4



「ね、もし良かったら服も見てこっか?」

「え、服ですか?」

「うん、女の子の服」


だだっ広い売り場面積がウリっていう郊外のショッピングモールのフードコートで、紙パックのドリンク片手にたこ焼きを頬張る神童君を俺は片手で頬杖ついて覗き込んだ。
嬉しそうにたこ焼き食べてた神童君は、俺にニコニコと覗き込まれて、口に運ぶ途中だったたこ焼きを戸惑ったように容器に戻した。


今、俺たちは話題のチーズタルト食べて、雑貨屋さんで可愛いストラップ買って(
まあ買ったのは俺だけど神童君へのプレゼントって事で)、ついでにインテリアショップ覗いて新婚気分味わって、んでちょっと遅いお昼ごはん食べてるとこ。
もうさ!神童君の今日これまでがメチャクチャ可愛いーの!
チーズタルトを食べた時の本人は隠そうとしてるんだろうけど隠しきれてない幸せそうな顔とか!
真剣な表情でストラップ選んで、「やっぱりこれにします」って最終的にめっちゃラブリーなもこもこ熊さんのぬいぐるみストラップに決めちゃうとことか!
レースがこれでもかと付いたクッション抱えて、「こういうの、いいですよね」ってはにかんじゃうとか!
もうさ、今日ずーっとお花が舞ってたもん。神童君の背中に!
王道ストレートな乙女チックものが好きとか、めっちゃ可愛いでしょ!?
あ!ちなみにお昼がたこ焼きなのは俺がケチなんじゃなくて神童君のリクエストだからね。
何が食べたい?って聞いたら嬉しそうに「たこ焼き」って言うんだもん、しょーがないじゃん。
俺だって流石にデートで歯に青海苔つきそうなたこ焼きってどうなの?って思ったよ。
これからエッチする気満々だし。
そりゃー、チューの一つや二つ当然するつもりだし。
それどころかべろチューかまして、歯列も上顎もレロレロして最終的には舌フェラまでするつもりだし。
でも悲しいかな神童君はそもそもデートって思ってない訳だしねー。
それにたこ焼きって食べたことないから食べてみたいんだってさ。
というか、神童君に「俺、実は前からたこ焼きが食べてみたくて…」なんて恥らわれてみ?
絶対「はにゃ〜ん」ってメロメロになるから!!
んで「よーし、おにーさんが神童君にたこ焼きぐらい何個でも奢っちゃうぞ!」って絶対なるから!!


「俺が持ってきたの、妹の服だから神童君の好みじゃないかもしれないし。
どうせだったら神童君も好みの服着たいでしょ?」

まあそのおかげでランチ代にって思ってた予算が大分浮いて、こんな事も提案できるって訳。
とは言ってもそんな高い服は無理だけどさ。
というか安いのしか無理だけどもさ。


「え…、でも男二人で買いにいくんですか…?」

神童君が戸惑ったように口にする。
やーん、戸惑うのそこ!?
女装に対する戸惑いは無い訳ですね、了解でぇっす!!


「大丈夫、プレゼントって事にしてこっちからお店の人に話しかければ不審に思われないって」

もうさ、女装が嫌じゃないって分かったら後は押せ押せでしょ?
こうなったら身を乗り出しちゃうよ、俺。


「プレゼントって……。
俺たち二人で誰にプレゼントを贈るっていうんですか?」

ぐはッ、冷静なツッコミきたああ。
俺は既にノリノリなんだけど神童君はそうでもないみたい。
こういうのはその場の勢いで特攻すればどうにかなるもんなんだけどなぁ。
それこそ口から出任せみたいな。
出会い系で嘘ばっか吐いて男の子喰ってる俺が言うんだから間違いないよ?
まあでも神童君がそういうなら、細かい設定練りましょ。
それで神童君が安心出来るってなら安いものよ。
そういう出任せも、俺、得意だしねー。
なんてたって慣れてますから!


「そーだなー…。
んじゃ、妹へのプレゼントってのはどう?
俺と神童君が歳の離れた兄弟でー。んで、神童君の双子の妹へのプレゼント。
俺は実家を離れてるから妹のサイズも好みもよくわかんないの。
でー、妹をよく知ってる神童君と一緒にプレゼントを買いにきたって訳。
どう?これなら別におかしくないでしょ?」

神童君は俺が考えた設定を吟味するように顎に手をやった。
きゃー、こんな事でも真剣に考え込んじゃう神童君って可愛いー!
おにーさん、チャラそうな子よりも真面目な子の方が好みですからねー。
神童君のこういうとこ、大歓迎ー!


「そうですね……。
あの!俺、演技とかした事ないんであまり自信がないんですが」

あ〜ん、やっぱり真面目だったぁ〜ん!
そんなのノリと勢いでどうにかなるのにぃ〜。


「ははっ、大丈夫だよ。
神童君はあんま喋んなくて平気なようにするし、いざとなったら俺がフォローするし。
あ、あと俺の事は『兄さん』って呼んでね?」

「は、はい!」

ねー、勢いでどうにかなるでしょ〜?
どさくさ紛れに『兄さん』呼び予約ゲットしちゃった。
あー、早く神童君に『兄さん(ハート』って呼んで貰いたいZE☆
俺は逸る気持ちで神童君に残り一個のたこ焼きを促した。
安堵してくれたのか、神童君も素直にたこ焼きを口に運ぶ。


「ね、そっくりの双子って事にして、お店で試着しちゃおっか?」

ププッ、口に含んだ瞬間を狙い済ました俺の言葉に、神童君てばたこ焼き喉に詰まらせちゃった。
や〜ん、こんなんで照れちゃうなんてやっぱり真面目ぇ〜ん。


「はい、どーぞ」

しかもまたもやどさくさ紛れに間接チッスまでゲット。
や〜ん、今日のデート、おにーさんばっかこんなに楽しくていいのかなぁ!?



prev next

 


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -