8*



俺がそう言うとマックスが驚いた様に顔を上げる。
目が合い、恥ずかしさで顔が赤くなる。


「…いいの?」

俺が頷くとマックスは体を離し、持ってきたビニール袋をがさごそと漁りだす。


「ちょっと待ってね」

そう言いながらチューブを取り出し指にたっぷりと絡める。
性急に事を進めようとしてるマックスに、俺はどこか気恥ずかしさを感じていた。
俺の腰の下にクッションを潜らせると、俺の恥ずかしい箇所がマックスに露わになってしまう。
まるで見せ付ける様な体勢にされた俺はここで遂に耐え切れなくなって両腕で顔を覆う。
恥ずかしさに顔を隠してしまった俺にマックスが「痛かったら言ってね」と耳にキスをした。
どれだけ俺が恥ずかしがっても、続いていく行為。
マックスの気持ちの強さみたいで恥ずかしいけど、それ以上に嬉しい。


奥の窄まりに冷たいものを感じて身を固くする。

「いくよ?」

声と共に中に入ってきた指は入り口で冷たいと感じたのが嘘みたいに熱かった。


「うわっ、きっつ〜」

「んんっ」

マックスが感想なんて言うから恥ずかしくて身を捩る。
今更になって仰向けで始めてしまった事を俺は後悔していた。
…せめてうつ伏せにしとくんだった。
それなら顔が隠せたのに。


「ねえ、ここにボクのちんぽが入るんだよ」

くにくにと俺の中を押し広げながらマックスはこんな赤裸々な事まで言い出す。

「やあッ!…ンッ、クッ、…い、言わ、ないでぇ」

マックスの言葉で、今している恥ずかしい行為がもっとイヤラシイことをする為の準備なんだと改めて実感させられる。


「そうだ、これボクのちんぽだと思ってよ」

マックスが声と共に指をゆっくりと上下させる。
ずちゅっ、ずちゅっという濁った水音と、中に感じる律動がマックスの言葉を後押しする。


頭の中にマックスに突き上げられている自分が浮かぶ。
頭の中の自分が、今の自分に重なっていく。


中を蠢く指は息苦しさしか与えてくれないのに、マックス自身だと思うと腰が自然と擦りつけるように動いてしまう。


「はぁっ、…はぁっ、んッ」

突然息を荒くして乱れ始めた俺を見て、マックスは意地悪そうに俺を煽る様なことばかり言ってくる。


「ボクのちんぽだと思ったら気持ち良くなっちゃった?」

「ちが…っ!」

顔を腕で隠したまま首を振る。


「もっともっと気持ち良くしてあげるね」

ぐちゅっ、ぐちゅっっと水音がどんどん早くなる。


「ほら、ボクもイヤラシイ仁を見て大きくなってきた」

そう言うと潤滑剤を上から垂らしながら、中の指をゆっくりと二本に増やす。
どうしたらこんなイヤラシイ会話を思いつくんだろう。
恥ずかしいから本当に止めて欲しい。

「んん〜〜」

それなのに差し入れられた指が一気に質量を増した途端、堪らず声が漏れる。
それはどう贔屓目に聞いても「気持ちイイ」としか聞こえない声で、自分でも恥ずかしくなる。
マックスの言葉に十分煽られている自分が確かにいる。
俺の中を一つ一つ探るように動く指に簡単に翻弄されてしまう。


「っは、…はあっ、あっ」

短い呼吸で体の熱を懸命に逃がそうとするけど、マックスの指がそれを許してくれない。
時折触れられる、ある一点に体が弓なりになるのを抑えられない。


「ん、ここかな?」

探していたものを見つけた様にマックスが初めて意図的にそこに触れてきた。
昨日一緒に見たサイトに断面図付きで載ってた「触れられると男が気持ちよくなっちゃう場所」だ。


「ひゃあッ!!」

それまで抑えてきた声が思いがけず出てしまい、慌てて口を押さえる。


「声、我慢しないで」

いくらマックスのお願いでも、俺はこんなハシタナイ声をあげるなんて恥ずかしくてできない。
俺が口を押さえながら首を振ると、マックスは意地悪っぽく笑う。


「じゃ、我慢できない様にしてあげる」

マックスは本当に意地悪だ。
楽しげにそう宣言すると、今まで触れてなかった前にも擦り上げるように触れられる。


「ッん、くぁ…ッ!」

こんなの我慢なんて出来ない。
押さえた指の隙間からハシタナイ喘ぎ声が零れ落ちていく。
俺が我慢して我慢して、でも我慢しきなくてあげた声にマックスの指は楽しげに加速していく。


「あ…っ、あ…っ、アアッ!」

前後をばらばらに弄られると頭が真っ白になって声が抑えられない。
俺は声が出ないように自分の親指を噛み締める。
閉じることのできない口元から涎が首筋へ伝う。

その涎をマックスが舌で舐め取った時、俺はあられもない声を上げ、ついに欲望を吐き出した。
自分が気持ち良くなってるのを全部マックスに見られていたと思うと、恥ずかしくて顔を合わせられない。

荒かった呼吸が落ち着いてきた頃、マックスが顔を隠した腕にキスして言う。


「いっぱい出たね」

その一言で折角落ち着いたというのにまた顔が熱くなる。


「…マックスの馬鹿」

「でもさ」

火照った顔を隠したままでいると、足が左右に割られる感触に慌てて手を退かして声のする方を見る。


「ここからが本番だよ?」

そこにはいつの間にかコンドームを自分自身の昂ぶりに着け、俺の中心に押し当てているマックスがいた。


「やぁああっ」

身構える間も無く入ってきたソレは、
熱くて痛くて、
まるで体の中心に杭を打たれたみたいだった。


閉じているのに目の前が赤く染まる。
体の中から焼かれ、全身が痛みに支配される。
俺は必死に手が届いたものにギュっとしがみ付く。
はっ、はっと浅い呼吸を繰り返しなんとかして痛みを逸らそうとした。


どれぐらいそうしていたか少しづつ痛みに慣れ、掴んでいた手も緩んだ頃、
俺の顔を隠している髪が左右に優しく撫で付けられた。
俺が吃驚して瞳を開けると、いつも俺を守ってくれるヴェールが無いせいか眉根を寄せたマックスがくっきりと見えた。
俺が掴んでいたのはマックスの腕で、慌てて離すと俺の爪あとが赤く残った。
その傷跡が痛そうで申し訳なくて俺がもう一度マックスを見上げると、何かに耐える様な顔をしてたくせにマックスは少し自慢げでそれでいて意地悪そうな顔をした。


「ほら、見て。
今、仁の中に全部入ってるよ」

マックスがお腹を凹ませたせいで視線を下げるだけでクッションで少し持ち上げられた腰が否が応でも目に入る。


――俺の中心とマックスの中心が一分の隙も無くぴったりとくっ付いているのが見える。


今、マックスと一つになってる。
凄まじい痛みもマックスを受け入れたから。
そう思うと、甘い痺れが背筋を走る。


俺が視線を下げたのを確認すると、マックスは見せ付ける様にゆっくりと腰を引く。
俺とマックスの間に隙間ができ、そこはぬらぬらと鈍く光る太いモノが二人を繋いでいる。


「やっ」

あまりの生々しさに俺は堪らなくなって慌てて顔を手で遮った。


「顔、隠さないで」

でも俺が完全に遮るよりも早くマックスが両手を掴んで、それを許さない。


「ボクで感じてる顔、見せて」

顔を隠さないと、繋がってるところも、マックスの顔もはっきり見えすぎてしまって俺には辛い。
こんなの生々しすぎるのに、マックスはもっと現実を付き付けるようにゆっくりと腰を動かし始めた。


マックスが動く度、中が引き攣れる様に痛む。
揺さぶられる度に、どんどんこの行為が生々しさを帯びていく。
それと同時に今まで知らなかった感覚が腰の奥の方から少しずつ沸いてくる。
痛みの先にある微かなソレが怖くて、俺はもう一度マックスの腕にしがみ付く。


「…怖い」

「どうしたの?」

縋る俺にマックスが動きを止めずに訊く。

「いっ、…いた、い…のに…ッ」

揺さぶられると脳の中まで振動が伝わってるみたい。
恥ずかしい事の境界線が曖昧になってくる。
恥ずかしさよりももう無視できない程大きくなったソレが怖くて、俺はマックスに訴えた。


「きもち…イイ、よぉ…ッ!」


思わず漏らしてしまった言葉にマックスは途端に動きを止めてしまう。
えっ、と思った瞬間、あろう事か俺の中から引き抜いてしまう。
え…?何!?俺なんか変だった?


「…マックス?」

俺が尋ねる様に名前を呼ぶと怒ったようにマックスがポツリと呟いた。


「…出ちゃった」

「えっ、嘘」

俺が思わず聞き返すと、マックスに睨まれた。


「仁が急にエロいこと言うからだよっ!」

「そ、そんなこと言ったって…。
マックスだって、いっぱいエッチなこと言ってたじゃないか」

「ボクはいいのっ!」

マックスはそう言うとコンドームを取り外し口を縛る。
あ、本当に出てる。
縛られたコンドームは薄い透明ブルーのゴムの先の部分だけ色が違ってて、少し、いや大分恥ずかしい。


「こんなはずじゃ無かったのに。
もうっ、早くシャワー浴びに行こ」

マックスは事後の素に戻ったからこそ感じる気恥ずかしさってないのかな?
何気ない感じでマックスはさっと俺の方へ手を差し出した。

「えっ?」

条件反射で手を握ってしまってから慌てて聞き返す。

「だって昨日約束したでしょ。
一緒にお風呂に入るって」

マックスはそう言って俺の手を引っ張った。
体を起こすと、お腹に溜まっていた俺がさっき出した白濁した液が垂れそうになる。

「うわっ」

慌てて手で押さえティッシュを取る。
改めてみると俺は裸で。
マックスを見ると上はTシャツだけだけどちゃんとジャージを着たままだった。
俺だけが全裸だとなんだか俺だけが欲に溺れたみたいで、すごく恥ずかしい。


「…先行ってて」

俺が顔を赤くしてそう言うと、マックスは珍しく素直に先にお風呂場へ向かってくれた。
残された俺は脱がされた服を抱え、溜息をつく。


すごくすごく恥かしかったし痛かった。
けど、けど…。
……気持ち良かったかも。

そう思ってしまった俺は、誰も見ていないのに恥かしさで抱えていた服に顔を埋めてしまった。


いっぱいいっぱい好きって言ってくれた。
いっぱいいっぱい触れてくれた。

ヤバい。
エッチってヤバい。
…病み付きになりそう。



でも、まさかシャワーと夕食の後「リベンジ」って言い出したマックスが、ベッドで二回もするとは思ってもみなかった。



      END

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