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「解す?後ろ?
何のことだ?」
唇が離れた瞬間に、さっぱり分からない不動の暗号のような言葉を訊ねる。
俺が質問すると、不動はふっと鼻で笑う。
「ああ、お前、男相手にすんの初めてか」
「男も何も、誰も相手にしたこと無いんだが」
俺がそう言うと、不動だけでなく、鬼道まで吃驚したように俺を見る。
「・・・何か変なこと言ったか?」
二人の視線が痛くて、戸惑ってしまう。
俺はそんなに変なことを言っただろうか?
中学生なら未経験が普通だと思っていたのに、この二人は違うのだろうか?
俺が少し狼狽して訊ねると、不動が急に笑いだす。
「ふっ、お前、チェリーかよ!
全然動揺しねぇから、てっきり慣れてるもんだと思ったぜ。
お前、初めてであんだけ鬼道を啼かせられんじゃ、大したもんだって」
不動が笑いながらそう言うと、鬼道が不動を睨んで言う。
「お前だって、散々善がってたじゃないか」
「ああん?」
鬼道と不動がつまらないことで、またいがみ合う。
「…お前達は初めてじゃないのか?」
俺が睨みあう二人に向かって訊ねると、
二人はまた吃驚したように俺を見る。
「…初めてに決まってんじゃん、なあ鬼道クン?」
顔を見合わせ、一拍置いてから不動がにやりとしながら鬼道に言うと、
鬼道は何も言わずにそっぽを向いてしまう。
「初めてだから、優しくしてネ。
源田ちゃん?」
不動はくっくっくと笑いながら、四つんばいになって俺にお尻を向けてきた。
「源田。
お前の初めて、俺にくれ」
鬼道まで、不動と同じ体勢で、向かい合うように俺を振り返る。
ああ、もうさっぱり何がなんだか分からない。
それでも、二つ並んだ魅惑的なその可愛らしい果実から目が離せない。
「どうすればいいんだ?」
「ベンチの下に鬼道のバッグがあるから、そこからローション取れ」
鬼道のバッグのことなのに何故か不動が指示する。
不動の言葉どおり鬼道のバッグを漁る。
「これか?」
「それを手に取って、指に馴染ませろ」
俺が出したもので合っていたらしく、次の指示が飛ぶ。
「こうか?」
両手をてかてか光らせて、二人に見せると、
不動は舌なめずりをし、
鬼道ははあっと溜息を漏らす。
「そう、それで後ろの穴に入れて、穴を広げる」
俺は二人の、同じようにひくひくと誘うように蠢く穴の入り口に指を当てる。
「ここか?」
穴の周りをくるりとなぞって確認すると、今まできびきびした声で指示していた不動の声が甘く揺らぐ。
「はぁっ。ん、そこぉ」
ゆっくりとその穴に指を入れていくと、不動の方は包みこむように受け入れてくれるのに、
鬼道の方はきつく締め付けて、拒まれる。
「すまん、一度抜くぞ」
一度指を引き抜くと、今度は腕をクロスさせ、利き手の方を鬼道に入れる。
でも、利き手だからといって、簡単に入るようにはならない。
「鬼道の方が狭い」
俺が不動の方を二本に増やしてそう言うと、鬼道ははっとしたように不動を睨む。
「貴様、やけにシャワーが長いと思ったら、自分で準備していたな!?」
「はっ、当たり前だろ!?
今回はてめぇにゃあ、絶対負けねぇ」
・・・今回?
少し引っかかる単語が出て、つい動きが止まる。
でも考える間もなく、不動の強請る声が飛んでくる。
「源田ぁ。
もういいから、早くお前の童貞俺にくれよぉ」
そう言って不動が腰を揺すると、鬼道も慌てたように言う。
「俺だって、お前の童貞が欲しいっ」
二人並んで後ろの穴に指を入れられ、腰を揺らす姿は圧巻で、
俺はやっぱりどちらから選んでいいか分からない。
「へっ、てめぇはまだ入る状態じゃねぇだろ。
俺が源田の童貞喰うところ黙って見てろって」
でも不動がそう言うから、俺の心は決まってしまう。
こんな扇情的な二人を前に、もはや一秒も持たない。
早く入れたいと、俺の欲望は口をぱくぱくさせて叫んでいた。
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