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「だ、だってここはモーテルでしょう!?」

神童君が真っ赤な顔で弁解するみたいに言い募る。
絶えず動いてる指先が可愛い。あわあわって効果音付けたい気分。

とはいうものの、俺は神童君の言葉に眉を寄せる。


「そりゃ確かにここはモーテルタイプのラブホだけど、それが?」

今日は珍しく車でデートだし、こういう土地勘のない場所ではどこのラブホが有人フロントか無人フロントかなんて判断できないから俺達みたいな同性カップルはモーテルタイプのラブホの方が無難でしょ?
俺が怪訝そうに聞きなおすと、神童君は泣きそうな顔で弁解の言葉をどんどん小さくさせていった。


「俺、アメリカでモーテルは何回も利用してたんで慣れてて……。
あのっ、別にら、……らぶほ、に慣れてるって事では無くッ!
そ、それから俺は別に貴方を誘ったとかそういうつもりも無くてッ!」

モジモジしてる神童君、かわええ〜。
神童君の言葉で俺はすっかり勝利を確信していた。
なんか恥ずかしさの余り、神童君てば自分が誤解させたせいで俺が襲った(正確にはキス未遂)って脳内で記憶を上書きしてない?
あ〜ん、やっぱり神童君てば真面目ぇ〜ん。
ここは大人として、素直に神童君の話の流れに乗ってあげるのが優しさってもんでしょ。
別にその方が負い目に付け込んでエッチな展開に持ち込み易い!とか思ってはいませんよ?


「うん、うん。
分かってる、分かってるから!神童君はそんな事するような子じゃないもんね。
分かってるから落ち着いて!」

取り合えず神童君の言う事に全面同意して、すかさずさりげな〜くターッチ!
混乱してる神童君の肩を抱いて(実際には結構な割合で撫で回しましたが、ナニカ?)ベッドへと誘導した。


「変に誤解した俺も悪かったんだし、もう忘れて本来の目的に戻ろ。
その前に落ち着く為に何か飲もっか?」

「はい…」

神童君てばしょぼーんって肩落としちゃって。
ふっふっふー、この隙に俺は秘密兵器使っちゃおっかなぁー。
今日の俺は秘密道具を沢山持ってきてるからねー。なんてったって車は伊達じゃありませんから。
俺はラブホ備え付けの冷蔵庫からウーロン茶の缶を取り出し、勝手に開けちゃう。
そしてその缶を持ったまま、今日持参した紙袋の所へ。
神童君に背中を向けたまま、探すはお目当ての化粧ポーチ!
テレテッテッテッテー!ラブエキスぅ〜!!(某青い猫型ロボットの声でお読み下さい)
まだ探してるふりをしたまま、俺は神童君から見えないようにこっそりと化粧ポーチの中からネットで購入したラブエキス(ま、媚薬ってヤツですよ)を取り出し、こっそりとウーロン茶の中に数滴投入した。
実を言うとこれ使うの初めてなんだけど、まあ効くとは思う。
男用の媚薬ってぶっちゃけ精力剤とかED治療の成分とか入ってるって事でしょ?
女の子用の媚薬より効きそうな気がしない?医学的に証明されてるっぽいっつーかさ。
くぅ〜、エロエロな神童君、楽しみだなぁ!


「グラスあった方がいい?」

俺がうきうきと振り返ると、まだ申し訳なさそうな顔してる神童君が顔を上げ、微かに顎を引いた。
やっぱ育ちがいいと直飲みは嫌ですよねー、グラス、グラスっと。
もう缶の中に混入済みだから、神童君の目の前で堂々とグラスに注いでく。
下手に動揺なんてしませんよ、奥さん。
んで、缶から最初に注いだ方は俺の手元に残し、後から注いだ方を神童君へと渡す。
さっき缶を軽く振っといたけど下に沈殿してるかもしれないから、ま、念のためってやつよ。


「落ち着いた?」

「……はい」

俺は神童君がグラスに口を付けたのを確認して、隣に座った。
あ、今は警戒されないように距離はちゃんと取りましたよ。そこんとこは抜かりなし。


「じゃ、仕切りなおしね!
神童君って、上品な白色が似合うねー。
そのままでも充分似合うし、女の子に見えるけど…。
どう?化粧も少ししてみよっか」

俺はさっきの化粧ポーチを神童君と俺の間に置いた。
中には基本的な化粧品と、それからさっきのラブエキスが入ったままになってる。
やっべ、このいつバレるかっていうドキドキのスリルが癖になりそうな程興奮すんなぁ。
俺が己の新たな変態の扉を開けそうになっていると、神童君は少し迷ったあとにコクリと頷いた。


「あの…、して、みたいです…」



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