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そんな訳で俺は吹雪の部屋に出戻ってしまった。
まあ、余りの恐怖で吹雪の告白なんざすっかり頭から消えちまったせいなんだが。
だからかもしんねーけど、俺が佐久間と話し終わって部屋に戻った時、
吹雪がちょっとスネてる理由なんざ全く思い当たらなかった。
「染岡クンって佐久間クンと仲いいんだね」
「ん?…ああ、悪かねーな。
今まで同室で何のトラブルも無かったし。
ま、俺の知らない内に引越し済みになってた時は、実は嫌われてたんだって凹んだけどな」
部屋に入ってすぐ、待ち構えるようにして立っていた吹雪が探るようにを言ってきやがる。
俺は部屋の惨状に目が行って、そんな吹雪の様子には気付かない。
バリケードに使っていた部屋のもんを定位置に戻しながら答える。
「ふ〜ん。僕知らなかったなぁ。
やっぱり同じFW同士だから話合う?」
「まーな。
同じ途中参加組だし、
それにアイツの鬼道を目標に頑張ってるとことか、すっげぇ気持ち分かるしな。
趣味は合わねぇけど、サッカーの話は盛り上がるよな」
俺は片付けながら話てたから、入り口付近にいる吹雪には背を向けていた。
だから、こん時の吹雪がどんな顔してたかなんて見てねぇ。
「へ〜。
そう言えば、真・帝国の時も佐久間クンのこと気にしてたもんね」
「あ〜、まあな。
あんときゃ、豪炎寺が居なかったからよ。
なんか余計に、な」
「…豪炎寺クン」
俺はクソ重い棚を持ち上げてるところで、吹雪の声が少しずつ暗くなってる事に気付かない。
あ〜、くそっ!
どうやって俺はこんな重いもん一人で動かしたんだ。
「なあ!悪ぃけど手伝ってくんねーか?」
「あっ、うん!」
俺が顔を上げて入り口付近の吹雪を見ると、吹雪は俯いてた顔を上げて、とことこと小走りで寄って来る。
二人で棚を戻している時に吹雪が、一つ質問してくる。
当然俺は、吹雪の様子なんざこれっぽっちも目に入って無かったから普通に答えた。
「ねえ、やっぱり同じFWの人の方が話しやすい?」
「あ?考えた事ねぇけど、まあそうかもな」
これが悪夢再びの序章になるなんて、俺はこれっぽっちも気付いてはいなかったんだ…。
その日の午後の練習で吹雪はやけに張り切っていた。
普段だったらDFの練習に参加するのに、何故か今日はFWのシュート練習に参加してくるし。
それに自分から連携シュートの練習がしたいなんて言い出しやがる。
しかも俺んとこに速攻来て、久しぶりにワイブリ撃とうなんて言ってくる。
まあ他に目ぼしい連携シュートがあんまりねぇ俺は、実は結構嬉し…う、いや、まあ普通にその提案を受け入れた。
俺のワイバーンが氷を纏って、唸りを上げる。
うん、何度見ても、我ながら惚れ惚れするようなシュートだぜ。
まあ、少し寒くなるが。
熱血している吹雪は、俺との連携シュートが終わってもその場を離れない。
「染岡クン、ボール出しお願い。
いくよ、基山クン!」
「えっ?あっ、うん」
基山が小さくくしゅんとクシャミをしてから位置につく。
・・・嫌なデジャヴュが俺を襲う。
「染岡クン!」
「お、おう!」
吹雪のやる気に溢れた声に俺は咄嗟にボールを蹴りだす。
「ザ・バー…ヘーくっし!ぅぃー」
「「あ」」
基山がおっさん臭いくしゃみをした途端、ぼんっと煙に包まれる。
前に一度見たことのある光景に、俺は頭を抱える。
そして案の定、煙の中から出てきたのは赤ん坊になっちまった基山の姿だった…。
「吹雪ーっ!てめぇは金輪際、エターナルブリザード禁止だー!!」
To be continued
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