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「仁、仁」

仁の教室のベランダからボクは授業中の仁に向かって手を振る。
一番最初に気づいてくれたのは、ベランダから近い窓側の席の女の子。
隣の席の仁に無言で窓の外のボクのことを教えてくれてる。

やっとボクのほうを見てくれた仁に手招きをする。
仁の口が呆れたように開く。
そして案の定、仁は首を振る。

やっぱり簡単には無理か。

ボクは教室の後ろの一番大きい窓からこっそり忍び込もうとベランダを移動する。
窓をゆっくりと音を立てないように開けると、仁が慌てて腰を屈めながら小走りでくる。

へへ、やったね。


「・・・何?」

う、ちょっと怒ってる。

ベランダで教室から見えないように身を屈めて座ると、仁はいつもより少しトゲのある聞き方をした。
無理矢理授業をサボらせた訳だし、授業サボったことなんて無さそうだしね。

断られるかもと思いながらもボクは持っていたコンビニの袋を前に出す。


「お腹減ったから、屋上で一緒にご飯食べよう」

ね?と首を傾げながら仁を伺うと、仁は長い長いため息をついた。


「……わかった」




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