眠れないから…
2012.12.03.Monday
ノックの音に顔を上げると、返事を待たずに書斎のドアが開いた。
「悟空か、どうした?」
「……わりぃ、仕事中に」
「いや、本を読んでただけだ」
いつになく深刻な顔に気づいて、ターレスはノートパソコンを閉じた。
「嘘。だってパソコン……」
「電子書籍ってやつだ。それより何だ?」
「う、ん……」
悟空が言い終わらないうちに答え、顎で促して傍のソファに腰かけさせる。
仕事中はターレスがひっきりなしにコーヒーを飲むせいで、この部屋にも小さな冷蔵庫とコーヒーメーカーが置かれている。タイミングよく落ちきったコーヒーがポコポコと音を立てていた。
冷蔵庫の上の小さな籠に伏せてあったデミタスカップを二つ取り、淹れたてのコーヒーを注ぐ。悟空の分にはスティックシュガーとミルクを添えてソファの前のコーヒーテーブルに置くと、ターレスは向かいの椅子に足を組んで座った。
「眠れなくなってもいい話なんだな」
「へ?」
「いつもなら今飲んだら寝られないと言って断るだろう」
「あ、ああ……うん、まぁ、その……どうせ、寝らんなかったから」
「カカロットはどうした?」
「え?あ、うん、一緒に映画見てたけど、途中で寝ちゃったから」
「まぁ、起きていればおまえ一人でここに寄こさないな」
フッと笑ってブラックコーヒーに口をつける。
「なんだ?」
「え?」
「溜め息を吐いたからだ」
「あ、ごめん、その……ターレスってかっこいい、よな」
取り繕えず口をついた悟空の言葉に、ターレスはソファのアームに肘をついて片眉を上げた。
「褒めるのなら、もう少しいい顔で言ってくれ」
「うん、オラ変……だな」
いざ本人を目の前にすると、言いたかったはずの言葉は全て引っ込んでしまう。
単純な仕草の一つ一つがスマートで、惹きつけられずにいられないターレスと、同じく立っているだけでも人目を引く端麗な容姿のカカロットとの生活空間に、自分だけが酷くアンバランスじゃないかと不安になっていたのだ。
「まぁ様子がおかしいのは間違いない」
「ごめん。……寝るな、もう」
「来い」
「え?」
「いいから」
ポンポンとソファの空きスペースを叩いたターレスの有無を言わせぬ口調に仕方なく頷き、隣に腰を下ろす。黒髪に伸びてきた浅黒い手が優しく後頭部の髪を弄ぶ感触に、悟空は一瞬理不尽な不安をぶつけたくなったが、何とか堪えた。
「強情だな?」
「へ?」
「やはりオレだけじゃ無理ということか」
「え、何っ、んっ、……ぅ、っ、ん、うわぁっ!?」
シニカルな笑みを浮かべたターレスの顔が近づき、前触れなく唇を塞がれる。
もっとも、今さらキスを拒むような関係ではない。
驚いている間に口内に滑り込んできた舌に自分の舌を絡め、深い口づけに入り込もうとしていた悟空は、いきなりターレスに強く胸を押されて後ろに倒れ込んだ。
「何、す……っ、タ、ターレス!?」
バランスを崩したまま身体を起こそうとしたが、気づいた時にはターレスに抱え上げられていた。
「暴れるな、落ちるぞ?」
「落ちるって、何だよっ、オラ、自分で歩けるってば!!」
「そんなことは分かっている。……これからカカロットの部屋に行くからな」
「へ?」
「おまえを不安だとしたら、それはオレとカカロットの連帯責任だ。オレは、自分のパートナーが愛されてることに自身を持てないような関わり方はしてきたことがないつもりだったが、三人……というのは初めてだったからな。少しは大目に見ろ」
「オ、オラっ、別に……愛されて、ねぇとか、その……っ」
真っ赤になって答えながらも、悩みを言い当てられた決まりの悪さもあってターレスの目を見ることができない。そうこうしているうちにカカロットの部屋まで来ると、ターレスは悟空にノックしろと言った。
「なんでオラが!!」
「おまえを抱いてて両手がふさがってる」
「下ろせばいいだろ!!」
「どうしたの?」
当然ドアの前で大騒ぎしていれば中のカカロットには筒抜けだ。
サッと開いたドアの向こうから訝しげに顔を覗かせたカカロットの青い目が、ターレスの抱かれた悟空を見てまん丸くなった。
「何?デリバリー?随分サービスいいな、ターレス」
「ふん。こいつが一人で勘違いして身を引きかねなかったっていうのに、呑気だな、随分」
「どういうこと、悟空?オレ達といるの嫌になったの?」
「嫌、なわけ、ねぇ!!た、ただ、……オラは……っ」
「とにかく入って」
「ベッドで聞いた方がいい話だぞ?」
「なんでそうなるんだよ!!」
「おまえの不安を口にすれば、カカロットがとる行動は分かってるからな」
「どうせオレの部屋に三人座れる椅子はないから。悟空、不安にさせてたのなら、理由がなんでも謝るよ」
形のいい眉をひそめ、カカロットはターレスの腕に抱かれた悟空の頬を撫でた。
「ううん。……ターレス、カカ……」
「ん?」
「ふ、二人とも、明日仕事だけど、オラ、今日は……いっぺぇシテ欲しい」
「喜んで」
「悟空に誘われて、断れると思う?」
優しくベッドに落とされた悟空の両脇にターレスとカカロットが横たわり、額と首筋にくすぐったいキスが落ちてくる。悟空は恥ずかしさで真っ赤になっていたが、二つの温もりを離すまいと覆いかぶさっる金髪と黒髪にそっと指を絡ませた。
あかん、あかん。
いくら深夜でもここでこれ以上はダメよっ;;
ってことで、今度こそ寝るっ。萌え吐けてだいぶすっきりした(*/∀\*)
TKTKさんはオアシスです(*´∇`*)
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