集中できないなー><

2013.07.07.Sunday


 胸元にヒヤリとしたものをあてられ、目が覚めた。
 霞む目に映ったのは、ターレスの顔。
 クールな表情が、カカロットが起きことに気づいて少し緩む。

「オレ……」
「グラウンドでいきなりぶっ倒れたんだ。熱中症かと思ったが、そこまで体温は高くなさそうだったが……」
「あ、ちょっと……寝不足、で」

 硬いベッドから起き上がろうとしてようやくここが保健室だと気づいた。
 体育の授業で二組に分かれてサッカーをしていたのだが、始終頭がぼおっとしていてろくに走れなかった。

「先生、オレ、もう大丈夫です」
「いいから休んでいろ。授業は代理の先生がしてくれてるからな」

 ターレスはフッと笑ってカカロットの胸にあてていた冷たいタオルをとり、額に手をあてた。

「放課後まで寝てろ。午後の授業に出ても集中できないだろう」
「でも……」
「保険医は今日研修で不在だ。下校の時間になったら様子を見に来るから、それまで……、ああ、飯はまだだな」
「平気です、食べなくても」
「そういう不摂生をするからだろう」

 ベッドの脇の丸椅子に座っていたターレスが立ち上がってカカロットの額を小突く。
 ただ、それだけのことでも胸がズキリと痛み、中指の関節が触れたその個所から顔が熱を持つようだ。
 溜息を噛み殺し、大人しくもう一度ベッドに横になると、ターレスがタオルケットをかけ直してくれた。

「購買で何か買ってきてやるから、寝てろよ」
「はい……」
「なんだ?」
 歯切れの悪い返答が気になったのか、ターレスが眉をひそめる。カカロットは何でもないと答えかけたが、自分でもよく分からないまま、ターレスのジャージの裾を掴み、
「ひ、一人で、食事するの嫌いなんです!」と叫ぶように言った。
 さすがに意表をつかれた様子で目を丸くしているターレスを見て、我に返る。カカロットは慌てて手を離し、羞恥で真っ赤になっていく顔を伏せて何でもありません、と言った。
「……クラスの女子でも連れてきてくれって意味か?」
「オレ、そんなこと!!」
「冗談だ」
 恥ずかしさの反動で青い目を怒らせたカカロットの感情を逸らすように肩をすくめ、ターレスは少し乱れている金髪に手を伸ばすと、カカロットの額から前髪をかきあげ、顔を近づけた。
「せ、先生?」
「……言い寄られても手も出せない。教師なんてつまらないものだな」
 鼻先まで顔を近づけて、薄く笑ったターレスの言葉にカカロットの顔がこれ以上ないほど赤くなる。何もできずにかたまっていると、ターレスの唇が額に触れ、何事もなかったように離れた。

「とにかく何か買ってくるから寝ていろ」
「先生も、ここで、食べてくれるんですか?」
 どぎまぎしながら尋ねると、ターレスは一寸カカロットをジッと見据え、
「……せっかくの一緒の食事が焼きそばパンじゃさえないが、贅沢は言うなよ」と答えた。
「オレ、何でもいい。……スイマセン、変なこと言って。でも、オレ、ふざけてるわけじゃないんです」
「だから問題なんだろう」
「あ、はい……」
「怒った訳じゃないからそんな顔するな。その綺麗な顔で落ち込まれると、必要以上に罪悪感に駆られる」
「顔、なんて。綺麗だろうとなんだろうと、オレは男だから……」
「そうだな」
「気持ち悪いですか? 男からこんな……」
「別に。初めてでもないからな」
「え? 他にもいるんですか? 誰!?」
「落着け」
 苦笑いしたターレスがもう一度椅子に座ると、カカロットは今度は隠さず溜め息を吐いた。
「オレ、独占欲が強いんです。好きになったら、ずっとそばにいたいし、いて欲しい。でも、今まで好きになった奴もみんな最初だけで……」
「まぁ、その気がなくても思わずっていうのは、あるかもしれないな。おまえに迫られれば……」
 顎に手をあて、少し無遠慮にカカロットを見ていたターレスは、腕時計に目を落とし、昼休みだ、と呟いた。
「カカロット……」
「はい」
「独占欲なら負けてない。……だが、公私混同はポリシーにあわないんだ」
「要するにフラれてるんですね」
「卒業しても、まだその気があれば、オレの方から捕まえに行ってやるさ」
「期待するよ、そんなこと言われたら……先生しか見えなくなる」
「もちろんそれが狙いだ。ズルい大人だからな、オレは」
 ターレスはニヤリと笑ってそう言うと、ベッドに片手をついて身を乗り出し、カカロットの頬にキスをした。
「飯を買ってきてやる。……起きたならカーテン開けていいな。オレの方が先におかしな気になりそうだから」
「いいのに」
「もっと自分を大事にしろ」
 ターレスはそう言って立ち上がると、真っ直ぐ自分を見上げているカカロットの青い瞳を見つめ返し、笑みを返した。




ターレス先生だって我慢も出来るのです!w
ストイックなタレも好き。でも、卒業までカカさんが心変わりしなければ(しないけど<●><●>)、初エッティはきっと激しい!!

メリー・タレスマス―――!!
今年もタレにメロメロメロウです(*ノωノ)♪

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