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後から考えてみると随分酷い俺の言い草。

好きって言ってくれた相手に、
考えさせてくれって待たせた挙句、
それで駄目だった時も『お前は俺のもん』って。
応えられないけど、ずっと俺のこと好きでいてくれって言ってるようなもんじゃねーか。

俺、どんだけ俺様なんだ。
つーかどれだけ飼い主気取ってるんだ。


それなのに、
それなのに吹雪は…。



「染岡クン!」
目をうるうるさせて、尻尾をふりふりさせて俺に抱きついてきやがった。

 ごん!がたっ!

俺は頭を強打。
倒れる時に掴んだローテーブルは音を立てて壁に当たった。
もともと斜めだったテーブルはもう元の位置から大分移動している。


でも吹雪はそんなの目に入って無いみたいに、俺の顔にまたちゅっちゅと唇を寄せてくる。

「おい、こらっ!時間くれって言っただろーが!!」
俺が体を押しても、そんなのお構いなし。

「だって嬉しいんだもん」

「おまっ、体くっつけんな!
当たってる、当たってる!!」

「大丈夫、今日はこれ以上しないから」

「だぁー、そういう問題じゃねぇ!!」
俺は力いっぱい吹雪を押し退ける。

うう、このままだと本当に殴っちまいそうだ。
俺が握り拳を作った瞬間、
部屋のドアがばーんと勢いよく開く。


「おい、大丈夫か!?何の音だ!?」
勢いよく部屋に入ってきた円堂を始めとする見慣れた面々。

「って、…ええっ!?」
そして俺と俺に圧し掛かる半裸で狼さん丸出しの吹雪を見て、
かきーんと凍る見慣れた面々。
…と俺。

凍てつく闇の恐怖ってこれのことか…。
誰かさんの決め台詞が頭を過ぎる。


「ごめんね、ただの痴話喧嘩だって言ったんだけど。
僕には円堂君が止められなくって」
一人だけ凍っていない基山の手には携帯電話。

全身凍った俺の口だけがかぱっと開く。

「ああ、これ?
うん全部聞こえてたよ。
最近の携帯電話って性能いいから」

…科学の進歩が憎い。
それとやけに頑丈な吹雪の携帯も。


「吹雪君、股間の刀収めなよ。
流石にこの状況で試合続行する気にはなれないでしょ?」
その言葉にぐぎぎぎぎと凍った頭を吹雪に向ける。
そこには顔から火を吹いた状態で凍っている吹雪がいた。


「きゃああああ」
吹雪の叫び声で、皆の金縛りが解ける。

吹雪はぺたんと丸出し下半身を隠して女の子座りをする。

「ほらその格好じゃ、風邪ひいちゃうよ?」
基山の鉄の平常心に、ある意味尊敬の念を抱く。

でも、その言葉に一気に熱の引いた吹雪は寒さを感じたようだった。
ぶるりと体を震わせと、くしゃみの体勢に入る。


「はぁ…はぁ…はぁ…
…へっぶし、ぅぃー」

――おっさんくさっ!

やけにおっさんくさいくしゃみをした吹雪は白い煙に包まれる。
既視感のある光景に皆の注目が集まる。

ごほごほと咳をしながら姿を現した吹雪は、いつもの吹雪。
すっかり人間オンリーの姿になった吹雪だった。


「元に戻れて良かったな!吹雪!!」
円堂が吹雪の肩を叩く。

えっ!?さっきまでの事はスルー!?

「うん!ありがとうキャプテン!!」

えっ!?こっちも!?

皆は口々に吹雪が元に戻れたことを労うと、先程の一件など無かったかのように部屋を出て行く。

いいのか、それで!?

俺は先程の一大事を無かったことにできる円堂を始めとするイナズマジャパンの面々に眩暈を覚える。

でも、ま…いっか。

色々追求されなかったのは俺にとっても有難いことで、
俺は何とか無事全てが丸く収まったことに胸を撫で下ろす。

隣を見れば、ちゃんと服を一人で着た吹雪がいて、
目が合えば、にっこりと微笑んでくる。
その姿にふりふり揺れる尻尾は無い。


あ、ヤバい、…結構寂しい。

尻尾と耳と獣手が無くなった吹雪は、何でも自分で出来て、
俺が世話してやる必要なんてない。
無くなった狼三点セットとその事実は、自分でも驚くぐらい俺の心にびゅうびゅうと隙間風を吹かせた。


「染岡クン」

「あぁ、なんだ?」

吹雪の呼びかけに顔が上げられないくらいテンションが下がっちまった。


「これからは僕が染岡クンのこと可愛がってあげるから安心して」

そう言うと吹雪は俺の腕に纏わりついてくる。


…前言撤回。
寂しいなんて感じてる余裕は無さそうだ。


「安心できるかぁー!!」

俺の叫び声が朝早い宿舎に木霊した。


 END

 

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