#3一之瀬



#3 一之瀬


円堂の胸を背後から鷲掴みにしている豪炎寺と、それを見て目を丸くしている一之瀬。
既視感のある光景に鬼道は頭を抱える。

だから、早く場所を変えようと言ったのに。

そう思っても後の祭り。
頭を抱える鬼道の前で、一之瀬の目は鷲掴みにされた円堂のメロン爆乳をばっちりと捉えている。

なんとか半田が納得してくれたばかりだというのに、
またあんな後味の悪い事をするようなのか。

そう鬼道が頭を痛めた瞬間、一之瀬が円堂の胸を凝視したままケータイを取り出す。
そしてそのまま誰かに電話を掛ける。

プッ、プッ、プッ、トゥルルルル…ガチャッ。

相手が電話に出た途端、一之瀬がいきなりワザとらしいまでに大声で慌てだす。

「あっ、土門!
大変だ、円堂がっ、円堂がっ!
円堂が大変なことになってるから早く部室に来てっ!!」

それだけ言ってガチャ切りすると、にんまりと笑う。


「さてと、随分楽しそうな事してるね。
俺達も混ぜてよ☆」

そういう顔は悪代官も裸足で逃げ出す程のあくどい物だった。





「おいっ、一之瀬!
円堂が大変ってどういうことだっ!!」

土門が慌てふためいて部室に入ってきた時、一之瀬はちょうど下半身丸出しで、円堂に自分のソレを舐めさせようとしているところだった。

「あっ、土門!結構遅かったね」

「ああ、円堂の名前が聞こえた途端、半田が逃げ出してさ。
途中まで送ってきたから。
…って!それよりも円堂!!
どーしたんだよ、それぇ!?」

呑気に土門に手を振る一之瀬に、律儀に答えてから土門は目を剥いて
跪く円堂と、その前に立つ一之瀬を指差す。

「ん〜?
なんか円堂が女になった事知ってる奴は円堂とヤれるんだって。
ね?円堂」

「えっ?ああ!いっぱいシよーな、一之瀬」

一之瀬のとある一部分をうっとりと眺めていた円堂が、
頭を撫でられて弾かれたようににぱっと笑う。

「あ〜、オレのちんぽにうっとりしちゃったんだ。
あの円堂が実はこんなにエッチで可愛いなんて最高だね」

「おう!」

ぎゅーっと抱き締め合った二人を見て、部室の一角から激しい舌打ちが響く。

「ッチ!」

ロッカーに寄りかかって腕組をした豪炎寺だ。


そこで初めて、
イライラと腕組しながら貧乏揺すりをする豪炎寺と、
その隣で苦みばしった顔で二人を睨みつけている鬼道の存在に気付いた土門は二人に近づく。

「ちょっと!なんなんだよ、アレ!?
どういうことか説明してくれよ!!」

円堂と一之瀬では当てにならないと思い至った土門は、鬼道に詰め寄る。

「見てのとおり、円堂が女になった。
原因はまだ分からない」

「って、女になったからって、あんなことする必要ないだろーが!」

ちゅっちゅとべろチュウに発展している二人を指差しながら、土門の尤もなツッコミが入る。

「ッチィ!」

そして再び豪炎寺の激しい舌打ちも。


眉の間に更に深い皺を刻んだ鬼道が、二人を睨んだまま、
説明の為に重々しく口を開く。

「昨日、この男が本能剥き出しで暴走した結果、
円堂は女になった事がバレた相手で、自分に好意を持っている相手なら
誰とでもセックスしていいと思うようになってしまった。
性に関する知識が幼稚園児並みの円堂に、豪炎寺が色々間違った知識を教え込んだからな」

「ハア!?」

土門の呆れたような声が響く中、豪炎寺が二人を睨んだまま不機嫌そうに反論する。

「お前だって、欲望のままに円堂にあることないこと吹き込んでたじゃないか」

ぼそりと呟かれた言葉に、鬼道が豪炎寺の方を向いて怒鳴る。

「貴様こそ、趣味に走った行為を刷り込んでいたじゃないか。
なんだ精液の事を『みうく』って!
ミルクならまだしも、貴様のロリコン趣味が全開すぎて反吐が出るっ」

「ふざけるなっ!
お前だって円堂に自分の事『おにーちゃん』って呼ばせようとしてたじゃないかっ!」

「それは貴様もだろっ!!」

凄い剣幕で円堂が淫乱になってしまった原因を押し付けあう、
中学サッカー界きっての名プレイヤー二人に土門はおでこを押さえて溜息をつく。

「はいはい、お前ら二人のせいで円堂がおかしくなっちゃった訳ね。
それは分かったけど、で、半田は?
アイツ何も言わなかったけど、どうせアイツがどっか変なのもこれが原因なんだろ?」


その言葉でつかみ合いの喧嘩に発展しそうだった二人の言い争いは、無事鎮火した。
そして先程二人の心配を押し切って、一人で帰っていった半田を思って、二人は眉を顰めたのだった。


 

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