うだぐだしてても・・・・

2012.12.02.Sunday

 ドアの開く音にハッと顔を上げ、慌ててリビングを飛び出した。

 廊下に入り込んできた冷たい風は、聞き違いではなくドアが開いた証拠だ。
 走り出たトーマを出迎えるように明かりが点き、玄関には予想通りターレスが立っている。トーマはその場を動こうとしないターレスに近づき、無言で抱き締めた。

「こんな薄着で、風邪ひくぞ」
「……服、破られたから」

 ボソっと返ってきた答えに一瞬顔から血の気が引いたが、問い質すことはせずに抱き締めた腕に力を込める。

「中に入ろう。……大丈夫だ。な?」

冷えた身体を温めるように肩から腕にかけて何度もこすってやり、虚ろな目を見返して唇を近づければ、ターレスは逆らわずにトーマのキスを受けとめた。

「トーマ……」
「何だ?」
「一人に、しないでくれよ」

 遠征の期間も帰還予定日も全て伝えてあった。
 予定より遅くなったわけでもない。責められる言われはないのだが……

「すまんな。もっと早く帰るつもりだったんだ」

 今回の遠征はターレスの方が帰還が一週間ほど早いことが気にはかかっていたが、この頃は落ち着いて見えたから、つい油断したのかもしれない。

 おまえだけだ……

 伝えればただそれだけの言葉を信じさせるのが、これほど難しいとは。

「明日は……オレも着いて行く」
「ああ、おまえの気の済むようにしろ。見られて困るようなとこには行っちゃいないからな。……だけど、明日は遠征報告だからな。来たってつまらないぞ?」
「いいんだ」

 小さく頷いたターレスの肩をポンと叩き、入ろうと促す。
 やはり逆らうことなく家に上がったターレスは、リビングを横切って寝室の入口まできたとき、背中からトーマに抱きついた。

「ごめん。ほんとはトーマが、よかったんだ。でも、……これ以上一人じゃ眠れなくなって……」
「大丈夫だ。……全部オレの印に、変えてやるから」
「うん」

 ホッと息を吐いたターレスを今すぐベッドに押し倒したい衝動を堪え、正面から抱き直す。軽く顔を上げてトーマを見つめる黒い瞳を少し眉を下げて見返し、不安げに垂れた尻尾を根元から優しく撫でてやった。

「欲しいのは、おまえだけだ、ターレス。……だから、少し乱暴にしても、怒ってるわけじゃない。誤解しないでくれ」
「分かってる。優しすぎるから、……不安になるんだ、トーマ。オレの前でも、トーマらしく、しててくれよ」
「バカ。おまえの前以上に自分をさらけ出せるか」

 苦笑いしたトーマの答えにこの夜初めて少し嬉しそうな笑みを浮かべ、ターレスはトーマの手を引いて自らベッドに仰向けに倒れ込んだ。




色々不安定な若タレさん^^

23:57|comment(0)

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