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「そういえば、お前達、半田と会ったのか?」

鬼道が厳しい顔で土門に訊ねる。
そもそも部活が終わって大分経つというのに、
一之瀬が部室に戻ってくること事態、中々有り得ないことだ。
考えられることは唯一つ、先程帰宅したばかりの半田くらいしか無い。


「俺たちさ、すぐそこのコンビニで立ち読みしてたんだよね。
そしたら、店の前をこの世の終わりみたいな顔した半田がふらふら〜っとね。
で、何かあったのかと思って追いかけて声を掛けたら、あらまあびっくり。
半田ってば俺達に気付いた瞬間、めちゃくちゃテンション高くなってさ。
さっきまで暗い顔してたとは思えないくらい明るいんだよ。
気持ち悪かったぜ、真っ青な顔で明るい半田。
でも、半田は俺達が何を聞いてもへらへら笑って『何にも無かったから大丈夫』しか言わないし。
で、たぶん学校で何かあったんだろうって思った俺達は、
俺が半田の傍に居て、その間に一之瀬が部室を見に行こうってことにした訳。
そしたらこうなった、と」

「…そうか」

肩を竦めてこれまでの経緯を説明する土門に、鬼道は眉を顰めて重々しく頷く。

先程の痛々しいまでの半田の様子と、
頑なに自分との約束を守って口を閉ざす半田に鬼道の胸が痛む。


「で?
半田はどうしたの?
やっぱり円堂とヤっちゃった訳?」

「…否、半田は何もしていない。
ただ強いショックを受けていたみたいだ。
女になった円堂の裸体と、その胸を揉む豪炎寺。
それに、同じように胸を舐めてた俺にな」

「うっは〜、いきなりお前らの3P目撃かぁ。
それは半田じゃなくともショックだわ」

微塵の動揺も見せずに吐かれた鬼道の嘘に、土門は全く気付かない。

鬼道の『何もしていない』という言葉に豪炎寺が微かに眉を寄せた事も、
鬼道が自分の事を棚に上げて話していた先程と違って、
自分自身さえわざと貶めるように話した事で豪炎寺の眉が納得したように元の位置に戻った事さえ土門は気付かなかった。


「…ああ、半田は円堂が女になった事は内緒にして欲しいという俺との約束を律儀に守ってくれてるようだな」

「そりゃ〜健気に守ってたぜ。
ったく、半田と違って一之瀬は円堂が女になったって分かった途端こうだもんな。
おーい、半田を少しは見習えよ、一之瀬〜!」

「ん、何か言った?」

土門が声を掛けると、一之瀬が爽やかなのに黒い笑顔で振り向く。
振り向いた時に、円堂の胸がちゅぽっと音を立てて、
見事に勃った乳首がぷるんと姿を現す。


「んっ!…ああんっ」

円堂の口から少し名残惜しそうな喘ぎ声が漏れた途端、一之瀬は円堂の方へ向き直る。

「ねえ、円堂。
今度は俺を舐めてよ。
さっきうっとりしちゃった俺のでかちんぽ」

ね?と、円堂の顔を押さえて自分の股間に持っていく一之瀬に、
また豪炎寺の鋭い舌打ちが飛ぶ。

「全然でかくないぞー」
そして土門の野次と、

「一之瀬…あまり変なモノを円堂に舐めさせるな」
苦々しい鬼道の注意までもが一之瀬に飛ぶ。

「えー?別にいいよね、円堂。
えっちな円堂は俺のちんぽ舐めたいよね?」

だが、メンタルの強い一之瀬はそんな外野の反応を全く気にする様子は無い。
むしろ円堂に有無を言わせない笑顔でそう言う。

でも、円堂さんはメンタルの強さでは一之瀬の更に上をいく。
すっかりフェラをするか否かの流れなのに、あえて空気を読まずに自分の疑問を口にした。


「なあ、一之瀬はさっきから俺の事、えっち、えっちって言うけど、えっちって悪い事だよな?
俺、悪いところは直すから、どこが悪いか言ってくれ」
円堂の円堂らしいまっすぐな口調に、一之瀬が急に慌てだす。

「いやっ、えっちは悪い事じゃないよ!
そりゃ相手が嫌がってたら悪い事だけど、誰も嫌がってないし!
女の子がえっちなのはむしろ良いことだよ!!」

「そうなのか?」
疑う素振りの円堂に、一之瀬が助けを求めるように三人を見る。

「ねえ!えっちなのは良いことだよね!?」

「ああ、勿論だ。
えっちな女性が居なくなったら、日本経済は壊滅状態になると言っても過言では無い。
日本はえっちな女性が支えているんだぞ、円堂」

「そうだぞ円堂。
それに普段の円堂も可愛いが、えっちな円堂も凄く可愛い。
可愛いは良いことだろ?」

さらりと言い退ける鬼道と豪炎寺に、土門は開いた口が塞がらない。


「あと、俺、やっぱちんぽは舐めない。
そりゃ、ちんぽ見るとなんかむずむずするしドキドキして舐めたくなるけど、
ちんぽっておしっこする所だし、ばっちいだろ?
汚い物は舐めるなって母ちゃんから言われてるしな」

きっぱりと言い切る円堂に、今度は一之瀬よりも先に鬼道と豪炎寺がはっきりと否定する。

「円堂、それは誤解だ。
女性が男性器を舐める行為は凄く尊いものだ。
汚いなどという概念を持つこと自体が間違っている」

「鬼道の言うとおりだ。
それに其処から出るのはおしっこでは無い。
舐めると『みうく』が出てくる」

「えっ!そーなのか!?」

言葉の端々に自分も円堂にフェラをしてもらいたいという思惑が見え隠れする二人の言葉に、円堂はたちまち顔を輝かせる。

「よーし!俺、やるぜ!
ちんぽ舐めて『みうく』出してやるからな!!」

「その意気だ!円堂」


張り切る円堂と、それを励ます豪炎寺、頷く鬼道を見て、
土門は思った。

ああ、昨日からこうやって何も知らない円堂を二人がかりで調教したんだな、と。

そしてフェラが無事してもらえる事になって、にんまり笑う一之瀬を見て更に思った。

ああ、常識があるのは俺だけだ、と。
あまり行為がエスカレートするようなら、体を張って円堂を守ろうと思う土門であった。


 

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