美味しかった♪

2012.12.07.Friday




何かに起こされたような気がして、起きあがってカーテンを開けてみると、窓の向こうの世界は白く変わっていた。

もう雪にはしゃぐ歳でもないのだろうが、数年に一回あるかないかのことだと、やはり自然に心が浮き立ってしまう。ごく薄く積もった、まだ誰にも踏み荒らされていない庭を目を輝かせて見ていた悟空は、やがて我慢できなくなって隣で眠っている男の肩を揺すった。

「……朝、か?」
「まだ。もうすぐ日が出っかな」
「おい、勘弁し……」

悟空の答えで開きかけた目を閉じ、寝返りを打ってこちらに背を向けかけたターレスの肩を掴んで、強引に引き戻す。朝に弱いパートナーはため息混じりに重い瞼を開け、額に落ちた前髪を片手でかきあげた。

「外見てみろよ、ターレス」
「外?」
「うん!」
「……起こしてくれ」
「もうっ」

片手を悟空の肩にかけ、だるそうに答えたターレスを、体格さゆえにかなり苦労して抱き起こす。悟空の背中におぶさるように顎を肩に乗せたターレスは、鼻先をくすぐる黒髪を指で弄びつつ銀世界に目を向けた。

「雪か……」
「うん。綺麗だろ?」
「そうだな……」
「ターレス?」

どことなく上の空で答えたターレスを顔だけで振り返ると、体の前にだらりと投げ出されていた褐色の太い腕が悟空をきつく抱きしめた。

「もう、5年も前……だ」
「……あ、そっか、そう……だな」
「あの時、あいつと、約束をしたんだ。おまえには言ってなかったが」
「約束?」

訝る悟空を見るターレスの目は、もの心ついてから一度も見たことのない不安と自嘲に揺れていた。


中途半端乙。


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