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その夜、いつものようにあの夢を見た。
…でも、いつもと違って黒い誰かはボクの顔をしていた。
ボクはもう随分前から仁を傷つけた、この世で一番最低な奴と同じことをしたいと思っているのを気づかない振りをしていただけだった。
…そんな自分が許せなかった。
仁も夢も見れなくなったボクは、次の日から別人のようにサッカーに打ち込んだ。
サッカーボールフロンティアが今のボクには有難かった。
他に熱中できるものを見つけていて本当に良かった。
元々盛り上がっている部内の雰囲気に乗っかるだけで、朝から晩までサッカーって毎日のできあがり。
あとは帰って泥のように眠れば夢だった見ない。
時折仁が急に態度の変わったボクに何か言いたそうにしてるけど、二人で話すのが怖くて見ない振りをした。
考える時間もないボクは、これが恋なのか欲なのかいつまでたっても区別が付かない。
ただ、仁と二人になるのが怖かった。
欲に流され、仁を傷つけるのが怖かった。
あの日、薄暗い部屋で自分を守るように泣いた仁が頭から離れない。
仁の涙を止めたい気持ちは今でも変わらない。
……だから例え恋だとしてもボクはこの気持ちに蓋をする。
でもボクはこういう気持ちが初めてだから、どうやって蓋をしていいか分からない。
仁が近くにいると、どうしたってドキドキしちゃうし、平気な顔して話すなんてできそうもない。
そうすると自然と仁を避けるようになった。
今までボクが仁を誘うばっかりだったから、ボクが避けるようになったら部活以外で会わなくなるのは簡単だった。
部活で二人きりになることなんてそうそう無いし、仁以外の夢中になれる数少ないサッカー部を止めるつもりは無かった。
…それに完全に仁と疎遠になってしまう事が怖かった。
仁を避けなきゃいけないって気持ちと、仁と繋がっていたいって気持ちを抱えてボクはサッカーに打ち込んだ。
ずっとこのままサッカーに打ち込んでいれば、いつかこの気持ちに蓋ができて鍵がかかると思っていた。
いつかまた仁と自然に笑いあえる日が来ると思っていた。
――あの人が現れるまでは
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