ガールズトークU



「かーぜまーるクン、ちょっといい?」

ノック音と共に少し開けられたドアから顔を覗かせて吹雪が訊ねる。
てへって顔をしてる吹雪の顔を見た途端、風丸の肩にずっしりと今日一日の疲れが押し寄せる。


この前、吹雪の悩み相談にのって、思わず自分の悩みも打ち明けて、
二人で盛り上がっているところを音無と木暮に見られて散々な目にあったのだ。
カップル容疑を掛けられて、それを打ち消すのに自分がどれだけ苦労したことか。
やっと疑いが晴れたというのに、ここで吹雪を自室に入れてまた在らぬ疑いを持たれたくない。

風丸は読みかけの本を大慌てで閉じ、吹雪を追い返そうとするが、時既に遅し。
吹雪は了承も得ずに勝手に部屋へ入って来ている。
入り口で揉めて皆に見られるよりはと早くも諦めの境地に達した風丸は、
吹雪を咎めるよりも、素早くドアを閉めることを選んだ。


「あのさ、また相談したいことがあるんだけど」

風丸がその常識人ぶりを発揮して、客である吹雪に飲み物を渡した途端、吹雪がモジモジしながらそう口にする。
・・・またか。
風丸は内心そう思いながらも、できるだけ穏便に内密に吹雪を帰そうと心に決めているため、優しく訊ねる。


「今度はなんだ?」

「うん。あ、あのね…」

吹雪が恥ずかしそうに口篭る。
そんな吹雪を風丸は自分用に用意した飲み物を口にしながら、促すこともせずゆっくりと待つ。


「風丸クンはキャプテンとエッチしてる!?」

ぶーっ!!

この前の可愛らしい相談から一気に飛躍した内容に風丸は一気に口の中のお茶を噴出す。

「なっ、ゴホ…なに、ゴホッゴホ、言ってんだっ!」

噎せ返りながら言うと吹雪が風丸の背中を擦る。

「だって風丸クン、キャプテンから
 『他の奴と付き合うのは嫌だ』って言われたんでしょ?
だったら・・・ねぇ?」

さも当たり前のように言う吹雪に風丸は言葉を失う。


確かに先のカップル疑惑の時に円堂から風丸はそう言われた。
吹雪と本当に付き合っているのかと訊いた後、不貞腐れた子供のようにぽつんと。
自分が慌てて否定するといつものように太陽のような笑顔で
「良かった」
とも。

それは風丸にとっては宝物のような出来事だったけれど。
でも本当にそれだけで、それから恋人同士になったとかそんなんじゃ全く無い。
言われてすぐに吹雪に嬉しくて報告した自分を今更ながら悔やんだ。
自分のことのように喜んでくれた吹雪が凄い嬉しかったことも棚に上げて。


「…してないの?」

不思議そうに訊ねてくる吹雪に噛み付くように怒鳴った。

「当たり前だ!!」

「そっかぁ。参考にしたかったんだけどなぁ」

残念そうに呟く吹雪に風丸は天を仰ぐ。
・・・染岡、お前の貞操狙われてるぞ。
もう一人の友人の身を案じていると、吹雪が照れながら少し誇らしげに話し出す。


「染岡クンがさ、あの噂以来なんか嫉妬してるみたいなんだ。
染岡クンにべったりだった僕が他の人と噂になったのがショックだったのかも。
へへへ、最近ね前より良い雰囲気なんだ」

白い頬をピンクにして自分の指同士をツンツンしながら話す様子は本当に嬉しそうだ。
その様子は先程の質問と結びつかない程清純に見える。


「それでさ、もし、もしもなんだけどぉー…。
これから先そういうことになるかも知れないでしょ?
そしたらなんだか不安になちゃって」

「不安?」

「だって染岡クンは基本ノンケなんだよ!?
いくら僕が女顔でそこら辺の女の子より清純派美少女に見えたって、
脱いじゃったらそんなの関係なくなっちゃうじゃない?」

相談話にちょいちょい挟まれる自慢にウンザリして相槌を打つ気力もなくなる。

「僕、顔はこんなだけど脱いだら凄いんだよ?
軽量級のプロボクサーみたいな体なんだよ?
こんなの見たら絶対萎える。
僕だったら絶対無理!」

デモ染岡ノ顔ト体ニハ萎えないンデスネ・・・。
風丸は心に浮かんだツッコミをそっと心のさらに奥に押し込める。

「ねえ風丸クン、一緒に考えてよ。
細マッチョの僕が染岡クンを萎えさせずに上手く誘う方法!
君しかこんなこと相談できる人いないんだ」

俺にも相談しないで欲しかった・・・。
そう思いながらもお母さん体質の風丸は自分を頼ってきた吹雪を邪険にできない。


「バスローブとか浴衣みたいな体形を隠せる服で誘うとかは?」

仕方なくでも風丸が意見を言えば、吹雪が嬉しそうに目を輝かせる。

「じゃあさ、今シーツで代用してみるから風丸クン見ててね」

アドバイスどおりに吹雪はいそいそとジャージを脱ぎ始める。





えいえいと一生懸命シーツをできるだけセクシーに体に巻きつけようとしている吹雪と、
目の当たりにした吹雪の上半身の裸体に、確かに萎えると身をもって納得した風丸は、
未だ知る由も無い。
この部屋に木暮のいたずらのせいで風丸のタオルがボロボロになってしまったのを、
音無と、首根っこをつかまれた木暮の二人が謝りに向かっていることに。
前回みたいに、ぱっと見吹雪が風丸を誘惑しているみたいに見える現場を、二人に押さえられるまであと30秒。


 END

 

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