第一章1



どうしてこんなにも囚われてしまったんだろう。
最初のわくわくがどんどんただの日常になってしまうのが嫌で、次々に新しいことを始めて、それが楽しかったのに。
気がつけばこんなにも毎日毎日同じことをして、同じことを思って生きている。
いつの間にか僕は変わってしまった。
サッカーとあいつに出会ってから…。




あいつ――影野仁。
第一印象最悪。
不気味。
たぶんこれ、百人いれば百人がそう思うはず。
だって薄いグレーの長い髪で顔のほとんどを隠してるんだよ?
その上、人に気づかれないという特技(というか性質?)の持ち主。
どちらかというと進んでオトモダチにはなりたくないタイプでしょ?
でもほぼ同時にサッカー部に入部して、そのせいかパス練とか基礎練とかずっと二人で組まされてみるとそんな嫌な奴でもないってすぐ分かった。
自分が空気なわりに空気読めるし、シュミも合うし、世慣れてなくて反応が天然なところも面白い。
なんだかんだで部活だけじゃなく普段一緒にいても苦になるどころか楽しい奴だったんだ。


そんな一日ずっと一緒の友達の顔を知らないって変だよね?
ボクも当然仁の瞳が見たくてたまらなくなってた。


仁の瞳は初めて会ったときから気になってた。
だって部活中とか結構激しい運動してるのに、まるでバリアーでもあるみたいにぜっんぜん見えない。
見えたこともない。
もし仁がある日突然イメチェンして坊主頭にでもなったら、ボクは絶対気づかなくてスルーしちゃう自信がある。
それって、友達としてどうなの?


でも、いつか見たいと思っていても仁と一緒にいるときはついつい忘れてしまう。
だって一緒にいるときはそんなのどうだっていいぐらい楽しいから。


だからあれは、ボクにとってはいつかしたい友達として当たり前のことだった。
仁にとってはそうじゃなくても…。




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