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ああ、ついに今日分かるんだ。
今日ついに審判が下されるのかと思うと、昨日はよく眠れなかった。


友達としか思われてなかったら部活どころか学校さえも辞めたいとか、
もし転校してもサッカーは続けたいとか色々考えてしまい、悲観してつい近隣の中学校を調べてしまった。
尾刈戸で非日常的な雰囲気の中でマックスのことを忘れる努力をするか。
傘美野でひっそりと穏やかな生活で失恋の傷を癒すか。
マックスの居ない生活ではどちらがいいかなんて些細な問題なのかもしれない。
どちらがいいかなんて甲乙付けてもしょうがないじゃないか。
それならいっそ御影専農へ転校して洗脳でもしてマックスの事を忘れてしまおうか。


授業中そんなことを考えながらついウトウトしてしまう。
ほとんどノートも取らないで授業は終わってしまった。
はあ、こんな残念なノートなんてとてもマックスに見せられない。
習慣でそんなふうに思ってしまってから気づく。
――もうノートを見せる機会もなくなるかもしれないってことに。



部活が終わってマックスと一緒に家へ帰る。
いつもよりも機嫌の良さそうなマックス。
一緒に過ごす最後になるかもしれないマックスが笑顔で良かったと、俺はいつも別れる交差点をマックスと並んで通り過ぎた。

家に着いて食事にするか、先にお風呂にするか尋ねると、いつものようにマックスが俺をからかってくる。
「それとも私?」
…なんて、俺が簡単に聞けるならこんな風に悩んだりしない。
マックスにとっては全部軽い冗談かもしれない。
でも俺にとっては違うからいつだって俺は軽くかわせずに赤くなってしまう。
本気で「そうだ」と答えたら引かれないかな?とか考えるとどう答えればいいか分からなくなって最後はいつも黙ってしまうか逃げ出してしまう。


今日もまた俺はキッチンに逃げ出した。
一人になって少しでも心臓を落ち着かせようと俺は胸を押さえた。
こんな些細な事でこんなに動揺しててどうする!!
覚悟を決めたはずなのに、想像上のマックスと現実のマックスとの破壊力の違いに俺は自分に叱咤激励する。
それなのにすぐマックスが俺を追って来て、落ち着きだしていた心臓がまた大きく跳ねる。
俺はまだ赤い顔と落ち着かない心臓を隠す為マックスの方を向かずに言う。


「温めるだけだからマックスは向こうで待ってて」

すると背後から近づいてきたマックスが俺の上着を掴んだ。
え…、何…?
ドクンと大きくまた鼓動が跳ねる。


「ねえ、さっきはごめんね。
新婚さんみたいで嬉しくなっちゃってさ。
こういうの今まで無かったもんね」


その言葉に思わず振り向く。
『嬉しい』?『今まで無かった』?
それって、それってもしかして恋人っぽいやり取りが嬉しいってこと…?


「…マックス」

「ねえねえ!
キスして、いい?」

俺が思わず名前を呼ぶと、屈託なく笑って聞いてくる。
う、嘘!
今、「キス」って言った?
キスって友達にはしないよね?
恋人…だからするんだよね?


急な展開に頭がついていかない。
マックスが残念そうにため息をついたのを見て、やっと返事もしていなかったことに気づく。


「…いいよ」

俺がそう言うと肩にマックスの手が置かれる。
う、うわ…っ!本当に今からするんだ。
マックスと……キス。


マックスが伏せ目勝ちにしてゆっくりと顔を近づけてくる。

ど、どうしよう。
目、閉じた方がいいのかな?
どうせ髪に隠れて見えないのに、最大級の動揺のせいかそんないらない心配をしてしまう。
どんどん近づいてくる顔を見てられなくて、結局ぎゅっと目を瞑る。


「〜〜ッ、ちょっとしゃがんで!」

焦れた様な声にはっとして膝を着く。
俺のほうが身長高いんだから、そのまま立っていたら届かないのは分かるはずなのに。
極度の緊張で頭が上手く働いていない。


膝を着いて見上げると、蛍光灯で逆光のマックスはなんだかいつもと雰囲気が違ってみえる。
頭が麻痺したみたいに痺れて俺は思わず吐息をもらす。


すると今度は身構える暇もなく、いきなりキスされる。
重ねられた唇の感触に、今キスしていることに漸く気づく。
じわじわと俺の中に喜びと実感が染み渡る。
喜びと実感が全身を支配したころ、マックスが唇を離す。
離れていく唇が淋しくて俺はまたため息を漏らす。
はあっ、と息を吐き出した瞬間またマックスが唇を重ねてくる。
今度は舌まで入ってきて、吃驚してマックスの服を掴む。


ど、どうしよう。
俺も触れていいのかな…?
触れてもマックス嫌じゃないかな…?


俺は恐る恐る自分の舌でマックスのソレに触れる。
俺が触れると絡めとる様にマックスが触れてくれたから、俺は嬉しくってマックスの背中に手を回す。
マックスにしがみ付く様にして、俺が舌を絡ませるとマックスもそれに応えてくれるから
俺は嬉しくって嬉しくって時が経つのも忘れて夢中で舌を絡みつかせた。



 

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