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がっくりと床に膝を着き、頭を垂れた鬼道、それから豪炎寺、一之瀬、土門に過剰に反応したのは染岡の方だった。
余程夢中になって円堂さんの胸にチュウチュウしていたのか、半死状態の鬼道に円堂さんが駆け寄ろうとして身じろいで初めて自分達以外の乱入者の存在に気づくと、真っ赤になって慌てだした。


「ち、ち、ち、違うんだ……ッ!!
こりゃー、その、あの、その、円堂が…、そう!円堂がなんかおかしいってんで見てただけで…!
その、あの、その、つまりは違うんだよッ!!」

円堂さんに責任を押し付けて弁解するだけでも、過激な円堂親衛隊の鬼道&豪炎寺にとっては万死に値するというのに、何を思ったのか、それともただ慌てただけなのか、染岡はドンッと自分の腰の上に乗っかっていた裸の円堂さんを床に突き落とした。


「痛ぁ〜…っ」

急な事に受身を取る暇もなかった円堂さんは、痛そうに自分の腰をさすりだす。
その様子はまさに火に油を注ぐようなもの。
案の定、鬼道&豪炎寺がいきり立つ。
あ、鬼道さんは再起不能かと思われたが、無事復活したようです。
円堂さんへの愛が何にも勝る原動力になるって素敵ですね。


「染岡ぁぁぁ!!」

鬼道が染岡の胸倉を掴んで捩じ上げる。
鬼気迫る顔で鬼道は染岡に責め寄った。


「貴様、円堂に何してるんだッ!!
事によっては今ここで貴様を手討ちにしてもいいんだぞ!!」

「違うんだッ!俺は無実だッ!!」

「何を馬鹿な事をッ!証人は何人も居るんだぞ!!
素直に認めたらどうだッ!」

どうやら錯乱しているのは鬼道さんだけじゃなく染岡も同様のようだ。
まるで刑事の取調べコントを実演しているような雰囲気で二人のやり取りが続いてく。
江戸時代じゃあるまいし、どう考えても鬼道が染岡を手討ちにするのは不可能なのにツッコむ者は誰も居ない。


「知らないッ、本当に知らないんだッ!!
なんでか脱いだら円堂がメロンで…ッ!
メロンが二つでメロンメロンで…ッ!!
ハッと気づいたら時には鬼道が床に転がって、円堂までも転がっていたんだッ!!」

「ほほー…ぅ、それは自供と見做していいんだろうなァァ!?
円堂のメロン爆乳の味を知ったからには覚悟は出来てるのか、染岡ァァァ!!」

染岡の悲鳴と鬼道の怒号が狭い部室に響き渡る。
哀れ染岡、彼の命はここで儚く散る運命なのかッ。

するとそこへ、毅然とした静止の声が飛んできた。


「鬼道ッ!染岡は悪くないッ!
我慢出来なかった俺が悪いんだッ!!早く染岡の手を放せッ!!」

勿論、円堂さんの声だ。
錯乱している鬼道と染岡(そして会話には参加していなかったが豪炎寺も)を止める事が出来るのはこの雷門には円堂さんしか居ない。
というか毅然と言っているが、その内容を鑑みるともう少し恥らった方がいいのではないかと思われる。
毅然となんて事を言い出すんだ、円堂さんは。


「円堂…」

「悪ぃ、鬼道。
お前にはバレないように気をつけろって言われてたのに、簡単にバレちゃって。
お前ら待ってる間に染岡と話してたらさ、なんかムズムズしてきちゃって。
染岡の汗の匂いってすっげー男らしくてドキドキするってお前ら知ってたか!?
自分じゃ分かんないけど変な顔になってたみたいで、染岡は心配してくれたんだ。
『熱でもあるんじゃないのか?』っておでこに手を当ててくれて」

……本当に何を言い出すんでしょうか、円堂さんは。


「でも染岡が近くにきたらもっと匂いが濃くなって。
そしたらもっとドキドキしちゃって。
すっげー熱っちーのに染岡にくっつきたくってしょうがなくなっちゃったんだ。
で、結局我慢出来なくて密着しちゃったんだ。
服脱いで、裸になってピトッて」

衝撃の告白に、その場に居た人間はあんぐりと口を開けた。
感情の起伏の激しい染岡や常識人土門はともかく、鬼道や豪炎寺、一之瀬に至るまでが揃って言葉を失うのは珍しい。
円堂は真面目な顔で言ってはいるが、その内容は明らかにお尻の軽い残念な子でしかない。
二日間における濃厚な調教生活のおかげで、円堂さんは順調に淫乱化が進んでいるようだ。
しかも大変残念な方向に。
残念ッ!鬼道さん、豪炎寺さん、これは自業自得ですよ!!




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