疲れた―><
2013.07.01.Monday
「…………」
湯上りの火照った体にショートパンツを身につけ、鏡に映った自分の姿を見つめる。
浅黒い肌のせいで火照りはあまり顔に表れていなかった。
まだ華奢な線も残した身体を見ていると、十数分前の決意が揺らぐ。
ターレスは迷いを振り払うように濡れた髪を強くタオルで擦り、まだ半乾きなのを無視して歩き出した。
何て声をかければいいんだ……
リビングの明かりが漏れるドアを見つめ、立ち止まる。
生唾を飲んだ音が静かな廊下に異様に大きく響いた気がして、カッと身体が熱くなった。
バカ、今さら。
自身を叱咤し、唇を噛んでドアレバーに手を伸ばす。
まるで忍び込んでいるかのように無意識に音を立てずにドアを開けると、リビングに一歩足を進めた。
淡いベージュのソファに座っているトーマの背中をジッと見つめ、小さく息を吐く。
ターレスを待っている間に飲んでいたらしい酒の入ったグラスはほとんど空になっていた。
大人はいいよな……
ふと浮かんだ考えを頭を振って打ち消す。
――もう、オレだって……釣り合う、んだ。
「……マ」
名前を呼んだつもりが、小さすぎて自分にさえほとんど聞こえなかった。
ターレスは自分に苛立ちながらズンズンとソファに向かって歩き、漸くこちらを向いたトーマの隣に勢いよく腰を下ろした。
「お待た、――っ!?」
否応なく赤くなる顔を意識しつつ、殊更大きな声で言いかけた直後、視界が大きく揺れ、トーマに押し倒されていた。
目を丸くし、問い返そうとする間もなく、日頃穏やかなトーマと同じ男かと疑いたくなるほど飢えた目がターレスを捕え、深く唇を塞がれた。
「――っ、ん、ぅ……ッ、トォ、マ……っ、ぅ、ふ、ぅ……っ」
重ねた唇の角度を変える時、僅かに出来る隙間から必死で空気を取り込み、トーマの名前を呼ぼうとしたが、直ぐに熱いキスがターレスを捕える。
キスだけならもう数えきれないくらいしてきた。
だが、今、ターレスの舌を絡め取り、噛むように口づけるトーマの激しいキスは、これまで一度も経験したことのない疼くような熱でターレスを痺れさせる。
両手を頭上で一つにまとめられ、身体の自由がきかないこともかえってターレスを興奮させ、まだどこにも触れられていないうちから黒い瞳に涙が滲んだ。
「ハァッ、ァ……、トー、マ……」
「ターレス、――後で、いくらでも文句は聞いてやる。だが、今はもう一分も待てない気分だ。おまえが欲しい」
「――っ、オ、レ……」
「心の準備、できてないよな?」
「大丈夫だ!」
「いや、怖くて当たり前なんだ……。すまん。――本当なら、止めるのが大人の責任でも、おまえが欲しくて……」
「ひぁっ!?」
熱っぽく話していたトーマの手が不意に鎖骨から胸に滑り、くすぐったさと未知の感触に高い声が出てしまう。
身体を跳ね上げたターレスの手首を解放し、トーマはヒクヒクと血管が蠢くターレスの褐色の首筋に軽く歯を立てた。
「止め、なくていいっ。好きだ、トーマ、オレ、怖いよ、でも、オレも、欲しい……っ。欲しいと、思ってもらえて、今、ほんとは泣きたいくらい、嬉しいんだ」
「バカ。益々止まらなくなるだろう」
苦笑いを浮かべてはいても、トーマの目には明らかに安堵の色が浮かんでいた。
まだ、自分に釣り合うだけの行為を返せない若い身体を傷つけたくないという理性と、それを抑え込んであまりある圧倒的な情愛が、ターレスを求めるあまり引き返せない肉欲になるのに時間はかからなかった。
微かに汗の匂いが漂う皮膚に所有の印を残しながら、トーマは繰り返し繰り返しターレスの名前を囁き続けた。
大人トマさんと若タレさん(*/∀\*)
たぶん一番好きなトマタレのパターン。
でも、同い年くらいのアダルティな二人もよい!!
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