを見上げ、カカロットはごめん、と呟いた。

「一人で飲んでたのか?」
「うん」
「そうか……」
「ターレス?」
「いや、安心したんだ。おまえが、他の奴といたわけじゃないと、思ったら……な」
「ターレス?なんか顔色……」
「ん?心配ない。少し冷えただけだ」
「嘘。……熱があるっ」

ターレスの額に手を伸ばし、熱さに驚いたカカロットの青い目が罪悪感に揺れる。ターレスは平気だと繰り返し、カカロットを抱きしめた。

「風邪を……うつしたくはないが、今夜はうちに来てくれないか?」
「あたりまえだろっ」
「……ついでに居ついてくれてもいいぞ」
「何呑気なこと……とにかく、早く帰ろう。一晩中、離れないから」
「熱が上がりそうだな」

クスッと笑ったターレスの手を引き、カカロットは先にたって歩き出した。

23:35|comment(0)

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