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「まもちゃんっ、まもちゃんっ」

「あんっ、どもんっ、どもんっ」

目の前で行われている交歓から、鬼道は目を逸らす。


先程までの対面座位で体を密着させたまま、深く舌を絡ませていた二人も、
キスをしていない僅かな時間は、お互いを熱の篭った目で見詰め合っていた二人も、
正直見続けるのは困難だった。

そして今、後背位で蕩けきった顔をして土門の名前を途切れる事無く呼び続ける円堂の事を見るのは、
目を瞑っても声は否応なく耳に入るので更に辛い。

だが、人知れず視線を逸らすことは出来ても、大っぴらに耳を塞ぐのはプライドが許さない。

それをしてしまうと、男として土門に負けたことを認めてしまうようで。


鬼道は、土門の手で円堂が初めて絶頂を迎えた時、
実は秘かに驚いていた。
まだ、エクスタシーを感じた事が無かったのか、と。

円堂はいつでも善さそうにしていたし、
自分達は満足させていると信じていた。

それなのに、それは自分達がそう信じていただけで、
実際は土門の手によって円堂は初めてその頂を知った。


――まるで愚かな道化そのものじゃないか。


誰かの顔を見て、熱い吐息を洩らす円堂も、
熱の篭った声で誰かの名前を呼びながら、交わる円堂も、
どれもこれも初めて見る姿だった。

初めて見るだけじゃなく、
その姿は、どう見てもお互いを求め合っているように見える。

・・・どうしても不安が沸き起こる。



「あっ、あっ、どもっ、どもっ。また、きちゃっ!きちゃうよおおっ!」

「イって!俺も、…もぉっ」

腰を激しく打ちつけながら、土門は円堂のクリトリスを包皮の上から愛撫し続ける。
テーブルを縋りつくように掴んでいる円堂は、力が抜けきって脚ががくがくしている。

「ひぃあっ、どもっ、どもんーっ、ああーー……っ」

「…っく」

体を反らして土門の名前を呼びながら、円堂は果てる。
そしてそれを追うように土門も。


「ふぅっ」

ぐったりとテーブルに突っ伏してしまった円堂のすぐ隣に、土門が寄りかかる。

「一之瀬、ティッシュ取って」

一之瀬の投げたポケットティッシュを受け取り、自分の後処理をすると円堂に向き直る。

「まもちゃん、大丈夫?」

「…おう」

床に膝をついてしまっている円堂は、土門の問いかけに顔を上げる。
だが、立ち上がろうとした瞬間、がくがくともう一度テーブルに突っ伏してしまう。

「あ〜、無理しなくていいから。
まもちゃんが疲れてるの知ってたのに、つい張り切りすぎちゃった俺が悪い。
ごめんね、まもちゃんとえっちできたのがマジで嬉しくて、セーブ出来なくてさ」

円堂の脇にしゃがみ、たはは〜っと後頭部を掻きながら照れたように土門が笑う。
すると円堂もそのままの体勢で顔だけを土門の方へ向け同じように笑った。

「俺も!
俺も土門のちんぽでお腹ん中いっぱいなのがすっげぇ嬉しくて、他の事全部忘れてた」

その顔は本当に嬉しそうで、でもほんの少し恥ずかしそうで、
土門は心の底からふつふつと愛おしさが込み上げてくる。

「まもちゃん…っ」

気付いたらぎゅうっと円堂の事を抱き締めていた。

「へへ、俺たち気が合うな」

苦しいぐらいだろうに、そう言って円堂が笑うから、暫くは離せそうに無い。

それでも、どろどろの円堂の体を思い出し、仕方なく体を離して、
足腰の立たない円堂をテーブルに座らせる。
そしてその前にしゃがみ、手を握り円堂を見上げる。



「ねえ、まもちゃん。俺と付き合おうよ。
俺だけの恋人になって欲しいんだ」


にっこりと笑う土門の顔は、背を向けているから三人には見えない。
声の調子は普段どおり軽やかなのに、その瞳だけが切なげに揺れているのを円堂だけが気付いていた。

・・・きゅうっと胸が締め付けられる。


 

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