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「〜〜〜〜〜ッ!」
声にならない声とはまさにこの事だろう。
いやむしろ声を大にして問いたい。
な ぜ 舐 め た !?
こっちは中学時代から長いこと人の道から外れた恋に悩んでいるというのに、お前は気安くそういう事をだなぁ!
と今すぐその場に正座させて説教してやろうか。
いやいや、そんな事をしては今までの俺の苦労が台無しになってしまう。
ム、どうやら指輪から一連の出来事に、俺は尋常じゃなく動揺しているらしい。
「ワリ、痛かったか?」
「〜〜〜ッ!当たり前だッ!お前は何を急に…ッ!」
もう何から怒るべきなのか判断がつかない。
俺は取り合えず謎な行動に及んだ挙句悪気の全く無さそうな円堂を叱り付ける。
「いや〜、お前があんまりに羨ましそうに俺の指みてるからさ、少しお裾分けしてやろうかと思って」
「何を訳のわからん事を…ッ!」
「鬼道、自分の指見てみろって」
な?って円堂が自信ありげに笑うから、まだ文句が言い足りないながらも俺は円堂の言うとおり自分の指に視線を落とす。
円堂に噛まれたところは赤くなってる上に歯のくぼみがしっかりと綺麗に残っている。
見ているだけで痛々しい。
「これがなんだッ!?」
言葉が尖るのは仕方ない。
俺をこの上なく動揺させた結果がこの傷跡かと思うと腹が立ってくる。
だが、円堂はこの傷跡こそが重要だと言わんばかりにニィーッと笑っている。
「その傷跡、指輪みたいだろ」
そう言って自分の左手を俺に翳した。
「な!俺と一緒!!」
・・・箍が外れる瞬間というのはこんな呆気ないものなのだな。
俺の左手の薬指には円堂とお揃いだという鈍く痛む指輪があるらしい。
しかもそれは円堂が与えてくれた。
抑え込んでいたものが溢れるには充分だった。
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