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「もっと触ってぇ」

唇を離すと、不動は力が抜けたようにベンチに座り込み、自分の服を捲り上げる。

ただでさえ白い不動の肌の、最も白い部分は滑らかで、
呼吸に合わせて捲り上げた服の影から、ピンクの部分が見え隠れするのが、
堪らなく扇情的だった。
そのちらちら見えるピンクの部分を暴きたくて、不動の上から覆いかぶさるようにして乱暴に服をもっと捲る。
全貌が明らかになったそこは、男のくせにくすんだ所の無い鮮やかなピンク色で、
白い肌の中で、そこだけが色づいていて、男を誘う目印のようだった。

現に他に何の用途も無いそこは、ただ男に触れられ、舐められる為だけに存在した。
なら、自分がそこを舐めるのは至極当たり前の行為な気がする。


「ふぅん」

そこに舌を這わすと、不動はくぐもった息を漏らす。

「んあっ」

強く噛んでやると、声を上げ、腰が弾かれたように跳ねる。

噛むと舐めるを繰り返してやると、不動はだんだん媚びたような鼻にかかった甘えた声で腰を押し付けてくる。
不動のそこは噛んだせいで、鬱血して赤く腫れている。
舐めたせいで唾液を滴らせるそこは、まるで熟れた果実のようだった。

その快感を生む淫らな果実を舐めながら、不動の様子を伺うと、随分良さそうな顔で喘いでいる。
痛いだろうに、そんな素振りは微塵も見せない。


「気持ちいいのか?」

自分でしている行動を棚に上げ、つい訊ねてしまう。
口に含んだままころころと転がしながら不動を見上げる。
すると不動は俺の頭を胸に抱える。

「んんっ、はあっ…ん、さい…こぉ」

腕の隙間から不動の様子を伺うと、どこか勝ち誇った顔で言葉を紡いでいる。
不動の視線の先には、鬼道がいた。


鬼道は、悔しそうに眉を寄せ下唇を噛んでいる。
何故かぺたりと床に座り込んでいる姿が可愛らしい。

「鬼道」

名前を呼ぶと、やっぱり何故か四つんばいで近付いてくる。
俺の傍に来ても、床にぺたんと座ったままだ。
それをベンチの上で胸を弄られたままの不動が口を歪めて見下ろしている。
はっきり言って不動に見下ろされたままで甘んじている鬼道なんて、鬼道じゃない。
いつもの鬼道だったら立ち上がって、俺なんかを相手に善がっている不動を見下ろして
「はっ、欲に溺れる様が見苦しいな」
ぐらいの言葉は言っているはずだ。

俺は不動から体を離すと、鬼道の脇に手を入れ、ひょいっとベンチに引き上げる。
俺が脇に手を入れた瞬間、鬼道は手を自分の太腿の間に持って行く。
暴れると思ったから、その行動に拍子抜けしてしまうが、
これで鬼道と不動の目線の高さがほぼ同じになった。
どちらかがどちらかを見下ろすということは無くなったはずだ。

それなのに、鬼道は不動の隣で居心地悪そうに下を向いている。
依然としてぺたんと座り、手は太腿の間にある。


「鬼道?」

「はっ、こいつお前におっ勃ててるのバレたくないんだぜ」

訝しげな俺の声に答えたのは鬼道ではなく不動だった。
不動は嘲るようにそう言うと肌蹴ていた服を脱ぎだす。

「俺みたいに触って欲しくって堪らないんだろ!?
物欲しそうな顔してるもんなぁ、なぁ鬼道クン?」

そう言うと鬼道の太腿の筋をなぞる様に指を這わす。
鬼道はその手を払うと、吐き捨てる様に言う。

「色仕掛けなんて下賤な真似できるか!」

その言葉で不動が可笑しそうに体を折って笑い出す。

「そーだよなぁ。
どうせ俺には勝てねぇんだから、そんなことしない方がいいよなぁ!
鬼道クンともあろう人が、色仕掛けなんて下賤な真似した挙句、
源田に選んで貰えなかったら、死んだ方がマシってもんだよなぁ!」

「くっ」

鬼道が屈辱で顔を歪ませる。

「なあ、源田ぁ。俺の方がいいよなあ?
鬼道クンだったらこんなことしてくんないぞ」

そう艶かしく笑いながら俺の服を脱がしだす。

「てめぇはそこで指でも銜えて見てろって。
あ、咥え込むの間違えか!?」

そう言うと俺の膝の上に向かい合うように座って傍らの鬼道を嘲り笑う。


俺の上に座り、俺の胸を舐め回しながら、腰を揺すって俺に緩い刺激を与える不動を、
鬼道がきっと睨む。
あそこまでの侮蔑を与えられたことなど、今まで無かったのであろう。
鬼道がいつもの毅然とした表情になる。
一瞬だけ躊躇した後、鬼道は靴下だけを脱ぎ、
上の服を伸ばして勃っているらしいそこを隠して、俺の前に立つ。



靴下だけを身に纏い、ほぼ全裸で俺の上で腰を振る不動と、
靴下だけを脱いで、俺の前で恥らう鬼道。

俺はこの時点になってもどちらを選ぶか決めかねていた。


 

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