うるふれじぇんど番外編



「染岡クン、染岡クン!」

いつもみてぇに吹雪が尻尾をふりふりして俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。

「ねえ、染岡クンって牛若丸って誰のことか知ってる?」

あん?なんだってそんなこと急に訊いてくるんだ?
俺は質問の意図が分からなくって首を傾げる。
でもまあ、コイツの話に脈絡が無いのはいつものことだ。
そこを気にしてたらいつまでたっても話が進まねぇ。

「源義経のことだろ。それがどうかしたか?」

「うん!あのね僕が義経だから、染岡クンは弁慶ね。
染岡クンが僕に勝てないところとかぴったりでしょ?」

はあ?なんだコイツは突然こんなこと言いやがって。
喧嘩売ってんのか?

「言ってる意味がわかんねぇ。
そもそもなんでお前が義経なんだよ」

俺はムカつきをなんとか抑えて、説明を促す。
俺も随分と大人になったもんだ。
それもこれもコイツを初めとして一気に周りに変なヤツが増えたせいだろーな。
・・・サッカー上手いヤツってなんで皆おかしなヤツなんだろ。普通に謎だ。


「えっと、鬼道クンから聞いたんだけど蒼って本当は青みがかった灰色って意味なんだって。
ね、僕にぴったりでしょ?」

腰に手を当てて、身を捩って揺れる尻尾を見せてくる。
つーか何のポーズだ、何の。

「それがどうした」

ったく、今日は特に話に脈絡ってもんが感じられねぇ。
コイツ絶対国語の成績悪いだろ。

「だからね、今の僕はまさに蒼き狼でしょ?」

「だから?」

ああくそっ、なんかイライラしてきた。
この話どこまで続くんだ。

「だから義経」

え?ここで結論かよ。
思ったより短かった話に俺はずっこけてしまう。
つーか、そこからなんでその結論になるのかわかんねぇし。

「なんでそうなるんだよ?」

俺の尤もな質問に、吹雪はきょとんとした顔で首を捻る。
おいこら、実はお前も分からねぇってオチじゃねぇだろうな。

「えっと〜、忘れちゃった」

やっぱり!!
てへって顔の吹雪にどっと疲れが押し寄せる。
…まあ、いい。
がっくりとした俺のことを、耳も尻尾も垂れ下げて心配そうに伺う吹雪の頭を撫でてやる。
怒ってないから心配すんなって意味を込めて。

ま、俺としちゃ吹雪の話にあんま興味が無えし。
俺としちゃそれで終わりで良かったんだが、吹雪がどうしてもって言うから一緒に鬼道のところへ話を聞きに言くことになった。
面倒臭ぇえ!!


そうして話を聞いたところ、鬼道が言うには
蒼き狼→
チンギス・ハンの渾名→
チンギス・ハン=源義経説
ってことらしい。
んでここから吹雪は
チンギス・ハンより源義経の方がイケメンっぽい→
自分も格好良い→
義経で!
ってなったらしい。

うん、心底どうでもいいわ!


「染岡クン、理由分かって良かったね!」

吹雪がにこにこと尻尾を振りながら、俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。
ああ、理由だけじゃなくお前が歴史の成績も悪いってことも分かったがな。
なんだか回りくどかったわりに結局はクダラナイ吹雪の自慢で終わった話に俺はがっくりしてしまう。

でも…ま、いっか。

俺はにこにこしていて上機嫌の吹雪の頭を撫でてやる。
そうするともっと上機嫌ではち切れんばかりに尻尾を振りやがる。

まあいい。

ほらあれだ。
日本にはあるだろう?有名な言葉が。

馬鹿な子程可愛いってな!

俺は結局どんな吹雪だろうが可愛くって仕方無いんだ。
あっ、これは誰にも内緒だぞ!!
いいか?誰にも、特に吹雪には絶対言うんじゃねーぞ!!
絶対だかんな!!

 END

 

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