王子と言えば・・・
2013.07.04.Thursday
高い扉がゆっくりと開き、ガランと広い部屋の柔らかな絨毯が敷かれた床に廊下の明かりが白い光を描く。
部屋の奥に行くにしたがって幅広になった光の真ん中には、サイヤ人下級戦士には珍しくない左右に跳ねた髪を持つ男のシルエット。
静かに扉を閉め、ゆっくり男が何か呟くと、部屋の照明が一斉についた。
「待たせたか?」
白いマントを翻しながら、真っ直ぐ近づいた先には、華美過ぎない装飾の施された椅子がある。
座っている男は、この星の王子、ベジータだ。
小柄な身体には不釣り合いな背もたれの高い椅子に腰を下ろし、肘掛けに肘をあずけて頬杖をついたベジータは、入ってきた男の問いには何も答えず、立ち上がった。
玉座を降りてきたベジータが目の前に立つのを待って、白いマントの男はスッと膝をつく。差し出された形のいい手を見た瞬間、男の顔にいくらか驚きが見えた。だが、男は何も言わず軽く手を握ると、甲に口づけたまま視線を上げ、黒い瞳を楽しげに光らせた。
「2ヶ月ぶりだな。光栄なことだ」
「無駄口は止めろ」
「ここでか?」
手を握ったまま立ち上がった男は、ベジータより軽く頭一つ分は背が高い。特徴のある褐色の肌が白いマントによく映えていた。
王子であるベジータを前にしても、おおよそ敬意らしきものを覗かせることもなく、問いかけるとほぼ同時に握った手に力を込めてベジータを抱き寄せた。
「ここでなわけがないだろう!離せ、ターレスっ」
慌てて怒鳴りつけたベジータの言葉を無視して、ベジータの手に見慣れた白い手袋がはめられていないことを確かめるように握った手を何度も撫でる。
「誰もいない部屋でお誘いの合図を送ったあんたが悪いんだ、王子」
耳に吐息を吹きかけながら囁き、有無を言わせずベジータを抱き寄せ、跳ねのけられる前に力を奪うべく白い首筋に口づける。同時にアンダースーツの中に入り込んできたのは、ターレスの尻尾だ。
「バカ野、ろ……誰か、来たらっ、あ、っ……っ」
「見られる前にオレを消せばいい。骨も残らないくらいにな」
「――くそっ、足元、を、見やがって……っ」
「出来ないか?そんなことを言われたら益々あんたの虜になりそうだな」
ターレスのからかうような口調の中に隠れた思いの深さが、ベジータにどこまで伝わっているかは定かではない。
2年前、遠征先で高まり過ぎた熱をもてあましていた時、同じタイミングで発情していた相手に出会った。ただ一つ違っていたのは、相手がこの星の王子で、セックスはおろか、一下級戦士なら死ぬまで直接口をきく機会もなかったからもしれないということだ。
荒れ果てた星の、野営の集団から離れた岩陰で貪るように抱き合ったのは昨日のことのよう。だが、それきりで終わるものとばかり思っていた関係は、お互いに口にはしなかったが、初めての相手とは思えないほど身体の相性が良かったことをきっかけに、惑星ベジータに戻ってからも続くことになった。
「ベジータ、……この頃、あんたからの誘い、間隔が短くなったな」
「気に、いらない……のかっ」
巧みな愛撫で乱れ始めた息を悟られまいと、時折唇を噛んで問い質すベジータの下半身を撫でながら、空いた手で素手のまま曝け出されている手をもう一度握り、二人の視線の間で口づける。ターレスの芝居がかった仕草はいつものことだが、それでも、何もつけていない手の意味を知るベジータの羞恥を煽るには十分だった。
「とんでもない。――光栄だ。3日おきでも、毎日でも。おまえの誘いはな」
「――っ、ぁ……」
ジワジワと高められた熱のせいですっかり脱力したベジータを抱きかかえるようにして、ターレスは自ら玉座に腰を下ろし、不敵な笑みを浮かべた。
まぁ、相変わらず裏はないのでね……
中途半端ですよ(;´▽`A``
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