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「染岡クン?」

何回目だったろうか、だんだん尻尾の振りが甘くなってきた頃、
吹雪がついに俺の行動に疑問をぶつけてきた。

「染岡クンって、もしかして動物好きでしょ」

う!
思わぬ指摘に思わず言葉が詰まる。
まあ、これだけ繰り返してりゃあ「思わぬ指摘」じゃねぇかもしれないけど。


「う〜、…いや」

否定はしてみたものの、ちらりと吹雪を見るとなんだかニコニコしてて、たぶん嘘だってバレてる。
照れくさくって、がりがりと頭を掻く。

「…まあな」

あ”〜、こっぱずかし〜。
硬派な俺が実は動物好きだ、なーんて恥ずかし過ぎんだろ。
吹雪を見るとやけにニコニコしてやがるし、絶対馬鹿にしてんだろ。くそっ。


「染岡クン」

「あ”ん?」

恥ずかし上にニコニコしている吹雪がムカついて、苛立った声が出る。

「僕さ、あんまり我慢が利く方じゃないんだよね。
今日から同室だしあんまり無防備な姿、晒さない方がいいよ?」

「はあ!?そりゃ、どーいう意味だよ?」

無防備?
喧嘩した時に動物好きっていう弱点を吹雪に突かれるってことか?
意味分かんねぇ。

吹雪とはたまにこんな風に言葉のキャッチボールが出来なくなる時がある。
田舎育ちで超が付く程おっとりした天然野郎だから仕方無いのかもしれないが、
この時もそれで、
ニコニコしたまま意味不明な事を言ってくる吹雪に怒りが削がれる。
きょとんと吹雪を見返すと、にっこりと嬉しそうに吹雪が笑う。


「こういう意味」

吹雪は意味深に笑うと、座っている俺を跨ぐように覆いかぶさってくる。
マウントポジションを取られた俺は、ファイティングポーズを取る。
いくら吹雪が可愛くっても、例え動物虐待になったとしても、簡単には負けねぇぞ、こらぁ。


でも、身構えた俺に近付いてきたのは吹雪の拳でも頭突きでもなかった。

近付いてきたのは、吹雪の顔。
奴は俺の首を下から上へと筋に沿って舐め、俺の顔の前で目を細めた。
吹雪の細められた目と、俺の見開いた目が至近距離で合う。


「あんまりさ、僕の前で可愛いところ見せないでよ。
 そうしないと、
…僕に食べられちゃうよ?」

「!!」

俺はその言葉に息を飲む。

無防備。
我慢が利かない。
先程の吹雪の言葉がやっと理解できた。

がたっ、がたがたがたっ。
俺は思いっきり吹雪から遠ざかる為に後ずさる。
顔が真っ青になった俺を見て吹雪が寂しそうな顔で笑う。


「やだな、そんな警戒しなくても無理強いはしないよ」

そう言ってがたがた震えている俺に向かって手を差し伸べてくる。

「ぎゃあああ!!」

俺は思いっきり叫び声を上げて部屋から飛び出した。
行き先なんて特にない。
兎に角今は吹雪から遠くに逃げたかった。


 

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