うるふれじぇんど



「染岡クン、おはよー」

吹雪が目を擦りながら、ロフト部分から降りてくる。
その目を擦る手は、俺より毛深い。
というより毛むくじゃらだ。

「おう、お前にしては早ぇえな」

吹雪が寝起きで、未だ寝間着のTシャツとハーフパンツなのに対して、
俺の方は既に顔も洗い、着替えもばっちり済んでいる。
そう、俺は吹雪みたいにゆっくりと惰眠を貪る暇は無いのだ。


「おら、手ぇ上げろ」

顔を洗い終わった吹雪に俺がそう言うと、素直に少ししゃがんで万歳のポーズをする。
俺が吹雪のTシャツを脱がして練習用のユニフォームを着せると、
癖のある髪の中の耳がぷるんと揺れる。

「次、下」

俺がそう言うと今度は片足を上げて、俺が下げたハーフパンツから足を抜く。

最初の頃は俺が下の着替えもすることを激しく嫌がっていた吹雪も、すぐに抵抗をすることを諦めた。
どうせ自分では着替えることができず、下手すると鋭い爪で破いてしまうのが関の山だって気付いたからだ。
まあ、気付くまでにユニフォームとパンツ、それにジャージを一枚ずつびりびりにした訳だが。

脱がすのは楽でも、ユニフォームを履かせるのは一苦労だ。
元来がガサツにできている俺は、いつも尻尾を無理矢理パンツに通そうとして強く握ってしまう。
最近では大分慣れてきたっていうのに、
吹雪は今だ最初の頃の痛みが強烈に残っているらしく、耳が垂れている。

なんとかユニフォームを着せると、その上からお尻の所に丸い穴の開いた、木野特製の吹雪専用ジャージを着せて、着替えは終了だ。


この後は朝食が待っている。
吹雪の指なんてほとんど無い、肉球のついた手では、
両手でなんとかおにぎりを食べるぐらいしかできない。
その他のおかずは俺が、所謂「あーん」で食べさせるしかない。
男同士で恥ずかしいことこの上ないが、自分の命の為だ。
恥を忍んで、今日もせっせと吹雪の口に食事を運ぶ。

吹雪の食事が済んだら、自分の食事にやっとあり付ける。
でも、この後も吹雪の歯磨きをしてやらないといけないから、
練習に間に合う為にはゆっくりしている時間もない。

俺の朝はまだまだ終わらない…。



俺は不屈の精神と高い志を持って、イナズマジャパンに合流したはずだった。

でも、そこでの俺の主な役割は、
俺のせいで半分狼になってしまった吹雪の飼育係だった…。


 

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